「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2025年7月3日

胎児の死亡による慰謝料

▼Q 妊娠中の娘が追突事故に遭い、流産してしまいました。娘はショックで何もできない状態ですが、賠償のことが心配です。

▼A 大変つらい事故でしたね。現在の判例では、死亡した胎児には損害賠償請求権がないと解されています。しかしながら、胎児が生まれた後すぐに死亡した場合には高額の損害賠償が認められるのに、たまたま生まれる直前で死亡してしまった場合には何も賠償が受けられないというのは、あまりにも理不尽です

そこで、1990年ごろから、死亡した胎児について、母の慰謝料として損害賠償を認めるという考え方が確立されていきました。当時の文献では、新生児の死亡慰謝料の基準が1500万円であったことから、妊娠10カ月目で流産した場合には、その半分であるおおむね600万円ないし800万円を基準とした慰謝料を認めるのが相当と報告されています。現在でも、これを基準に、個別の事情を考慮して慰謝料を定める判決がみられます。なお、妊娠周期が後期になるほど慰謝料が高額になる傾向があります。

もっとも、現在では新生児の死亡慰謝料は2000万円に引き上げられています。そのため、胎児の死亡慰謝料が古い基準の800万円のままでいいのかという問題があります。

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西日本新聞 7月3日分掲載(村岡隼介)

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