「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは隔週木曜に掲載されます。

2026年8月20日

スポーツのパブリシティー権

▼Q 応援しているプロ野球選手の記録達成を祝い、選手の名前と記録をプリントしたクッキーを製造・販売したいです。名前を使うだけなら肖像権は侵害しないと思うのですが問題ないでしょうか。

▼A ご指摘のとおり、選手の写真やイラストを使わなければ肖像権の侵害には当たりません。

肖像権とは人格的利益を保護する権利で、勝手に撮影・公開されることによる精神的苦痛や、私生活の平穏の侵害が問題となるからです。とはいえ、名前を無断で商品に利用すると「パブリシティー権」の問題になる恐れがあります。

有名人の名前や肖像には社会の興味を引く「顧客吸引力」があります。パブリシティー権とは顧客吸引力を無断で使われないための権利です。名前を使うだけでも問題になり得る点に注意が必要です。

実際に、あるプロ野球選手が記念の本塁打を打った際、業者が本人の許諾を得ずに、名前や肖像、愛称を刻んだ記念メダルを製造・販売しようとした事件がありました。裁判所は、メダル自体が選手の知名度を利用した商品であるとして、パブリシティー権の侵害を認め、販売の差し止めを命じています。

写真を使用せず名前と記録だけを使った商品であっても、選手の知名度という経済的価値を利用した商品に当たるため、本人の許諾がなければパブリシティー権侵害となる可能性が高いといえます。

スポーツ選手の肖像、名前の使用には注意が必要です。応援のつもりが、選手の権利を害してしまうことも。迷った場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

西日本新聞 8月20日分掲載(和智章一)

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