「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2022年4月20日

行政処分、悪いことばかりでは・・・

▼Q 「行政処分」という言葉をよく耳にしますが、具体的にはどういうものですか。私たち一般住民にも関係ありますか。

▼A 行政処分とは、行政庁が公権力を使って国民に義務を課したり、利益を与えたりする手続きです。金融機関に対する「業務改善命令」、食中毒を出した飲食店に対する「営業停止処分」、交通違反者に対する「運転免許停止処分」などは、なじみがあるでしょう。処分といっても、このようなマイナスのものだけではありません。運転免許の交付、税金の減免など、国民にとってプラスになるものもあります。

行政処分の特徴は、公権力を行使することです。公権力を行使するとは、行政庁が、国民より強い立場で何かを決めることです。行政庁にはその権限が与えられているので、権限が適切に行使されるよう、きちんとコントロールされなくてはなりません。

このため行政手続法に基づいて、行政処分の審査基準を公にすること▽処分の理由を示すこと▽弁明の機会を与えること▽不服がある場合には異議申し立てができること-など、特別の方式が定められています。運転免許停止の際に弁明の機会が案内されるのはそのためです。また、税金や健康保険料の納付通知には、不服があれば審査請求できると記載されているはずです。違法な営業が放置されている場合は、周辺住民から国や自治体に対して、行政処分を行うよう求めることもできます。

このように、行政処分は、私たちの日常生活の至るところに関係しています。

西日本新聞 4月20日分掲載(角倉潔)

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