「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2021年2月24日

別居中の夫に子どもを連れ去られた

▼Q 夫婦関係が悪くなり夫と別居しています。私は4歳の子どもと暮らしていましたが、幼稚園にいる時、夫が無理やり連れ去ってしまいました。どうすれば子どもを返してもらえるでしょうか。

▼A 別居中の親が子どもを連れ去るのは、珍しいことではありません。そのような行動に出る理由として、子どもがかわいいからとか、離婚の際に親権争いを有利に進めるなどの思惑があるようです。しかし、どちらの親が育てるかは、子育て環境やこれまでの養育状況などさまざまな事情をもとに、どちらが「子の利益」に資するかという観点から決められるべきです。そもそも、子の連れ去りは誘拐罪となる場合もあります。

今後はまず夫に連絡し、双方が「子の利益」を最優先に考え、話し合うべきでしょう。夫が強引に連れ去っており、話し合いでの解決は難しいかもしれません。その場合、家庭裁判所に引き渡しを求める調停や審判を申し立てます。

子どもへの虐待の可能性があれば、審判前の保全処分も申し立てた方が良いでしょう。保全処分は、審判で正式に引き渡しが判断される前に、裁判所が暫定的に引き渡しを決めるものです。一定の証明が必要ですが、認められれば素早く子どもを取り戻せます。

引き渡しを求める手続きについてより詳しく知りたい方は、弁護士への相談をお勧めします。3月8日は、国連が女性への差別撤廃と女性の地位向上などのために定めた国際女性デーです。女性がより自分らしい人生を歩むことのできる社会にするためにはどうすべきか、この日に考えてみてはいかがでしょうか。

西日本新聞 2月24日分掲載(竹田寛)

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