福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2022年11月号 月報

中小企業支援センターだより 事業承継ガイドラインについて

月報記事

中小企業支援法律支援センター 鬼塚 達也(71期)

1 4つのガイドライン

令和4年3月に、中小企業の事業再生・事業承継に関する4つのガイドライン(中小企業の事業再生等に関するガイドライン、廃業時における「経営者保証に関するガイドライン」の基本的考え方、事業承継ガイドライン(改訂版)、中小PMIガイドライン」)が公表されました。そのうち、今回は事業承継ガイドライン(改訂版)についてご説明いたします。

2 事業承継ガイドライン
(1) 事業承継ガイドラインとは

事業承継ガイドライン(以下「ガイドライン」といいます。)は、中小企業庁において、中小企業経営者の高齢化の進展等を踏まえ、円滑な事業承継の促進を通じた中小企業の事業活性化を図るため、事業承継に向けた早期・計画的な準備の重要性や課題への対応策、事業承継支援体制の強化の方向性等について取りまとめたものです。ガイドラインは、事業承継を検討するに際して有用なものです。

昨今の新型コロナウイルス感染症の影響もあり、事業承継を後回しにする事業者も少なくありません。当該状況を踏まえて事業承継をより一層推進するため、令和4年3月にガイドラインの改訂版(改訂内容・・・掲載データや施策等の更新、従業員承継や第三者承継(M&A)の説明の充実、後継者目線での説明の充実)が出されました。

ガイドラインによると、九州では後継者不在率が従前に比べて悪化しているとのことですので、会員の皆様の関与がより期待されます。

(2) ガイドラインの主な内容

ガイドラインの主な内容は、事業承継に向けた早期・計画的な取組の重要性(事業承継診断の導入)、事業承継に向けた5ステップ1の提示、地域における事業承継を支援する体制の強化の3点です。

3 ガイドラインにおける弁護士の関わり方
(1) ガイドラインでは、弁護士の関わり方として以下のものが想定されております。
  • 経営者と共に金融機関や株主、従業員等の利害関係者への説明・説得
  • 法律面全般の検討と課題の洗い出し(とりわけ、株主関係が複雑な場合や、会社債務・経営者保証等に関する金融機関との調整・交渉が必要な場合、M&Aを活用する場合)
  • 法律面全般の検討と課題の洗い出しを踏まえたスキーム全体の設計
  • 契約書をはじめとする各種書面の作成
(2) スキーム全体の設計の具体例

ガイドラインでは、スキーム全体の設計に関して、株式・事業用資産の分散防止という観点又は事業承継の円滑化という観点から、以下の方法を活用することが提案されています。

  • 株式・事業用資産の分散防止
    (ア)事前
    生前贈与、安定株主の導入、遺言の活用、遺留分に関する民法特例
    (イ)事後
    買取資金等の調達、自社株買いに関するみなし配当の特例、会社法上の制度(相続人等に対する株式売渡請求、特別支配株主による株式等売渡請求、株式併合及び端数処理、名義株の整理、所在不明株主の整理)
  • 事業承継の円滑化
    種類株式、信託、生命保険、持株会社
4 当センター勉強会での意見

当センターの有志は、ガイドラインが改訂されたことに合わせて、勉強会を行いました。勉強会においては、ガイドラインには記載がないものの有意義な意見が多数出されました。以下ではその一例を記載いたします。

  • 現在において、第三者承継が増えてきてはいるが、第三者承継より親族内承継の方が多い。しかしながら、親族内承継ではM&A仲介業者が関与することがほとんどないことから、親族内承継の支援が手薄である。そこで、弁護士として親族内承継を積極的に支援すべきであろう。
  • 株式・事業用資産の分散防止に関して、株式が分散している場合には弁護士が早期に関与して株式集約を行うべきであろう。
  • 事業承継の円滑化に関して、種類株式の導入には先代経営者及び後継者の理解が必須であるところ、議決権制限種類株式及び配当優先種類株式であれば理解が比較的得やすいのではないかと思われる。
  • 事業承継の円滑化に関して、信託という方法があるが、信託であっても遺留分に配慮することが必要である等から、信託という方法を積極的に採用する理由がどこまであるかは疑問である。
  • 経営者が事業承継において取り組みやすい方法は、経営者の意向にもよるが、基本的には遺言又は生前贈与であると思われる。
5 結び

