「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2012年2月9日

高次脳機能障害 孤立しないで

脳卒中や交通事故による頭部外傷で脳が損傷を受け、記憶や判断、感情、行動といった機能が損なわれる「高次脳機能障害」を負うと、本人はもちろん、家族の生活も一変してしまうことが少なくありません。

こうした困難の解決、緩和には医療や行政など多くの分野でのケアが必要ですが、交通事故などのケースで避けて通れないのが、被害賠償の問題です。仕事や就職ができなくなったり、家族が介護のため退職しなければならなくなったり。多くの場合、経済的な問題は深刻です。

特に交通事故の場合、実際の交渉相手は保険会社となります。リハビリや介護に追われ、専門的知識もない人が“プロ”を相手に対等に交渉し、十分な補償を得ることは困難です。交通事故の損害の基準はいくつかありますが、保険会社が用いるのは、裁判所や弁護士が用いる基準より低額なのが実情です。

特に高次脳機能障害の場合、後遺障害の認定や介護の必要性など、賠償額を左右する領域については専門的な知識と経験が不可欠です。専門家である弁護士への相談をお勧めします。

また、各地に当事者と家族の会(福岡・翼の会など)があり、情報提供や勉強会、作業所運営などに取り組んでいます。日々の生活や介護で孤立しないためにも仲間と支え合うことはとても大切です。

◆福岡・翼の会=092(732)0539

◆福岡県弁護士会の相談窓口案内=(0570)783552(なやみここに)

西日本新聞 2月9日分掲載(小野裕樹)

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