「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2017年12月27日

貸したお金、一括返済要求できる?

▼Q 知人の社長に個人的に無利息で300万円貸しました。毎月末日を期限に10万円ずつ30回払いの分割弁済の約束でしたが、7カ月目から滞り、それから1年間返済がありません。残りの全額240万円を今すぐ返してもらえないでしょうか。

▼A 知人との間には消費貸借契約が成立しており、知人には貸金返還義務があります。ただ毎月末日が10万円ごとの支払期限なので、これが到来しなければ返す義務はありません。「期限の利益」といいます。

相談者の例では、すでに期限が到来した1年分120万円は返してもらえます。しかし残り120万円は、知人に期限の利益があるので返済してもらうことはできません。契約解除による返還は催告などの要件があるので今すぐは難しいでしょう。

契約条項の中には「期限の利益喪失条項」というものがあります。一定の事由が生じた場合、債務者が期限の利益を主張できなくなることを定めたものです。金融機関などでは活用されていますが、一般の方の契約では十分普及していないようです。

相談者も例えば「弁済を2回以上怠った時は当然に期限の利益を失い、直ちに残額全てを支払う」といった期限の利益喪失条項を定めておけば、残額全てを請求できました。分割弁済の合意をするときには、この条項は入れるようにしましょう。

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電話は、(0570)001240。

西日本新聞 12月27日分掲載(因史礼)

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