ガイドラインは事業承継を考えるに際して有益なものかと思いますので、ガイドラインをご一読いただけますと幸いです。

1 (1)事業承継に向けた準備の必要性の認識→(2)経営状況・経営課題等の把握(見える化)→(3)事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)→(4)事業承継計画策定/マッチング実施→(5)事業承継の実行/M&A等を指します。

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2022年10月号 月報

「~裁判傍聴&弁護士との交流会~弁護士に会ってみよう!」企画のご報告

月報記事

法科大学院運営協力委員会 委員長 稲場 悠介(62期)

第1 はじめに

皆様は、いつ、法曹になることを志されたでしょうか?

早い人だと小学校からでしょうし、社会人になって法曹を志望される方もいると思います(私は大学生のときでした。)。

法曹を目指す切っ掛けも人それぞれだと思いますが、裁判を傍聴することや、実際に弁護士に会ったことで法曹を目指す機序になった方もいるのではないかと思います。

そういった機会を提供するため、去る8月26日(金)、当委員会において「~裁判傍聴&弁護士との交流会~弁護士に会ってみよう!」と題して、主に大学生を対象にした企画を実施しましたので、ご報告させていただきます。

第2 裁判傍聴(第1部)
1 裁判傍聴

まず、弁護士引率の下、実際の裁判を傍聴しました。コロナ禍や夏季休廷期間の時期でもあり、そんなに多くの裁判は開廷されていませんでしたが、民事裁判及び刑事裁判の両方を傍聴することができました。特に刑事裁判については、冒頭手続から判決までといった全ての刑事手続を傍聴することができました。

2 弁護士との懇談(傍聴した裁判の感想会)

続いて、実際に傍聴をした裁判について、引率した弁護士と懇談を行いました。

単に傍聴する場合、裁判は粛々と行われるため、各手続の流れやその意味については、勉強していてもなかなか理解できません。

しかし、本企画では、傍聴後すぐに弁護士から説明を受けることができるので、傍聴していたときに疑問に思ったことを、すぐに弁護士に聞くことができ、より理解を深められるのが良いところです。

実際に、参加者からは手続面から実体面の質問は勿論、検察官や弁護士の法廷での心情など、多岐に渡る質問が出ました。

実際に目の前で行われた裁判を新鮮な記憶のまま議論の素材とすることができるという経験はなかなかできません。参加者にとって貴重な経験を提供できたのではないかと思います。

第3 弁護士との交流会(第2部)

第2部は、弁護士がどういった仕事をしているのか、勤務している事務所による弁護士の仕事の仕方の相違はあるのか、さらに司法試験受験自体の体験談などを講演会方式で実施しました。

コメンテーターとして、畑田将大弁護士、井上瞳弁護士、内田鴻二弁護士など参加者層に近い年代の先生方に登壇して頂き、各自の経験に基づいたお話をして頂きました。

弁護士によって様々な業務があること、弁護士の職務が広範に及ぶこと、また所属する事務所によって働き方も異なることを、具体的な話を通じて感じていただけたのではないかと思います。

また、司法試験時代の話も多岐に渡り、漠然と「厳しい試験」「長時間の勉強を要する」「合格には特別な才能がいる」というイメージのある司法試験も、より身近に、また勉強のモチベーションのアップに貢献できたものと思います。

コメンテーターの先生方もしっかり準備して頂き、真剣な話の中に笑いもあって、良い意味で肩肘を張らずに聞けた講演会であったと思います。登壇された先生方には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

質疑応答の時間では、参加者から多くの質問が出ましたが、閉会後も近くにいた弁護士を捕まえて、更に質問をする姿が多くあったのが印象的でした。

第4 さいごに

本企画は、日弁連で行われている「弁護士に会ってみよう」という企画を参考に、平成30年から実施しています。令和2年はコロナの影響で実施できなかったため、今回の実施で延べ4回目の開催となります。

昨今、法曹志望者が減っているという話が聞かれます。

その理由は様々でしょうが、裁判の実際や、それに携わる私たちの仕事への理解が進めば、将来の進路選択の一つとするきっかけとなり、本企画はその一助になるのではないかと思っています。

