「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2022年8月3日

なぜ刑期に幅があるの?

▼Q 裁判のニュースで「懲役10年から15年の判決」とありました。期間に幅を持たせた刑があるのですか。刑の重さはどのように決められるのですか。

▼A 例えば、殺人罪の刑は、死刑か無期懲役、5年以上の有期懲役と刑法に書かれています。このように法で定められた刑を「法定刑」と言います。裁判では、法定刑の範囲内でその事案に応じた刑を決めます。

刑を決める上でまず考慮されるのは、動機、犯行方法、結果の大きさなどです。殺人罪の中でも、被害者が複数で死刑もやむなしという事案から、介護疲れなどの動機を考慮して刑の執行が猶予される事案まで、判断は幅広く分かれます。共犯がいる場合は、主犯格かそれ以外かも大きく影響します。

これ以外に考慮されるのが、被告人に前科があるか、反省しているか、被害を弁償しているかなどです。事件を起こしたことで解雇された-などの社会的制裁を受けた場合も、ある程度考慮されます。

刑罰は、行った犯罪に対する報いであると同時に、被告人の更生を目的とします。このため、更生する可能性があるかは大きく刑に影響します。刑務所に行かずに更生できるなら執行猶予でよいというのがその典型です。

しかし、更生の可能性は判決を出す時点では完全には予測できません。成長の余地の大きい少年ではなおさらです。そこで、少年事件の有期懲役は、「○年から○年」という「不定期刑」が原則とされています。順調に更生すれば、早く刑を終えることができます。

西日本新聞 8月3日分掲載(角倉潔)

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