福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)

2011年7月号 月報

福岡県弁護士会のロゴマークについて

月報記事

対外広報委員会
古 賀 克 重(47期)

当会のロゴマークが決定しましたので、ご報告します。
1 意義
対外広報委員会およびHP委員会は、当会をイメージとして認知してもらうとともに、他の広報手段と連携されることによって広報効果をより高める目的から、ロゴマークを提案しました。
ちなみにロゴマークは、日弁連、東京弁護士会、大阪弁護士会、福井弁護士会、東京3会の法律相談センターなどが導入しています。
なおHP委員会からは合わせて「キャラクター」の提案もなされましたが、具体的に利用できる場面が現時点では限られるため、今回は見送りました(キャラクターを採用する弁護士会も見受けられ、岡山弁護士会「たすっぴ」、兵庫県弁護士会「ヒマリオン」などがあります)。

2 採用の経過
ロゴのイメージとしては、対外広報委員会およびHP委員会において、「様々な分野で全国をひっぱってきた進取の気質」、「市民に開かれた地元の法律家」などの意見が出ました。
そのイメージも参考に、広告代理店から10種類以上の案を提案してもらい、常議員会でも議論した上、会員に対するアンケートを実施しました。
アンケートでは3つのロゴマークに票が集中しましたので、最終的に、常議員会で決を取り、今回のロゴマークを採用したものです。

3 採用されたロゴ「開かれた扉」
扉(ドア)をモチーフにした今回のロゴマークは、弁護士が気軽に相談できる存在であることを表現したもので、市民の皆さんに気軽に相談して頂きたいとの思いが込められています。
そしてシンプルで覚えやすくこちらの意図が伝わりやすく、弁護士会の新しいイメージを醸成することを狙っています。

4 利用方法
利用方法としては、以下のようなものが考えられます。
当会執行部の名刺、弁護士会の封筒、記念品、レターヘッド、プレスリリース、チラシ、パンフレット、月報、ウェブサイト、テレビCM、パブリシティ(無料広告)、電話帳、省庁訪問資料、他県弁護士会への配布資料などです。
なお、あくまで「弁護士会」としてのロゴマーク・ロゴタイプですので、会員が個人の名刺・封筒・サイトなどに利用することは想定していませんのでご注意ください。

5 他広報との連携
西日本新聞に毎週掲載している弁護士会コラム「ほう!な話」では早速ロゴマークが利用されているほか、6月4日に開催した「法曹養成制度について考える市民集会」翌日の新聞でも、ロゴマーク入りバックボードを背にするカラー写真付き記事が掲載されました。 今後も様々な広報活動とも連携させることによって、福岡県弁護士会の存在、そして地元の弁護士が市民に開かれた頼れる存在であることを一層訴えていきたいと思います。
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◆憲法リレーエッセイ◆「ひまわり憲法劇のこれまでとこれから」

憲法リレーエッセイ

会 員 原 田 純 子(62期)

1 ひまわり一座とは?
皆様、憲法劇のひまわり一座をご存じでしょうか。「劇団ひまわり」と間違えられることも多いそうですが、全くの別団体、弁護士が中心となって、毎年5月の憲法記念日の前後に、憲法劇を行っている団体です。
始まりは1989年、憲法のすばらしさについて、おもしろく、分かりやすく、多くの方に伝えようという思いから、結成されたと聞いています。これまでに、PKO問題、改憲問題、諫早湾の開拓問題などをとりあげてきました。昨年は、ペシャワール会の医師中村哲さんをモデルに、「真の国際貢献とは?」を問う内容の劇でした。メンバーも、弁護士、会社員、学生、地元の劇団員など、総勢40人を超えております。
ところで、ひまわり一座の憲法劇をご覧になったことがなくても、昨年の給費制維持集会の寸劇、というとお分かりになる方も多いのではないでしょうか。人権擁護と社会正義の実現を目指していたのに、給費制が廃止された未来で借金返済に苦しみ、悪徳弁護士になってしまった!という寸劇で、中山篤志弁護士の見事な悪徳弁護士っぷりに笑いを誘われた記憶はございませんか?ひまわり一座は、こんなところでも活動しています。

