「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2021年12月15日

窃盗、強盗・・・どう違う?

▼Q 同じお金を取る犯罪でも、ニュースでは窃盗、横領、背任など呼び方が違います。どう違うのですか?

▼A 一番目にする罪名は「窃盗」でしょう。窃盗は万引、空き巣など、他人のものを勝手に取る犯罪です。

取り方が無理やりだと「強盗」になります。無理やりとは、相手の抵抗を封じるレベルです。単なる空き巣やひったくりなら窃盗ですが、住人を縛り上げると「強盗」です。

相手から物を渡させた場合でも、それが相手の本意でなければ「詐欺」や「恐喝」となります。「詐欺」はだまして渡させるものです。偽ブランド品であることを黙って売って代金を払わせると「詐欺」です。間違って多く渡された釣り銭を、そうと分かって持ち帰ることも「詐欺」に当たります。「恐喝」は怖がらせて渡させるものです。支払わなければ殴ると言ってお金を取ると「恐喝」です。怖がらせるレベルを超えて抵抗を封じると「強盗」になります。

「横領」は他人から預かっているものを自分のものにすることです。仕事で横領をすると「業務上横領」となり、刑が重くなります。

放置自転車を持ち去るのは、「窃盗」ではなく「占有離脱物横領」です。誰かの占有(所持)を離れた物を取るからです。

物を取るのではなく、与えられた任務に背いて財産的損害を与えるのが「背任」です。銀行員が知り合いに内規に反して融資し、回収不能にすると、銀行に対する「背任」となります。会社役員の背任は「特別背任」となり、刑が重くなります。

ニュースでよく見る罪名、イメージできたでしょうか。

西日本新聞 12月15日分掲載(角倉潔)

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