なお、今回の参加者はZoom参加者も含めて23名でした。第1回のときは2名でしたので、地道に活動してよかったと思っており、次年度以降も実施する予定です。

法曹に興味があるという方のお知り合いがいらっしゃったら(参加者は高校生・大学生を想定しています。)是非、次年度以降の本企画へのご参加にお声掛けください。

いつの日か、この企画で法曹になることを志し、見事、それを達成してくれた方に会えることを願っています。

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シンポジウム「人と動物が共生する社会の実現のために」のご報告

月報記事

公害・環境委員会 委員 藤田 裕子(68期)

1 はじめに

2022(令和4)年8月27日(土)、福岡県弁護士会主催の市民向けシンポジウム「人と動物が共生する社会の実現のために」が開催されましたのでご報告いたします。

2 シンポジウム開催の背景

近年のペットブームのなか、動物が人にとってかけがえのない存在になっている一方で、野良猫の糞尿・ゴミ漁り等により、人の生活環境への被害が問題となっています。公害・環境委員会では野良猫の問題を人の生活環境の問題と捉え、2020(令和2)年度に動物愛護PTを発足して調査を始めました。

従来、野良猫対策としては専ら殺処分の方法が取られてきました。しかし、動物愛護法は改正を重ね、「動物は命あるもの」であることを認識し、人と動物が共生する社会を目指すことを定め、環境省も殺処分をなくすことを推進しています。そこで、動物愛護法の概要や改正の経緯、現状や取り組むべき課題等を参加者に知ってもらい、人と動物が共生できる社会の実現のために何が必要かを参加者とともに考える機会を持つために、本シンポジウムは開催されました。

3 シンポジウムの内容
(1) 法律の解説

公害・環境委員会委員の朝隈朱絵会員が、動物愛護法の概要、改正の経緯について解説しました。

動物愛護法は、1973(昭和43)年に「動物の保護及び管理に関する法律」という名称で制定されました。その後、犬や猫等のペット動物が人の生活の中で重要な位置を占めるようになってきたこと等から、1999(平成11)年に「動物の愛護及び管理に関する法律」という名称に変更され、基本原則に「動物が命あるもの」との文言が加えられました。動物取扱業規制や飼い主責任徹底なども新たに盛り込まれました。2012(平成24)年には、法目的に「人と動物の共生する社会の実現」が追加され、所有者の終生飼養の責務や都道府県等が犬猫の引き取りを拒否できること等が規定されました。また、2019(令和元)年の改正では、犬や猫に所有者の情報を記録したマイクロチップ装着を義務付け、動物の殺傷等に対する罰則を強化しました。

動物愛護法はこのような改正を重ねてきましたが、実効性の確保等の課題を抱えています。人と動物の共生は、SDGsの推進とも関連しており、今後も議論が必要だということが確認されました。

(2) 基調講演

福岡市保健福祉局生活衛生部動物愛護管理センター所長吉柳善弘氏から「動物愛護管理の現状とこれから」というテーマでお話しがありました。

センターでは、放浪犬の「捕獲」、所有者不明の犬猫や負傷した犬猫、飼い主が飼えなくなった犬猫の「引取り」を行っています。2012(平成24)年の動物愛護法改正により犬猫の引き取りが拒否できるようになったことから収容頭数は減少傾向にありますが、子猫の占める割合が高い状況にあります。

収容された犬猫は元の飼い主に返還あるいは新しい飼い主に譲渡していますが、感染症や攻撃性などにより譲渡困難な犬猫については殺処分を行っています。福岡市では、「殺処分ゼロを達成した」と言われていますが、譲渡困難と判断した数を除く実質的殺処分ゼロが達成されたという意味であり、令和3年度は、感染症等を理由として125頭の犬猫が殺処分されているそうです。

福岡市は引き続き、収容数の削減や飼い主のいない猫問題などに取り組むとのことで、新しくペットを飼う際におとなの犬猫を迎え入れることや迷子対策としての犬の鼻紋認証システムの紹介がありました。

