「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2022年4月6日

無断キャンセルどう予防

▼Q 経営する居酒屋で、予約の無断キャンセルに悩まされています。どう対応したらよいのでしょうか。

▼A グルメサイトの普及によって予約が簡単になりましたが、無断キャンセルまで気軽にしてよいわけではありません。法律的には、予約した段階で店と客の間に「飲食店利用契約」が成立し、双方とも契約に拘束されます。店は座席を確保し、料理やスタッフを準備しなくてはなりません。客は準備されたものに対して代金を払わなくてはなりません。やむを得ない場合や、店が認める場合など、合理的なキャンセルは契約上可能と解釈されますが、無断キャンセルは「債務不履行」です。客側に損害の賠償責任が発生します。

しかし、いくら賠償責任を問えるといっても、店側には請求や交渉を毎回する余裕はありません。無断キャンセルを予防する方が重要です。前金なしで5万円の予約を受けるということは、その客に5万円を貸すのと同じことですが、それをせざるを得ないのが飲食店です。前払いしてもらうのが最も確実な予防策ですが、客は敬遠するでしょう。それなら「○円以上の予約は前金○%」などと設定する方法もあります。

予防策は費用、手間、効果のバランスで考えます。お勧めは、予約後の折り返しや、来店数日前の確認などの小まめな電話連絡です。確実につながる連絡先を把握しておくことで、無断キャンセルの確率はぐっと下がります。少々面倒ですが、費用はそれほど掛かりません。こうしたリスク管理は弁護士が得意とするところです。近くの弁護士にご相談ください。

西日本新聞 4月6日分掲載(角倉潔)

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