「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2017年9月13日

残業代は必ず支払う必要がある

▼Q 退職した従業員から、在籍中の残業代を支払うよう請求書が届きました。この従業員には採用時に「残業代の支払いはできない」と説明していましたし、実際に残業時間もなかったはずです。どのように対応したらよいでしょうか。

▼A 時間外手当を支払うのは事業者の義務ですので、採用時に説明していたとしても、その説明自体が違法です。従業員が時間外に働いていたのであれば、裁量労働制を採用しているような例外的場合を除き、残業代は支払う必要があります。

また事業者には、タイムカードなどで従業員の労働時間を把握する義務があります。

最近、厚生労働省が労働安全衛生法の施行規則を改正し、この義務をより明確にする方針を固めた、という報道もありました。

労働基準法上の労働時間の意味について、判例では「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています。したがって、工場での作業上の手待ち時間(待機時間)や、外部研修の受講時間も実労働時間になりえます。一方、私用の電話やトイレ休憩、喫煙などの時間は実労働時間と評価されません。

ご相談が手待ち時間分の残業代を請求されているような事例なら、支払いが必要となる場合があります。まずは元従業員の方と会って、請求の根拠を確認することを勧めます。

福岡県弁護士会は15日、福岡市など県内4カ所で中小企業のための無料法律相談会・講演会を開催します。詳細は弁護士会のホームページをご覧ください。

西日本新聞 9月13日分掲載(本岡大祐)

※このイベントは終了しました

目次