「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2020年9月16日

警察に逮捕、日本に残れるか心配

▼Q 在留資格を取得している技能実習生です。先日居酒屋で、酔って隣りのお客を殴り、逮捕されてしまいました。いったん釈放されましたが、これからも日本で実習を続けるにはどうすればいいでしょうか。

▼A 刑事事件になったとき、外国の方にとって一番心配なことは、今後も日本に残れるかという点ではないでしょうか。日本に滞在されている方は、在留資格を有していると思います。在留資格は逮捕後、起訴されて裁判になったからといって、失われるものではありません。この段階では罪を「疑われている」に過ぎないからです。

しかし、裁判で有罪が確定すると、判決次第では「退去強制事由」に該当し、国外退去になる可能性があります。今回のご相談のように、技能実習の在留資格を持つ外国の方が傷害罪として裁判で有罪になった場合、執行猶予(適法に過ごすのを条件に、刑の執行をいったんとどめておくこと)付きの判決であっても、退去強制事由に該当してしまいます。ですから、この場合は起訴される前の段階で、示談(話し合い)を成立させ、不起訴となるようにすることが重要となります。

退去強制事由に該当する犯罪類型は、在留資格や量刑(刑罰の程度)によっても異なります。外国の方は、国外退去とならないよう、早い段階で弁護士に相談し、示談による不起訴を目指すなど、状況に応じた弁護活動にいち早く取り組んでもらうことが大切です。

西日本新聞 9月16日分掲載(請川大造)

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