「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2019年9月18日

児童手当を差し押さえられた

▼Q 税金を滞納したら、児童手当が振り込まれた預金口座が役所に差し押さえられました。手当だけでも返してもらえないでしょうか。

▼A 税金を滞納すると、役所は税負担の公平性を実現するため、処分の一つとして、滞納者の預金を差し押さえることができます。

他方で、児童手当は児童の健全な育成のために使われるべきものであることから、「児童手当の受給権」を差し押さえることは児童手当法で禁止されています。

このような中、最高裁は「差し押さえが禁止されているものでも、金融機関の口座に振り込まれて預金になれば、滞納者の財産となり、原則、差し押さえ禁止にならない」という立場をとっています。

ただし、児童手当が振り込まれた直後に預金口座が差し押さえられた場合など、「預金の差し押さえが、児童手当の受給権自体を差し押さえたのと実質的に変わらない」と判断されれば違法となり、対象分を預金者に返還しなければならないとした判例もあります。

差し押さえられた預金口座と児童手当との関連性などによりますが、状況次第では返還されることもあり得ます。あなたもそうした状況があるのでしたら、差し押さえを知った日の翌日から3カ月以内であれば、不服を申し立てる審査請求ができます。

税金の滞納は問題ですが、子どもに影響が出ないよう差し押さえ禁止を定めている法の趣旨も尊重し、適切な徴税がされるべきと考えます。

西日本新聞 9月18日分掲載(田中謙二)

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