「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2021年6月2日

近所に暴力団事務所、子どもが心配

▼Q 自宅近くに暴力団の事務所ができたようです。そばに通学路もあり、抗争などの事件に子どもが巻き込まれないか不安です。

▼A 条例で暴力団事務所の開設が禁止されている場所かもしれません。例えば、福岡県の暴力団排除条例は、学校などの周囲200メートル内に事務所を開設することを禁じています。まずは警察にご相談ください。

裁判で使用禁止を求めることもできます。全ての人には平穏な日常生活を営む権利(人格権)が認められています。暴力団事務所の存在は、この人格権を侵害するものです。裁判で使用禁止などを求める方法により、これまで全国で数十カ所の暴力団事務所が撤去されてきました。

もっとも裁判を起こすと、暴力団に名前や住所が知られます。このため報復などを恐れて、住民が裁判を躊躇(ちゅうちょ)するという問題がありました。そこで、2012年の暴力団対策法改正により、各都道府県の暴力追放運動推進センターが、住民(事務所のそばで暮らす人や勤務している人など)の代わりに裁判を起こせるようになりました。この制度によって、すでに全国で10件以上の裁判が起こされ、福岡県でも実際に事務所が撤去されました。

九州には全国の指定暴力団24団体のうち6団体の本部があり、ほかに傘下組織も存在します。各都道府県の弁護士会は、暴力団専門の委員会を置いて対策を研究しています。暴力団のことで困ったら気軽に弁護士会にご相談ください。

西日本新聞 6月2日分掲載(金子直哉)

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