「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2022年9月7日

「人質司法」とは?

▼Q 友人同士のけんかに居合わせた息子が逮捕されてしまいました。息子は、自分は手を出していないと言っています。罪を認めないと、なかなか釈放されないとも聞きました。本当ですか。

▼A ご相談のケースでは、在宅でも捜査が可能なはずなので、速やかに釈放されるべきです。しかし、日本の刑事司法は必ずしもそうなっていません。

わが国では、犯人と疑われると長期間拘束されがちで、その中で取り調べを受けます。外界との接触を断たれた状況が続くと不安になり、真実と違う話をしてしまう人も少なくありません。このような状況は「人質司法」と呼ばれ、冤罪(えんざい)の温床ともなっています。

「人質司法」は人ごとではありません。2019年にも大阪地検特捜部による冤罪事件が起きています。この事件は、ある男性がお金を貸しただけなのに、横領に加担したとして逮捕されました。この男性は約250日も身柄拘束された上で、無罪となりました。

まずは、すぐに弁護士会に連絡し、当番弁護士を要請してください。弁護士が息子さんに面会して取調べ対応に関するアドバイスをします。費用は無料です。

福岡県弁護士会は、ジャーナリストの青木理氏らを招き、10月8日にシンポジウム「人質司法からの脱却~STOP!恣意(しい)的な身体拘束~」を開催します。前述の大阪地検特捜部による冤罪事件で無罪となった男性も参加します。「人質司法」の問題点を知ってください。詳しくは弁護士会のホームページをご覧ください。

西日本新聞 9月7日分掲載(松本拓馬)

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