福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

月報記事

2021年7月 1日

あさかぜ基金だより

あさかぜ基金法律事務所 弁護士 佐古井 啓太(72期)

はやくも1年半が過ぎて・・・・・・

あさかぜ基金法律事務所に入所して、はや1年半が過ぎました。入所当時、机を並べていた弁護士も既に3人が司法過疎地へと旅立ちました。うち1人は同期であり、一足早くあさかぜを卒業して、さっそく所長弁護士としてバリバリ活躍している姿を見ると、自分もがんばらないといけないなと身の引き締まる思いです。

さて、今回はその1人である小林洋介弁護士が所長をつとめる飛鸞ひまわり基金法律事務所を訪問したときのことを報告します。

飛鸞ひまわり基金法律事務所

飛鸞(ひらん)ひまわり基金法律事務所は長崎県平戸市にあります。平戸市は人口3万人の市で、平戸島その他の島しょ部と九州本土部(旧田平町)から構成されており、長崎地家裁の平戸支部が置かれています。裁判所や市役所のある市中心部は、平戸城を仰ぎ見る旧城下町であり、平戸島に位置しています。本土ではなく島側に行政の中心がある珍しいまちでもあります。

平戸支部は平戸市と隣接する松浦市を管轄しており、その管内人口は5万人です。弁護士が多数いる佐世保市までは車で1時間ほどかかる司法過疎地であり、新たな法律事務所の設置が望まれていたところ、令和2年7月に、小林弁護士が、新たにひまわり基金法律事務所を開設しました。「飛鸞」というのは平戸の古名であり、日本酒の名前にもなっています。以前、この地に平戸ひまわり基金法律事務所があったことから、同じ名称を避けて、この名前にしたそうです。

小林弁護士は、あさかぜ基金法律事務所で2年半ほど養成を受けたあと、飛鸞ひまわりの初代所長としてスタートしました。活動を始めて1年近くたっており、日々、平戸地区の人々のために活躍されています。小林弁護士は、人当たりがよく親しみのもてる弁護士であり、依頼者から顧問になってほしいとお願いされることもありました。あさかぜ時代の最後の4か月だけですが、私も、小林弁護士と一緒に事件を共同することがあり、その依頼者に対する真摯で丁寧な姿勢は、とても勉強になりました。

飛鸞ひまわりを訪問した経緯

あさかぜ基金法律事務所は、九州・沖縄の司法過疎地に派遣する弁護士を養成する目的で作られた事務所です。所員弁護士は、この先赴任することになる司法過疎地とはどのような場所なのか、実際に先輩弁護士がどのように活動しているのかを実地に学ぶために、年数回、先輩弁護士の事務所を研修として訪問しています。今回も、そのような研修の1つとして、飛鸞ひまわりを訪問しました。

平戸を訪問して

当日は、車で平戸に向かいました。福岡市内からは、西九州自動車道が平戸市の手前の松浦市まで通っているので、非常に便利です。車に揺られること約2時間、本土から平戸島に架かる平戸大橋が見えてきたところで、飛鸞ひまわり事務所に到着しました。事務所は、本土側の旧田平町中心部の国道沿いにあり、周辺地域からのアクセスも良さそうな場所で、裁判所までも車で8分ほどの便利な所にあります。開設したばかりの事務所ということもあって、室内は真新しい備品のそろったきれいな事務所でした。

小林弁護士からは、現在、どのような事件をやっているのか、平戸での弁護士活動について話を聞きました。民事事件では、あさかぜ時代に経験しなかったような幅広い事件を受けており、飛び込みの相談も時々あるそうです。また、管財事件や相続財産管理など裁判所からくる事件もあるとのことでした。刑事事件では、早くも裁判員裁判が回ってきたとのことで、地域に弁護士が少ないと、他に受ける弁護士もいないため、重大事件を避けては通れないようです。裁判員裁判は長崎地裁の本庁で行われるので、被告人も長崎の拘置所に移されて、接見するだけでも大変なので、長崎本庁管内の弁護士と一緒に弁護人をやっているとのことでした。スタートして早々から、多くの事件を抱えている小林弁護士の話を聞いて、司法過疎地でも弁護士が必要とされていることが改めて実感できました。

小林弁護士に話を聞いたあとは、事務所で用意してもらった昼食をいただきました。大皿にいっぱいの刺身の盛り合わせをごちそうになり、平戸の海の幸を堪能しました。

食事が終わってから、平戸のシンボルである平戸大橋を渡り、平戸島内の川内峠展望台に行きました。丘の上に広がる草原の中を一本の道路が走っていて、東西に海を広々と見渡せる、とても気持ちの良い所でした。平戸は風光明媚で名高い土地で、自動車のテレビCMなどが多く撮影されているそうです。他にも訪問したい所はあったのですが、平戸島は南北に32キロと思ったより大きく、時間の関係で断念せざるを得ず、中心市街地と平戸城を少しだけ見て、後ろ髪をひかれる思いで、未練たっぷりのまま福岡へ帰りを急ぎました。