(3) ブレイクタイム

立花高等学校の皆さんより、同校での授業「命のつなぎ方」の取り組みについて紹介がありました。一人の生徒が猫を拾って学校に連れてきたことがきっかけで、「果てようとしている命に素通りする人でいて欲しくない」という考えから、授業の一環で保護猫活動が始まりました。動物愛護管理センターへの見学、相島への訪問、保護猫のお世話をしているそうです。

(4) パネスディスカッション

兵庫県弁護士会所属弁護士の細川敦史氏、福岡県獣医師会所属獣医師の中岡典子氏、特定非営利活動法人SCAT代表理事の山﨑祥恵氏に吉柳氏を加えて、「人と動物の共生する社会の実現のために」というテーマでパネルディスカッションが行われました。

はじめに、細川氏から、人権擁護を使命とする弁護士会が動物愛護に取り組むことの意味についてお話いただき、動物が暮らしやすい社会が人にとっても暮らしやすい社会であるということ、つまり動物の尊重が人権の尊重につながっているということを確認しました。

次に、殺処分の対象となる犬猫が生まれる背景について、中岡氏と山﨑氏にそれぞれお話いただきました。中岡氏からは、特に最近増加している高齢者の中途飼育放棄、多頭飼育崩壊の紹介がありました。入院・死亡等の事情で最後まで飼えなくなる場合、不妊去勢手術を怠ったためにあっという間に飼えない数まで増える場合等多くの具体的な事例があるそうです。山﨑氏からは、大量生産・大量消費を前提とするペットショップによる遺棄の問題、ペットショップが病気の犬猫を販売している事例についての紹介がありました。細川氏からは、特にペットショップの規制は弁護士が入っていきやすい分野であるが、これらの問題に対し弁護士が関わっていくには、公害・環境委員会だけで活動するのではなく、高齢者障害者委員会や消費者委員会との協働が必要ではないかとの意見が述べられました。また山﨑氏から、多頭飼育崩壊やペットショップによる遺棄は動物虐待の一種であるが、警察に通報しても捜査されないことへの問題提起もありました。

そしてセンターに収容された犬猫を殺処分しないための取り組みについて吉柳氏からお話がありました。センターではなるべく新しい飼い主に譲渡をしようとしているが、譲渡までには時間や手間がかかり、行政だけでは対応できずボランティアに頼っているという問題があるということでした。

最後に、パネリストの方々から、「人と動物の共生する社会」の実現のためには、動物愛護行政や福祉行政、動物保護団体や獣医師、弁護士や警察などが連携し、お互いの知識を共有していく必要があるのではないかという意見が述べられました。

(5) 閉会挨拶

公害・環境委員会委員長高峰真会員より閉会の挨拶として、持続可能な社会の実現のためには動物と上手く共生していくことが必要であり、シンポジウムで確認できた課題に今後とも取り組んでいきましょうという言葉とともに、福岡県弁護士会がSDGs官民連携プラットフォームに加入したことの紹介がありました。

4 最後に

本シンポジウムには、会場34名、オンライン112名の方にご参加いただき盛況となりました。公害・環境委員会は、今後も残された課題の解決、SDGsの推進に向けて取り組んでいきます。

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谷間世代への一律給付実現全国リレー集会 in 福岡

月報記事

司法修習費用給費制復活緊急対策本部 委員 武 寛兼(69期)

1 はじめに

令和4年8月20日、福岡県弁護士会館2階大ホールにて、「谷間世代への一律給付実現全国リレー集会in福岡」が開催されましたので、ご報告いたします。

2 新里先生からの基調報告

日弁連の司法修習費用問題対策本部・本部長代行の新里宏二先生(仙台弁護士会所属)から、基調報告をいただきました。

令和4年6月14日に行われた院内集会で、小林日弁会長から「一律給付は、日本の司法インフラを担う若き法曹に希望と勇気を与える、将来投資として極めて意義のある投資」であると述べられたことや、参加した国会議員から、不公正の是正の声や「運動がやっと5合目まできた」、「国会議員の過半数の賛同を得たとき制度が実現する」との声があったことのご報告がなされました。

