「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2022年8月10日

野良猫に餌をあげたい

▼Q 庭に野良猫が迷い込みました。やせ衰えていて餌をあげたいのですが、近所からの苦情が心配です。法的に問題はありますか?

▼A 動物の取り扱いを定めた法律として動物愛護法があります。野良猫にも適用されます。

動物愛護法は、野良猫に対する餌やり自体は禁止していません。逆に「みだりに給餌若(も)しくは給水をやめること」を動物虐待として処罰対象としています。餌を与えなければごみあさりや民家に泥棒に入るなど、むしろ逆効果だともいわれています。この法律は、人と動物の共生する社会の実現を図ることが目的です。

そこで、全国で取り組みが広まっているのが、TNR活動や地域猫活動です。TNRは、猫を捕獲(Trap)して不妊去勢手術をして(Neuter)元居た場所に戻す(Return)ことであり、地域猫活動は、さらに地域住民で役割(餌やりやトイレ担当)を決めてその後の継続的な管理を行い、一世代限りの命をみんなで大事にしようという活動です。この活動では、まず捕獲の為に野良猫を餌付けして慣らすことが必須です。ただ、無秩序な餌やりにより地域の衛生状態が悪化することは避けなければなりません。地域の理解がなく、餌やりを批判されては一歩目でつまずいてしまいます。保健所で殺処分して数を減らすのではなく、共に利益を享受しながら共生できる社会を目指すことは、より成熟した社会につながるはずです。

福岡県弁護士会は27日午後1時から、福岡県弁護士会館で「人と動物の共生する社会の実現のために」と題してシンポジウムを行います。奮ってご参加を。

西日本新聞 8月10日分掲載(朝隈朱絵)

※このイベントは終了しました

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