福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)

2011年1月号 月報

月報1月号福岡県弁護士会会長日記

月報記事

会 長 市 丸 信 敏(35期)

会員の皆さま、明けましておめでとうございます。輝かしい新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。今月は、次年度の当会役員選挙が実施されます。早いもので、当執行部の任期も残り3ヶ月を切りました。執行部一同、バトンタッチへの備えを致しつつ、最後まで力一杯に頑張る決意です。どうぞ、よろしくお願い致します。

◆会員一丸となって現行63期生6名のみなさん(8月26日付入会)、新63期生54名のみなさん(12月16日付入会)、ようこそ福岡県弁護士会にご入会頂きました。心から歓迎を申し上げます。当会は、みなさんのご入会により、会員数は928名となりました。また、この度、全国の弁護士数は3万人を突破しました。昨今の急速な勢いでの会員の増大は、当会においても、裁判員裁判や当番弁護士・被疑者弁護人、少年保護付添人、精神保健当番弁護士、生活保護当番弁護士、福祉の当番弁護士ほか高齢者・障害者支援活動等々の各種法律援助事業活動の充実や法律扶助受任数の伸張、50有余に及ぶ当会の委員会活動の活性化など、弁護士の社会公共的な存在感をより大きくすることに貢献しています。もちろん、弁護士急増にともなって、新人弁護士の就職難の問題、会員各層の業務基盤の維持・拡充の課題、研修充実・専門性強化の課題、裁判所・検察庁の増員の必要、そして適正な法曹人口の在り方如何等々、重要課題は山積しています。しかし、市民の司法へのアクセス拡充のためにと25年前に法律相談センターの開設に踏み出し、また20年前に刑事司法の改革のため当番弁護士制度を全国に先駆けて開始するなど、「市民の司法」との理念のもと、地道に草の根の司法改革運動に努めてきた当会としては、司法改革の完遂のためには法曹人口の増大の方向性自体はなお維持すべきものと考えます(問題は、その適正なペースの在り方ではないでしょうか)。弁護士・弁護士会としての使命を果たすべく、会員がその一点で心を一つにしながら、それぞれの持ち場、それぞれの役割でベストを尽くすこと、それによってこそ、国民からの信頼を維持してゆくことができると信じます。自由闊達な議論を尽くしつつも、目指すものを共有することによって、内部対立や内部分裂は絶対に避けなくてはなりません。私たちは、弁護士数の増大と二極化による求心力の喪失の結果、弁護士自治が崩壊した英国弁護士協会の衝撃(2007年。ご関心のある方は「自由と正義」2009年10月号をご覧ください)を、対岸の火事として笑って済ませることはできません。わが弁護士自治権も、決して永遠不朽のものでは全くなく、万が一にも国民からの信を失った場合には、たった一本の法改正で剥奪されかねないものなのです。

◆最高裁裁判官を当会から最高裁裁判官のうちの、那須弘平裁判官(第二東京弁護士会出身)と宮川光治裁判官(東京弁護士会出身)が、平成24年2月に相次いで定年退官を迎える予定であることから、日弁連(最高裁判所裁判官推薦諮問委員会)は、各弁護士会に後任候補者の推薦を依頼してきております。昨春の日弁連会長選挙で無派閥ながら多くの地方会の支持を集め激戦を制して劇的勝利を収めた宇都宮会長は、今次の最高裁裁判官推薦について、「東京や大阪の“株”は無くす。是非とも地方会から最高裁判事を出して欲しい」と、本気で檄を飛ばしています。とりわけ、当番弁護士はじめ刑事司法改革の分野で多大な実績を積んできた当会は然るべき人材を推挙するにふさわしい、との声がすでに随所から出はじめておりますが、皆さんのお考えはいかがでしょうか。推薦の期限は今年4月28日です。

◆部会の底力12月には、筑後部会(4日)と北九州部会(10日)の忘年会にも出席させていただきました。楽しいひとときをありがとうございました。筑後部会の忘年会は、永年の吉例通りに、その日にゴルフ大会、テニス大会を開催されたうえでの忘年会でした。嵐の中、ひとつの船に乗り合わせた仲間同志として船を沈没させないために結束をと呼びかける、樋口部会長の格調高い挨拶で始まった会は、40数名もの参加者でにぎわい、昔からいささかも衰えない筑後部会の親密さ、暖かさを体感しました。北九州部会では、忘年会に先立ち、定例の部会集会も開催されましたが、その出席者は、なんと60名超。県弁総会をも凌駕する数です。議題も、会館建設資金の繰り上げ返済、北九州会館の全館禁煙化、豊前相談センターにおけるチケット制導入、本庁昇格期成会運動、小倉拘置所の現地建替え(アンケート実施)など盛りだくさんで、服部部会長の議長のもと、熱心な討議が繰り広げられました。忘年会では、50年、40年の永年勤続表彰を受けられた会員を囲んで、老若を問わず沢山の会員(90名超)で最後まで大にぎわいでした。4年遅れで50年勤続表彰のお祝いを受けられた三代英昭会員は「人の寿命は127歳である」として、本当にご自身もその歳まで長生きされそうなお元気ぶりでした。県弁組織の中に、飯塚部会を含め、各部会として、しっかりとした執行部・評議議決機関・部会集会そして部会独自の委員会が存するという形態は、一種の連邦制であり、全国的にも異色です。これに部会員の結束が相まって、これこそが、当会が地域に根ざした弁護士会活動を県内隈無く果たし得てきている最大の秘訣ではないでしょうか。今後とも、部会の力を更に蓄えて頂き、大いなる力を発揮して頂きたいと願います。私たち県弁執行部も各部会とがっちりとスクラムを組ませて頂いておる積もりですが、それでも、県弁執行部がついつい福岡中心に偏った発想に陥りがちなときなど、遠慮無く指弾して頂きたいものです。

◆給費制に込めた信念すでにご報告致しましたが、司法修習生の給費制問題は、さる11月26日、暫定的に1年間延長するとの議員立法が成立し、ひとまずの決着を見ました(延長戦突入です!)。昨年中の会員の皆さまの絶大なるご理解とご支援に、重ねて厚く御礼申し上げます。11月29日には、新64期生の修習開始式が執り行われましたが、その日の朝一番で、修習生の沢山のみなさんが当会会館に来館して、心を込めた当会あてのお礼状を届けてくれました。書面を見て思わず目頭が熱くなり、また、全国のここかしこで喜びに満ちた光景が繰り広げられているのだろうと思うと、まことに感慨深いものがありました。一部新聞報道では、給費制問題があたかも政党間の取引材料とされた結果として難しい国会情勢のもとでも法案が通ったのだ、との書きぶりでしたが、決してそんなことはありません。半年余に及ぶ必死の運動、各党議員への説明・要請行動等々の積み重ねがあって、そして各政党に万遍なく給費制の重要性について理解・賛同する国会議員が沢山出てきた状況があったからこそ、奇跡的とも思える立法措置が叶ったのです。「混迷の時代であるからこそ、信念を持った者の志が通るのだ。」と、宇都宮日弁連会長の言葉です(12月の日弁連理事会)。給費制の延長期限は本年10月末です。これから設置される政府内での検討会議を主戦場として、法曹養成制度全体の在り方についての検討や、修習生に対する経済的支援の在り方についての検討が急ピッチでなされてゆきます。もちろん、日弁連も当会も、これからも給費制の維持を目標として戦い抜く決意です。どうか、本年も、引き続きご理解とご支援を頂きますようお願い致します。

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