その他に、「谷間世代」への一律給付を認めることの必要性や意義などにも言及されました。

院内集会の中で、国会議員から、「5合目まできた」、「過半数の賛同を得たとき制度が実現する」など、具体的な数字に言及されていることは特に印象的でした。

さいごは、司法修習費用問題についての全国リレー集会は、71期から復活した司法修習費用給付制の実現の前年頃に実施したのに続いて2度目の開催であり、このリレー集会を機に一律給付を実現させましょうと締めくくられました。

福岡県弁護士会 新里先生の基調報告

新里先生の基調報告

3 谷間世代の声

続いて、谷間世代の声として、山本隼巳会員(68期)から報告をいただきました。

法曹は法治国家の基本的インフラであり、司法修習期間中に一切給付のなかった谷間世代に摩耗が生じていること、インフラの補修は早期にする必要があることが説明されました。

また、アンケートで多数寄せられた谷間世代の声として、「修習専念義務を課しながら生活費は借金という制度は理不尽、不合理だったと言わざるを得ない」、「国や社会に育ててもらったという意識を持ちにくい」などが紹介されました。

4 谷間世代のチャレンジ報告

谷間世代の弁護士が取り組んでいる活動報告として、谷間世代の弁護士から報告がありました。

(1) 國府朋江会員(65期)からの報告

國府会員からは、「介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット」での活動を中心に報告がありました。

國府会員は、障害者のヘルパーの時間(「支給量」)が自立した生活に必要なだけ保障されるように、障害者団体と協力して活動をしているそうです。このような活動が、障害者や障害者を支援する人たちの生活に必要不可欠であることは明らかで、日弁連の若手チャレンジ基金制度でブロンズジャフバ賞を受賞されたそうです。ただし、このような活動の実情としては、効率的に報酬を得やすい仕事ではないとのことでした。

修習期間中の費用の貸与を受けた谷間世代は、修習終了後6年目から、毎年7月に貸与を受けた額の10分の1を10年間返済しなければなりません(私は69期の谷間世代ですが、今年の7月に1回目の返済が始まりました。)。

國府会員からは、障害のある人の権利を守るこれらの活動については、事務所から支えてもらって活動ができているが、「返済のための10年間は、自分のためにお金をかけてはいけない期間、貸与を受けて、使ってしまった自分へ罰を科している期間だと思っている。」との報告があり、とても印象的でした。

福岡県弁護士会 國府会員の報告

國府会員の報告

(2) 米山功兼会員(68期)からの報告

米山会員からは、「福岡における若手弁護士による中小企業支援」について報告がありました。

米山会員は、中小企業法律支援センターの活動を通じて、中小企業への法律相談の窓口を設け、弁護士に相談することによって法的リスクの発見や回避につなげ、コンプライアンスや法的問題への対応意識の向上等に尽力されているそうです。

中小企業の多くは零細・個人企業であり、費用面から弁護士へのアクセスがなく、結果的に事業が破綻してしまったり、窮状に陥ってしまったりする事業者を救済することを目的の一つとしているそうです。

これらの活動も多くの谷間世代の弁護士により支えられているとのことでした。

福岡県弁護士会 米山会員の報告

米山会員の報告

5 国会議員からのメッセージ

このリレー集会には、共催であった九弁連の先生方のご協力もあり、福岡県内外の多くの国会議員から谷間世代を応援する旨の、もしくはこの問題の解決に取り組むとするメッセージ(合計34通)をいただくこともできました。

私が特に印象的だったのは、会場で挨拶を頂いた議員の「谷間世代への一律給付実現は、「救済」ではなく、法曹養成制度の中の過去の制度の誤りを謝罪して是正する、原状回復をするもの」、「戦争準備のための戦闘機購入に比したら微々たるもの」、とのお話でした。

弁護士会館での国会議員本人出席(4名)、ZOOMによる議員本人出席(4名)、議員秘書による代理出席(4名)など多数あり、多くの国会議員に興味を持っていただいたことは、谷間世代への一律給付実現に向けて大きな励みになると思います。

6 さいごに

谷間世代への一律給付実現全国リレー集会の第1走者として、福岡集会が開催されましたが、上記のとおり、その内容はとても充実したものであったと思います。

繰り返しになりますが、共催の九弁連の先生方の呼びかけのおかげもあり、九州各地の国会議員から多くのメッセージをいただくこともできました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。また、コロナ禍のなか、九弁各会からも沢山の会員に駆けつけて頂き、また、ZOOMで視聴して頂きました。会場出席者70名強、ZOOM視聴者70名強という沢山のご参加を頂きましたことにも、この場を借りて感謝申し上げます。

