「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2017年12月20日

長時間労働で亡くなった場合の補償は

▼Q 長時間労働で亡くなったり、精神障害を発症して会社を休んだりした場合、補償はありますか?

▼A 仕事が原因で脳や心臓の病気を発症して亡くなったり(過労死)、精神障害を発症したり(過労うつなど)、それが原因となって自死(過労自殺)したときにも、労災補償制度の適用があります(公務員の場合は公務員災害補償制度)。

民間では労働基準監督署に労災請求することになりますが、一定の認定基準を満たす必要があります。過労死なら発症前1カ月におおむね100時間、または2~6カ月にわたって1カ月当たりおおむね80時間を超える残業が認められる場合です。過労自死や過労うつでは、直前6カ月間に残業その他大きな心理的負荷があったと認められれば労災認定される可能性があります。補償は相当に手厚く、遺族は安心して生活ができ、労働者も療養に専念できます。

ただ認定基準に当てはまるかどうかの調査は容易ではありません。例えば労働時間の調査などはタイムカードがあればいいですが、ない場合はパソコンの使用時間の記録を保存したり、携帯やスマホの「帰るコール」などを残しておいたり、通勤に使う交通系ICカードの履歴を取り寄せたりと、早い段階で証拠の確保に動いた方がいい場合もあります。

働くことは本来、私たちにとって生きがいや喜びとなるはずのものです。しかし万一、不幸な結果が生じた場合、早い段階で弁護士などに相談してください。

西日本新聞 12月20日分掲載(井下顕)

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