2 今年の憲法劇
私は、昨年からひまわり一座の憲法劇に出演させていただいております。今年のテーマは、『米軍基地問題』でした。福岡県の能古島に、米軍基地が移設されることになったという設定で、平和な島を愛しながらも様々に揺れる島民たちが、最終的には、米軍基地はいらない!と一致団結して闘うという内容です。題して、「へ?能古に基地がやってきた」。解説するまでもありませんが、「辺野古(へのこ)」と「能古」をかけています。
私自身は、昨年は、舞台に出て、一言しゃべって退散、というのを2回しただけのチョイ役でしたが、今年は重役を仰せつかりました。夫の故郷である沖縄の宜野湾市で基地反対運動をしていた女性が、出産のために地元の能古島に戻っていたところ、能古島に基地移設案が持ち上がります。揺れる島民に対して、夫とともに、基地のある生活の現実を訴えるという大変重要な役柄です。
ちなみに、夫役は、迫田学弁護士。当初私は妊婦役ではなかったのですが、練習途中に脚本が変わり、出産のために途中から出番がなくなったので、私の台詞まで学先生が引き受けてくださることになりました。そのため、迫田学弁護士の台詞はとても長かったのですが(しかも沖縄出身で基地反対運動を続けてきた人として、皆さんを説得する役なので、台詞がとっても難しい。)、練習では私よりも先に台詞が入っており、頭が下がる思いでした。
それでも、私なりに、夫や夫の家族がこれまで基地に生活を脅かされてきたこと、出産のために戻って来た故郷が基地の危険に曝されていること、これから産まれてくる子どものために、自分はどういう未来を残したいと考えるのか等、自分がその女性だったらと考えながら、演じさせていただきました。役をいただいたことで、沖縄の問題を、これまでよりも少し、身近に感じることができました。

3 憲法講座
劇で米軍基地問題をとりあげるにあたって、沖縄のこと、米軍基地のことについて、年間を通じて簡単な学習会も行ってきました。「チビチリガマから日本国を問う」という沖縄の被害、基地問題を追ったDVDの上映会、そのDVDを作成された監督を招いての講演会等々...。迫田学弁護士の台詞の一部には、その学習会の中で、沖縄出身の天久泰弁護士のご講演に出てきたエピソードが使われております。そうやって、いろいろな話を見て、聞いて、演じる人たちが問題意識を深めるとともに、それを劇中にも取り込みながら、一つの劇が作られていったのです。
上演後に回収したアンケートには、迫田学弁護士の台詞が印象的だったというご意見も多く、実際にその出来事を体験した人、身近な経験としての実感を持っている人からの話は、やはり訴えかける力が全然違うんだろうな、と感じました。

4 大きな出来事
ひまわり一座の憲法劇を当初から支えてくださった、高尾豊さんが、今年の憲法劇が終わった直後に、突然、他界されました。演劇の世界に身をおきながら、平和、人権等にも高い意識を持っておられた方で、練習中にも、「この劇であなたたちが訴えたいことは何か、一人一人がよく考えなさい。それがないと伝わらない。」とよく言われました。
高尾さんの笑顔がもう見られないと思うと、本当に寂しいです。弁護士は、演劇のことには素人ですから、高尾さんという大きな存在を失って、今後どうなるんだろうという大きな不安も、当然あります。それでも、ひまわり一座は、これから上演するテーマや体制について話し合いを始め、もう来年に向かって歩き出しています。きっと、高尾さんも、あのニコニコした笑顔で、私たちを見守ってくださっていることでしょう。
最後の最後まで、ひまわり一座のメンバーと、劇のこと、そして平和について語り合って下さった高尾さん、本当にありがとうございました。心からご冥福をお祈りするとともに、これからも私たちを見守ってください!とお願いをして、筆を置かせていただきます。