今後も全国リレー集会のバトンは繋がれていきます。ZOOMでの参加も可能ですので、できるだけ多くの先生方(特に谷間世代の先生方)にご参加いただくようお願い申し上げます。

福岡県弁護士会 鬼木議員からのご挨拶

鬼木議員からのご挨拶

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プリズン・サークル上映会&講演会

月報記事

死刑制度の廃止を求める決議推進室員 中原 昌孝(58期)

1 はじめに

死刑制度の廃止を求める決議推進室では、当会の主催、共催を日本弁護士連合会、九州弁護士会連合会として、本年8月7日、弁護士会館2階大ホールにおいて、「この国の「罪と罰」を考える映画『プリズン・サークル』上映&講演会 監督坂上香さんをお迎えして」を開催しました。当日は、関係者も含めて140名を超える参加者があり、これまでの弁護士会のイベントの中でも稀に見る大盛況でした。少し長めになりますが、映画のネタバレにならない範囲で、ご報告をさせていただきます。

2 開会あいさつ

全体の司会は、溝口史子副室長が務められました。最初に、野田部哲也会長から、開会あいさつがありました。野田部会長は、当会は2020年9月18日の「死刑廃止を求める決議」で「死刑の代替刑として終身刑を導入すること」を提示したこと、その終身刑のあり方を議論するためにも現行の自由刑の執行の状況についての情報を共有し理解することが重要であること、それが今回の企画の趣旨であることなどが紹介されました。

3 映画の上映会

映画『プリズン・サークル』(2019)は、日本の刑務所内での受刑者の様子や声を伝えるドキュメンタリー映画です。この映画の舞台は、「島根あさひ社会復帰促進センター」という2000年代後半に開設された4つの官民協同の「PFI(Private Finance Initiative)刑務所」の一つで、犯罪傾向の進んでいない男子受刑者2000名を収容しています。そこでは、2009年から、受刑者同士の対話をベースに犯罪の原因を探り、更生を促す「TC(Therapeutic Community(セラピューティック・コミュニティ)=回復共同体)」というプログラムを導入しています。

映画では、2年間にわたる密着取材により、窃盗や詐欺、強盗傷人、傷害致死などで服役する4人の若者たちが、半年~2年のTCプログラムを通じて、新たな価値観や生き方を身につけていく姿が克明に描き出されています。

具体的には、(1)父親の虐待により小学生のときから施設で育ち、施設でも壮絶な虐待を受けて、感情が動かなくなり、帰る場所(サンクチュアリ)があるという感覚を持てない若者、(2)義父からの虐待や小学校時代の壮絶ないじめ、貧困等から、小学校のころから自殺未遂を繰り返し、盗られたんだから盗ってもよいというのが当たり前で、窃盗に罪悪感が全くない若者、(3)母子家庭で、母親や先輩の暴力の中で育った経験から、人を思い通りにすることができる手段として暴力を捉えていた若者、(4)幼いころから両親の関係が険悪で、逆に親からの虐待がかまわれているようで羨ましいと感じる若者など、犯罪に至るまでに辛い経験をしてきた若者たちが登場します。

そして、このような若者たちが、民間の支援員のフォローのもとに、TCプログラムでの他の受刑者とのコミュニケーションを通じて、自分の心の問題に向き合うようになるまでの姿が描かれています。

映画のTCの場面では、(1)緊張感のある空気をほぐすための手法である「アイスブレイク」から始まり、(2)「ソーシャルアトム(人生の特定の年齢に焦点をあてて、5人の人を思い浮かべ、感情的な関わりやコミュニケーションの度合いを、自己との距離や大きさなどで図に表現する手法)」、(3)お互いに過去の被害体験を語ること、(4)受刑者同士で被害者役などを担当し会話をするロールプレイ、(5)受刑者が他の受刑者の前で2つの相反する自分の感情の立場で代わる代わる意見を言い合う手法など、様々なアプローチが行われていました。

