「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2022年3月9日

年金を担保に借金できる?

▼Q 厚生年金を受給していますが、毎月ぎりぎりの生活です。年金を担保にお金を借りられると聞いたのですが、どういうものですか?

▼A 「年金担保貸付」のことですね。担保とは、お金が約束どおりに支払えない場合に代わりとするものです。例えば家を買う場合、土地建物を住宅ローンの担保にします。もしローンが支払えなくなったら、土地建物が競売され、その代金が返済に充てられる仕組みです。土地建物という担保があるからお金を貸してくれるわけです。

年金担保貸付も、年金という収入があるからお金を貸すという考え方は同じです。ただし、年金から天引きするかたちで返済するため、完済まで年金の受給額が目減りすることになります。

年金担保貸付は、悪用されれば高齢者の貴重な収入源が絶たれてしまう弊害があります。そのため、年金を担保とする貸付は基本的に禁止されています。唯一の例外が、独立行政法人の福祉医療機構が実施する年金担保貸付制度でした。しかし今月末で申込受付が終了し、その後は利用できなくなります。もともとは、高齢者が高利貸などの被害に遭わないように作られた制度だったのですが、年金担保貸付に頼ってしまうという別の弊害が生まれたので、廃止となりました。

生活費のためにお金を借りることは、問題の先送りにしかなりません。生活費を減らす、働いて収入を増やすなどの方策を検討してみてください。各市町村の社会福祉協議会などが「自立相談支援機関」として相談を受けています。

西日本新聞 3月9日分掲載(小林健彦)

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