5 追記
筆を置いたつもりでしたが、一言忘れていました。憲法が大好きな方、憲法について改めて考えてみたい方、舞台に立って目立ってみたい方、ぜひひまわり一座にご参加ください!裏方でのご参加も大歓迎です。
来年もGWのころに劇を行いますので、ぜひ、観客としてもご来場ください。よろしくお願いいたします!
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災害地の現場から

月報記事

会 員 佐 藤 力(60期)

1 未曾有の大災害
平成23年3月11日、我が国を未曾有の大災害が襲いました。報道によると平成23年6月5日現在の死者は1万5365人、行方不明者は8206人で、約9万8500人の方が避難所生活を強いられています。
私の出身地である茨城県の(現在は潮来市)は、もともと干拓地のため今回の震災で、両親の住む実家の敷地も含め町全体が液状化、地盤沈下の被害を受けました。しかも、かつてゼロワン地域と呼ばれる司法過疎地域でもあったため、地元の先生方と連絡をとり、Jリーグチームになぞらえて「アントラーズ・ホームタウン・協力弁護士ネット」を立ち上げ、弁護士として地元をサポートすることを開始しました。
2 被災地へ
震災から二ヶ月近くが経過し、ライフラインが復旧しはじめたことから、福岡に避難していた両親も帰宅することになり、併せて私も地元に出向くことになりました。事前に避難所を担当している部署に確認したところ「法律相談の案内はしましたが、どなたも相談はない、とのことでした」という回答でした。とはいえ、たとえゼロであっても話をするだけでも意味がある、と思い、5月5日、6日に避難所や自治体に出向くことにしました。避難所は、当初300名から10数名に避難者が減少していましたが、せっかくなので避難者の女性に話しかけてみました。
私が、「こんにちは。私はこの地域出身の弁護士です。今日は九州から来ました。」と、挨拶すると、女性は「弁護士さんに頼むようなことはないけどね。ははは」ということでした。そこで、世間話のつもりで「お住まいはどのような状況ですか」と質問すると、避難者の方は「アパートに住んでんだけどさ。ドアが壊れて入れないから住めないのよ。それでも大家は家賃を下げてくれなくて、毎月払わされてるのよ。」という話をされたのです。私は驚きました。避難者の方は法律的な被害を受けているにもかかわらず、そのことに気づいてさえもいないのです。ただでさえ弁護士のいない地域ですから、これでは相談など来るはずもありません。そこで私の方から、「お仕事は」「お住まいは」「ご家族の状況は」と質問すると、不動産トラブル、雇用問題(便乗解雇、派遣切り)、消費者トラブル、保険など、次から次へと法律問題が山のように出てきたのです。
私は近隣自治体(潮来市、、神栖市、、鹿嶋市)をすぐに訪問し、市民への法教育、情報提供の必要性を訴え、各地の広報誌などに「震災における法律問題Q&A」を連載すること、今後地域フェスタなどで法律に関する講演会をボランティアで行うことで合意することになりました。 3 弁護士が手を差し伸べることの意味
久しぶりの故郷を歩いて見ると、さながらパニック映画のように変わり果てた街の姿に驚いて言葉を失いました。これだけの被害を受けていながら、まだ多くの人々が弁護士のサポートを受けられることに気づいてさえもいないのです。
私は法テラスのスタッフ弁護士として高齢者、障がい者、ホームレス、外国人の方の事件を常時50~60件ほど抱えていますが、この仕事を通して「本当に困っている人は、無料法律相談にさえもたどりつくことができない。」ということを何度も痛感させられました。私たちが手を差し伸べなければ救われない人たちは、まだまだたくさんいるのです。そして、実際に被災地に出向くことで、この思いが一層強くなった気がします。
被災地での経験を生かして、福岡市に対して「私たちが避難者に手を差し伸べてはどうでしょうか」と申し入れたところ、早速避難者を対象に避難者の集いが始まることになり、弁護士もアドバイザー参加が認められました。 被災地の現場で学んだこと、それは弁護士が手を差し伸べることの重要性ではないかと思います。今後も出来る限り地域の人々の支援に取り組んでいきたいと思います。
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修猷館高校での出前授業のご報告

