「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2021年9月15日

暴対法ってどんな法律?

▼Q 暴力団対策法(暴対法)という法律を耳にしますが、どのような対策をしているのですか。

▼A 福岡県では今年、暴力団員による市民襲撃事件や、組事務所の使用差し止め裁判などで、暴力団に厳しい判決や決定が相次ぎました。そこで、これまでの暴力団対策の発展について解説します。

昭和時代の暴力団は、事務所には堂々と看板を掲げ、スーツには組のバッジを付けて活動していました。当時は暴力団活動自体を取り締まる法律はありませんでした。しかし、1991年に暴対法が制定され、このような行為は禁止されました。

それでも、威力を利用して資金を獲得する活動は続きました。そこで2004年や08年の法改正で、暴力団活動を通じて人を傷つけたり金銭を脅し取ったりした場合に、直接関わっていない組長も損害賠償責任を負う仕組みができました。例えば、ある組長は、組員が行った特殊詐欺の損害賠償を命じられています。

また、13年の法改正では、各都道府県の暴追センターが住民に代わって組事務所の使用を止める裁判を起こせる仕組みができました。これによって福岡県でも複数の組事務所が撤去されています。

さらに、各都道府県では11年までに暴力団排除条例が施行されました。市民が暴力団を利用する目的で利益供与することなどが禁止されるようになりました。

社会から暴力団をなくすためには、利用しない、恐れない、金を出さない、交際しない、が重要です。これを実現するため、法律も進化しています。

西日本新聞 9月15日分掲載(森田孝久)

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