「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2023年2月15日

交通事故、行政書士に相談できる?

▼Q 1週間前に交通事故に遭い、通院中です。交通事故に関することも行政書士に相談したり頼んだりすることもできると聞きました。弁護士に頼むのとどう違うのですか。

▼A 行政書士は「権利義務証明及(およ)び事実証明に関する文書」の作成が法律で認められています。もっとも、その内容は、客観的な事実や依頼者の考えをそのまま文書化したものでなくてはなりません。どのように書けば法律的に有利になるかを行政書士が考えることは、原則としてできません。

例えば、事故の現地見取り図は事実証明に関する文書なので、行政書士が作成できます。しかし、損害賠償額を計算してその見通しを依頼者に示すことはできません。証明する文書の作成を超えて、法律的な分析や助言をすることは法律で禁じられているのです。相手方との示談交渉や訴訟の代理ももちろんできません。一方、弁護士にはそのような制限はありません。

このように法律上、弁護士と行政書士には取り扱える業務の範囲に差があります。こうした決まりがあるのは、業種ごとの専門性を生かすためです。専門分野以外に手を出すと、結局依頼者を困らせることになります。そもそも、弁護士以外が法律事務を取り扱うことは「非弁行為」として禁止されており、刑罰も科されるのです。

気を付けていただきたいのが、行政書士の「交通事故はお任せ」などといった広告。全て任せられるつもりで頼んだのに、そうではなかったということになりかねません。

西日本新聞 2月15日分掲載(向原栄大朗)

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