「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2021年4月7日

友人の遺言書作成、手伝って大丈夫?

▼Q 友人は、孫に全財産を相続させる内容の遺言書を自分で作りたいそうです。ただ、高齢のため、一人で文字を書くのが難しい状態です。遺言書の内容から息子には相談できないらしく、私に手を添えていてほしいと依頼がありました。手伝っても問題ないでしょうか。

▼A 遺言には、主に自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。公正証書遺言は公証役場で公証人が作成し、自筆証書遺言は自ら書いて作成します。

他人が手伝った自筆証書遺言の効力を巡り、最高裁まで争われたことがあります。最高裁は、遺言者の手を用紙の正しい位置に運んだり、そこで手を支えたりするような手伝いならよいが、文字を書くために手を動かすのを手伝うことまでは認められない、としました。このケースは結局、積極的に手を動かす手伝いがあったとして、遺言は無効となりました。

このように、遺言の書面作成の手伝いはトラブルのもととなるため、基本的にはお勧めしません。友人が自ら書くのが難しければ、公正証書遺言を検討するようアドバイスした方が良いでしょう。

遺言をすれば、ご自身の意向を相続に反映できます。遺言には法律上のさまざまな決まり事があるため、弁護士に相談していただければ、自筆証書遺言を作成される場合でも、それぞれの状況に応じたアドバイスができます。

日弁連は4月15日を「遺言の日」としており、福岡県弁護士会では同日、遺言や相続に関する法律相談を無料で実施します。ぜひ弁護士にご相談の上、悩みや不安を解消してください。予約電話=(0570)783552。

西日本新聞 4月7日分掲載(後潟伸吾)

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