「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2021年8月11日

海賊版サイトを利用するリスク

▼Q インターネットで漫画を読んで楽しんでいます。先日、「海賊版サイト」を巡って逮捕者が出たと聞き、少し心配になりました。どこまでが許されるのですか。

▼A ネット上には、漫画、音楽、動画を配信しているサイトがたくさんあります。多くは作者らから許可を得た正規のサイトですが、中には無断で掲載している海賊版サイトもあります。

海賊版を運営するのはもちろん著作権法違反です。今年6月には、漫画の海賊版サイト運営者が懲役3年、罰金1000万円、追徴金約6257万円の実刑判決を受けました。今後、作者側から民事上の責任を問われ、巨額の損害賠償請求をされるかもしれません。

では、海賊版を利用した人はどうなるのでしょうか。

今年1月に改正著作権法が施行され、海賊版と知りながら漫画や映像、音楽などのコンテンツを何度も継続的にダウンロード(DL)することは、個人利用でも違法となりました。違反した場合、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または両方が科されます。DLとはコンテンツを保存、録音、録画すること。したがって海賊版を見たり聴いたりするだけなら、違法ではありません。漫画の1コマ~数コマをDLするなどの「軽微なもの」も違法行為には当たりません。

もっとも、海賊版にはウイルス感染や個人情報漏えいなどのリスクがあります。閲覧すると作者らの利益を失わせることにもなるので、アクセスすべきではありません。

西日本新聞 8月11日分掲載(馬場安紀子)

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