「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2021年7月14日

離婚後も今の家に住み続けるには

▼Q 夫と離婚することになりました。夫婦の財産は夫名義の自宅だけで、夫が借りたローンが残っています。自宅に住み続けたいのですが、どうすれば良いですか。

▼A あなたが自宅を取得して住み続けることは、夫婦で合意しているのですね。
それを前提に基本的な調整の考え方を説明します。

まず、自宅の時価がローン残高を上回る場合、時価からローンの残りを引いた
金額が自宅の実質的な価値となります。自宅を取得するのなら実質的価値の半分を夫に支払い、残りのローンもあなたが負担することになります。

あなたが新たにローンを組み、そのお金で夫名義のローンを完済するとすっきりします。できない場合は、夫名義のローンはそのままにし、事実上あなたが支払いを続ける方法もあります。ただ、これは夫が嫌がるかもしれません。

自宅の時価よりローン残高が多い場合、裁判では、自宅の価値はゼロと見なされることが多いようです。ただそれだと、あなたは時価以上のローンを支払っていくことになります。話し合いで、ローン残高の負担を折半するなどの取り決めをしても良いでしょう。

以上が原則的な考え方ですが、不動産は夫婦の財産の中でも価値が高く、争いになりやすいものです。例えば、時価がいくらかを調べるのは難しいので、正確を期すため、不動産鑑定士に依頼せざるを得ないこともあります。このようなご相談に対して、弁護士は原則的な考え方を押さえた上で、その夫婦に合わせた調整をご提案しています。

西日本新聞 7月14日分掲載(小林健彦)

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