このようなプログラムを通じてできた受刑者同士の仲間は、出所後も交流を持っており、映画では、定期的に連絡を取り合い、再犯に至らないように、お互いを励ましあっている様子も映し出されていました。

4 坂上香監督の講演会

映画の上映後、引き続き、坂上香監督による講演会が行われました。

坂上監督は、『ライファーズ 終身刑を超えて』(2004)、『トークバック 沈黙を破る女たち』(2013)など、アメリカの受刑者を取材し続けてきた方として有名ですが、その原点は、スイスの心理学者であるアリス・ミラーの『魂の殺人 親は子どもに何をしたか』という一冊の本がきっかけだったとのことでした。

それから、坂上監督は、アメリカの刑務所でTCを行う民間団体である「AMITY(アミティ)」の取材を行い、その経歴から、日本で初めてTCを導入した刑務所として、島根あさひ社会復帰促進センターの取材をすることになったそうです。

他方、坂上監督は、1990年代に少年院の取材をされたようですが、当時は「社会話(注:おしゃべりの意味)をするな」というポスターを少年に書かせるなど、TCとは真逆の残酷な指導が行われていたことを紹介されていました。

坂上監督によると、その後、少年院も徐々に変わっていき、刑務所も2001年の名古屋刑務所受刑者放水死事件で社会的な批判を受けて少しは変わったようですが、それでも、日本初となる刑務所内の長期撮影には大きな壁が立ちはだかったようで、取材許可が降りるまでに6年もの年月がかかったそうです。

また、取材中も、お目付け役の職員からファインダーを覗かれて映してはいけないものが映っていないかどうか確認をされたり、最終の当局による試写の際には、顔に効果を加えるだけではなく、言葉も変えるように言われたり、刑務所では受刑者同士が入所中・出所後に相互に連絡を取らないように指導しているため、出所後に受刑者同士が交流するシーンを問題視されたりと大変な苦労があったそうです。

坂上監督は、映画に登場した元受刑者の若者と現在でも交流をされているそうで、「くまの会」というクローズドのフェイスブックを通じて連絡を取り合っているそうです。

5 会場とのクロストーク

講演会後は、当会の人権擁護委員会の事務局長で、刑事施設の視察委員会の委員長も務めており、刑事施設の実態に詳しい塩山乱会員を司会に、会場とのクロストークがありました。

会場からは、例えば、学校の教員の方から、虐待等から非行行為に陥ってしまう生徒を出さないための学校としての取組みについての質問があり、坂上監督からは、学校の中では生徒同士が悩みを語り合う機会が不足していること、TCでいう支援員のように教師以外の第三者が関与することや社会の中で居場所をつくっていくことも有用であることなどの発言がありました。

また、依存症の自助グループに通われている方からは、TCのような仕組みを社会の色々な場所でつくっていくべきとの意見も寄せられました。

福岡県弁護士会 8月7日 坂上監督講演会

8月7日 坂上監督講演会

6 閉会あいさつ

最後に、九州弁護士会連合会の前田憲德理事長より閉会あいさつがあり、全プログラムが終了しました。前田理事長からは、TCを是非多くの刑務所に導入していくべきこと、出所後に社会側がフォローする仕組みも必要であること、そのためには社会の理解が必要不可欠であることなどの話があり、また、映画の内容にも関連して、2022年10月28日の第75回九州弁護士会連合会定期大会でのシンポジウム「ねぇ、きいてっちゃ!~子どもの声と多様な学び」の案内もありました。

7 おわりに

2022年6月13日に国会で成立した刑法等の一部改正による懲役刑・禁固刑の「拘禁刑」への統一は、受刑者の改善更生、社会復帰を志向する改正であり、これを契機に、日本においても刑罰をめぐる考え方が大きく変わっていく可能性があります。そのような中で、映画や坂上監督の講演を通じて、TCという取組みの存在やその有用性を知れたことは、今後、委員会活動や刑事弁護活動を行う上でも、大変参考になるものでした。

最後に、本企画では、参加者の皆様のうち122名からアンケートへの回答があり、刑罰制度に関する多様なご意見をいただきました。

福岡県弁護士会 8月7日 坂上監督講演会会場

8月7日 坂上監督講演会会場

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