「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2018年5月2日

1票の格差、何が問題?

▼Q 国会議員選挙の「1票の格差」について裁判が相次いでいます。何が問題なのでしょうか。

▼A 憲法は、法律を作ったり、内閣総理大臣を選任するという大きな権限を国会に与えています。最近「共謀罪」法など国民の権利に関わる重要法案が次々と可決、成立し、この先は憲法改正発議もされかねない状況にあります。

国会議員は選挙で選ばれますが、憲法は前文で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」と定めています。「正当な選挙」とは多数の意思をきちんと反映する方法と考えるべきです。憲法14条は、法の下の平等を規定していて、国民の投票価値の平等を求めています。

最高裁は、1票の格差が2倍を超えた衆院選を「違憲状態」としました。国会は小選挙区定数を「0増6減」し、昨年10月の衆院選では最大1.98倍と格差は縮まりました。しかしそれでもおよそ2倍の投票価値の不平等があります。ある人の1票が、ほかの人の半分ほどの価値(0.5票程度)しかないという状態です。

米国では連邦最高裁が、ある州の下院議員選で1対0.993の格差を違憲無効になるとしました。たった1.007倍の格差すら許されなかったのです。

1票の価値に2倍近く格差がある中で行われた選挙。その結果を受けて構成された国会で、国民の権利を制限する法律ができ、憲法改正の発議がされてしまうのだとすれば、それは果たして許せるものでしょうか。しっかり考えたい問題です。

西日本新聞 5月2日分掲載(中野和信)

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