「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2023年8月9日

自転車のヘルメット不着用 賠償金減る?

▼Q 「自転車で信号待ちをしていたら、自動車に追突されました。転倒したのですが、膝に擦り傷ができただけで済みました。相手方の保険会社が対応していますが、ヘルメットを着けていなかったので賠償金が減額されると言われています。そういうものなのでしょうか。

▼A 2023年4月1日から、自転車利用者に乗車用ヘルメットの着用が努力義務化されました(改正道路交通法第63条の11)。保険会社はこれを根拠に減額を主張しているのでしょう。

交通事故では、事故の発生や損害の拡大について被害者に落ち度があれば、賠償額が減額されることがあります。その根拠は「損害の公平な分担」と説明されています。

ご相談のケースは、自動車側の前方不注意が事故の原因です。ヘルメット不着用は関係ありません。また、けがをしたのは膝ですから、ヘルメット不着用によって損害が拡大したわけでもありません。賠償額の減額に応じる必要はないでしょう。

現在の状況は、自動車のシートベルト着用義務化当時と似ています。08年6月から後部座席のシートベルト着用が義務化されました。その後、法律上の義務を怠ったとして、シートベルトを着用しなかった被害者への賠償が減額された判例があります。自転車については、現在は努力義務にとどまりますので、賠償額の減額は認められにくいでしょう。

しかし、今後、自転車のヘルメット着用が法的義務になったり、着用が「当たり前」という状況になったりすれば、判断が変わる可能性があります。何よりあなたの命や体を守るために必要ですので、着用をお勧めします。

西日本新聞 8月9日分掲載(山下拓也)

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