「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2020年4月15日

夫の死後も家に住み続けられる?

▼Q 子どもは独立し、夫所有の家に夫と2人で暮らしています。夫の預貯金が多少ありますが、収入は年金だけ。夫に先立たれたら、私は今の家に住み続けられますか。生活費も確保できますか。

▼A 2018年に相続に関して重要な法改正がありました。その一つが、今年4月1日以降に亡くなった方の相続に適用される「配偶者居住権」の新設です。

3月末までに亡くなった方の相続については、配偶者がその家に住み続けたいと希望する場合、(1)配偶者が家の所有権を取得する(2)家の所有権を取得した他の相続人(子どもなど)から借りる―などの方法で住み続けることができました。しかし(1)は、一般的に建物の評価は高額なので、預貯金など他の遺産の取り分が少なくなり、生活に支障を来す恐れがあります。(2)は家賃を支払い続けなければならず、負担が生じます。

そこで法改正により、被相続人の死亡時、被相続人の家に住んでいる配偶者に、原則として終身、無償で住み続けられる権利を確保する配偶者居住権の制度が新設されました。配偶者居住権は所有権と比べて低く評価されるので、配偶者は家に住み続けながら、預貯金などの財産をこれまで以上に取得でき、生活費も確保できるというわけです。ご相談のケースについては、配偶者居住権の取得を考えられるといいでしょう。

相続問題は、さまざまな法改正の内容を踏まえて、最終的な解決の姿を念頭に置きながら対処する必要があります。悩みは弁護士にご相談ください。

西日本新聞 4月15日分掲載(塩澄哲也)

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