「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2021年8月4日

土地売却後、問題の責任問われる?

▼Q 3年前に土地を売りました。地盤が軟弱な地域だったのですが、最近のニュースで、売却後も責任を負うことがあると知りました。どのような責任でしょうか。

▼A 土地が原因で近隣に被害を与えた場合、その土地を使っている人(占有者)か、所有者が賠償責任を負います。問題を知らずに買ったとしても所有者らは賠償責任を負います。

では、所有者(買い主)は、前の所有者(売り主)の責任を問えるのでしょうか。地盤を例にすると、通常の土地が有する強度がない場合、売り主の責任を問えます(契約不適合責任)。地盤の補強を求めたり、代金の減額を求めたりといった方法があります。

被害を受けた近隣住民らに損害賠償をした場合は、前所有者にその負担を求めることができるでしょう。ただ、売買の際に地盤が軟弱なことを売り主が買い主に「きちんと」説明していれば、責任は問えないでしょう。実際の売買では、きちんと説明したかどうかがよく問題になります。このため、説明事項を文書にして買い主の署名押印を求めることが多いです。何か問題が起きても売り主は責任を負わないという条件を付けることもあります。

買い主が売り主の契約不適合責任を問うには、問題を知ってから原則1年以内の通知が必要です。ご心配なら、まず契約書を再確認してください。ほかにも土壌汚染や法律上の用途制限、近隣環境(工場や暴力団事務所など)もよく問題になります。契約前に弁護士など専門家に相談されることをお勧めします。

西日本新聞 8月4日分掲載(出光良彰)

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