月報記事

法教育委員会委員
会 員 高 山 大 地(58期)

法教育委員会では、小中高校生を対象とした法教育の普及のために、平成23年4月1日に法教育センターを立ち上げる等、法教育の普及に取り組んでおります。その一環として、法教育委員会では、平成23年5月の17日、18日及び20日に、修猷館高校で出前授業を行ってまいりました。

出前授業というのは、実際の授業の現場に弁護士がゲストティーチャーとして参加し、担当教師と協力して、ルール作りや憲法、民事(契約など)、刑事手続(裁判員裁判や少年事件など)等のテーマに沿って、さまざまな教材をもとに法教育の授業を行うものです。今回の修猷館高校では、憲法上の平等権の学習の一環として、男女差別をテーマに授業を行いました。

生徒は、あらかじめ平等権の条文の内容について学校の通常の授業の中で勉強した上で、法教育委員会の方で用意した事例と設問について、まず自分なりにある程度の答えを出して、出前授業の本番に臨みます。今回用意した事例は三つで、まず一つ目は、女子トイレに入ろうとした12歳の男子を係員が制止することの合憲性、二つ目は、女子校において男子の入学を拒否することの合憲性、三つ目は、受付担当職員の募集を女性に限ることの合憲性を問うものでした(詳しい事例につきましては福岡県弁護士会のホームページ中の法教育センターのページをご覧ください)。

当日は、まず生徒にいくつかのグループに分かれてディスカッションをしてもらい、その後各グループの意見をまとめて発表してもらい、最後に弁護士が総括を行う形式で行われました。弁護士的な発想からすれば、事例1は合憲、事例3は違憲で、事例2が微妙なのでこちらを議論しましょうという話になりそうな感じですが、生徒たちは、初めての法教育の授業ということもあって、事例1から活発な議論が交わされ、グループによっては事例1の議論だけでディスカッションの時間が終わってしまったところもありました。

その後各グループの発表に移るのですが、生徒たちの意見は私にとっては非常に新鮮で、意外な発見がたくさんありました。事例1については、12歳ってことは小学生なので、小学生だったら女子トイレを使わせてあげてもいいのではないか、あるいは、おなかが痛くて我慢ができなかったりしたら女子トイレを使うのもやむを得ないのではないか、といった議論が出され、グループによっては違憲の結論を出すところもありました。事例3についても、受付はやはりいかつい男性よりきれいな女性の方がいいから女性限定だったとしてもやむを得ないといった議論や、女性の雇用創出のためといった理由があるかもしれないから、そのような理由であれば許されるはずだ、といった議論が出されました。どれも確かにもっともな面もあり、これを限られた時間内でどう法律的に整理して生徒たちに説明すればいいのか、今後法教育委員会としても、私自身としても、考えていかなければいけないと強く実感しました。

法教育センターでは、2011年5月9日から、学校からの出前授業の申し込みの受け付けを始め、2011年9月1日から順次実施していく予定です。出前授業のゲストティーチャーは、法教育委員会の委員でなくても事前に簡単な研修を受ければ登録することができます。出前授業は、生徒たちの法的素養を磨くだけではなく、ゲストティーチャーにとっても、生徒たちの自由で新鮮な発想は大きな刺激となり、得難い経験となることは間違いありません。ぜひ皆様ゲストティーチャー名簿にご登録をよろしくお願いいたします。
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