「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2022年2月2日

著作物はコピーできる?

▼Q 建設会社の課長です。契約獲得のため、業界紙の記事をコピーして課の全員に配布し、勉強させています。昔からの慣行なのですが、著作権のことが心配です。

▼A その業界紙は発行者の著作物です。著作物は、原則として複製(コピー)できません。購入した以上は会社の所有物なのですが、コピーできないという前提で所有していることになります。

ただし、著作者が許している場合や、「私的」に複製する場合は複製できます。私的とは「個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」です。自宅でテレビを録画したり、CDなどの音楽データをコピーしてスマホで聴いたりするのは、許される範囲内です。

会社の場合、個人や家庭を超えた範囲になるので複製はできません。例外的に、業務とは直接関係がない数名程度の勉強会で使う資料にするような場合は、「私的」なものと解釈されているようです。しかし、相談のケースは、業界紙の配布が契約獲得という業務に組み込まれています。個人ではなく会社の利益のための複製ですから、「私的」の範囲を超え、許されないでしょう。

実際に、他社の設計図面をコピーして訴えられた事件があります。この事件では、その図面を使って製品を作ったわけではありませんでした。しかし、社内の参考資料としてコピーしたこと自体が著作権を侵害したとして、損害賠償が命じられました。この点、業界紙そのものを回覧するなら、著作者の許可はいりません。この方法をお勧めします。

西日本新聞 2月2日分掲載(南川克博)

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