「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは隔週木曜に掲載されます。

2026年3月5日

外国籍の取得は慎重に

▼Q 米国で長く働く友人は、米国では二重国籍が認められていると聞き米国籍を得ました。すると日本国籍を失ったそうです。なぜですか?

▼A 米国が二重国籍を認めていても、日本が認めていないからです。日本の国籍法は「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」と定めています(11条)。

日本の法律は「国籍唯一の原則」に基づいています。複数国籍を認める国が多い国際社会では少数派と言われています。(1)自らの意思に反して国籍を剥奪される(2)アイデンティティーの否定になる(3)帰国の自由が失われる-といった重大な権利侵害を指摘され、何度も裁判で争われています。

しかし裁判所は、複数国籍では「納税義務や兵役義務の衝突が生じる」「どの国がその人を保護するのかが問題となる」などとして「国籍唯一の原則は憲法に違反しない」と判断しています。外国人が日本国籍を取得する場合も、母国の国籍を失うべきだとされています(国籍法5条)。

識者の中には「制度は改められるべきだ」という意見もあります。裁判所の述べる理由は、国と国の個別の取り決めで解決が可能な上、複数国籍を認めないことで人材の多様性が失われるマイナスの方が大きい、という考え方です。

現状では、ご友人が再び日本国籍を得るには、日本国籍の取得申請が現実的です。その場合、通常の外国人よりも条件は緩和されます(国籍法8条)。

外国で国籍や市民権を取得する際は、慎重に判断してください。

西日本新聞 3月5日分掲載(松井仁)

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