「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2019年3月13日

貸家の壁にひびが入ったら

▼Q 地震で私が住む借家の壁にひびが入り、大家に修繕をお願いしています。工事で一時退去をしなければいけない場合、その間の家賃はどうなりますか。大家が修繕してくれないときはどうしたらいいでしょう。

▼A 賃貸物件の修繕については民法に定めがあります。災害時だけでなく、経年劣化や施工不良で借家が損壊し、住み続けるのに支障がある場合、大家に修繕義務が発生しますが、同時に借り主にも修繕に協力する義務があります。

このため、必要があれば一時的に退去しなければならないことがあります。住んでいない期間は家賃を払う必要はありません。ただし、小規模な工事のため住み続けられるにもかかわらず、借り主が自主的に一時退去したような場合は家賃を払わなければいけません。また工事で2階だけ立ち入れないようなときは、借り主はその部分の割合(状況により異なります)に応じて家賃の減額を大家に請求できるケースもあります。

修繕義務があるにもかかわらず、大家が修繕してくれないときは、借り主が自分で手配して工事した上で、修繕費用を大家に請求することができます。負担した修繕費用を次の家賃から差し引くことも可能です。

なお、損壊の程度がひどく、修繕が物理的に不可能だったり、新築に近い費用がかかったりする場合は、賃貸借契約は終了し、借り主は出て行く必要があります。

以上が原則ですが、個別の事情によっては例外が認められることもあります。

西日本新聞 3月13日分掲載(浜上慎也)

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