「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは隔週木曜に掲載されます。

2025年12月4日

身寄りのないおばあさん

▼Q 近所に88歳のおばあさんが住んでいます。夫を最近亡くし、1人では買物にも行けないようです。物忘れも多く、お金の管理などが心配です。見守りに利用できる制度はありますか?

▼A 1人住まいのお年寄りが増えていて心配になりますね。2050年には5世帯に1世帯が高齢者単身世帯になると見込まれています。国も「地域共生社会の在り方検討会議」を設置し、身寄りのない高齢者などの支援拡充や、成年後見制度を利用しやすくする対策に乗り出しています。

今回の例では、お年寄りの総合的な相談窓口である市町村の地域包括支援センターにまずは連絡してみてください。

金銭管理では、おばあさんの預金通帳などを社会福祉協議会に保管してもらい、毎月決めた額の生活費を社協から届けてもらうサービスもあります。

介護保険の要支援認定を受けて、例えば週2回1時間ずつホームヘルパーさんを頼み、必要な食料品を買ってきてもらって一緒に食事を作ることもできます。送迎付きのデイサービスも利用できるでしょう。日々いろいろな人に見守られながら、安心して元気に暮らせるのではないでしょうか。

体がさらに弱ってくると、考えなければならないことが増えます。入所施設をどうするか。保佐人や後見人を選任するのか。遺言を作成するのか。亡くなった際の葬儀や納骨、住居の整理など死後事務の契約をするのか-。お年寄りに判断能力があるうちに、福祉や弁護士などの専門家に相談しておきましょう。

西日本新聞 12月4日分掲載(岸和田羊一)

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