帰り道に道の駅によって、土産を買いました。せっかく平戸に行ったので新鮮な魚を買いたかったのですが、調理ができないのでやむを得ず、長崎の定番のカステラを買って帰りました。

これからもがんばります

あさかぜ所員は、司法過疎地には弁護士が足りていないので、地方に行くととても歓迎されるということを常日頃から聞かされていますが、こうして実際に平戸を訪問すると、そのことを強く実感することができます。

いずれ私も、その地方の人々に頼られるような弁護士になるべく、いっそう研鑽に励んでいくつもりです。

2021年5月 1日

あさかぜ基金だより

井口法律事務所 弁護士 古賀 祥多(69期)

福岡に戻ってきました

私は、2016年12月から弁護士法人あさかぜ基金法律事務所(あさかぜ事務所)に入所し、2年間の養成期間を経て、2019年1月に壱岐ひまわり基金法律事務所に赴任しました。その後、2年の任期を終え、この4月に再び福岡県弁護士会へ登録替えして戻ってきました。

元あさかぜ事務所の所員弁護士として、壱岐でどんなことをしていたのか、報告させていただきます。

多くの人を魅了する「壱岐」

壱岐は、福岡市博多港から郷ノ浦港まで西北に76キロメートル、佐賀県唐津東港から印通寺港まで北に41キロメートルの位置にある離島で、南北約17キロメートル、東西約15キロメートルのやや南北に長い亀状の島で、総面積は139.42平方キロメートル、壱岐本島と23の属島(有人島4、無人島19)からなる全国で20番目(沖縄を除く)に大きな島です。

現在、人口は26000人弱であり、人口減少、少子高齢化も進行しているなか、積極的に島外移住者を受け入れようと様々な施策を行っています。壱岐は、風光明媚な景色があり、肉・魚などの食も豊かであるため、多くの人を魅了し、毎年多くの観光客が壱岐を訪れ、また、移住者も増えているところです。

私も、壱岐に住んでいるとき、毎日外に食べに出歩いて、地元のお魚や、壱岐牛などを食べて回ったり、温泉に入ったりしていました。また、休日には、猿岩や筒城浜海水浴場などにも足を運び、きれいな景色を眺め、リラックスしました。

あさかぜ基金だより
平和な島のイメージですが・・・

私は、壱岐に赴任する前(赴任前の見学等の際)、平和で豊かな壱岐の島の様子を見て、人と人との争いごと、法的紛争とはほど遠い印象をもっていました。

しかし、実際に赴任してみると、様々な相談が事務所に舞い込んできました。ときには非常にシビアな案件もあり、暴力・DV等が絡む事件も少なからずありました。

実際に壱岐で関わった事件は・・・

この2年間を振り返ると、事件としては、夫婦関係(離婚など)が多く、次いで個人の債務整理案件、そして相続の事件が多かったように思います。しかし、これら事件類型に限られるものではなく、交通事故や労働事件、囲繞地通行権や境界等にかかる事件、根抵当権抹消登記請求などの不動産登記関係の事件、発信者情報開示請求・削除請求事件、法人破産などもありました。

また、裁判所選任案件も多く担当し、破産管財人、個人再生委員、特別代理人、不在者相続財産管理人などを経験することができました。また、成年後見人も5、6件ほど担当しました。

刑事事件は少なく、昨年度は1件しか担当せず、2年間で5、6件しか担当しませんでしたが、私の在任中、3名の共犯事件が対馬で発生し、対馬ひまわり・法テラス対馬の弁護士だけでは対応できないとのことで、3人目の国選弁護人として対馬の事件を担当することになり、週末に対馬を南北横断しつづけ、いささか大変でした。

2年という限られた期間でしたが、事務所での相談件数は247件(毎月1回で開催される社協での「心配ごと相談」を含めると、さらに増えます。)担当させていただきました。また、事件数単位で数えると195件の事件を担当することができました。

弁護士の敷居を下げる努力

このように、いろいろな相談等を担当しましたが、なかには、もう少し早めに事務所に来ていただければ、と思うことが少なからずありました。私の先代の中田昌夫弁護士も、相談のタイミングが遅いケースを担当したとき、壱岐の人々にとって、「弁護士」はまだまだ敷居が高い存在として認識されているのではないか、と気にしており、気軽に相談できるような雰囲気を作ることが大事ではないか、と言っていましたが、そのとおりだと思いました。

そこで、私は、壱岐の皆様が気軽に相談できるよう、法律的な専門用語をかみ砕いて解説し、初めて触れる法律のお話をできる限り分かりやすいように説明するよう努めてきました。また、相談者の不安をできる限り解消できるよう、単に法律の知識等を提供するだけでなく、相談者の気持ちに寄り添って話をするよう心掛けました。

また、相談者のなかには、他に頼るべき人がおらず、親しい人に相談しようとしても、密接な人間関係であるため、どこかで誰かの噂になるのではないか、という不安を抱えている方もいましたので、弁護士には守秘義務が課せられていること、相談で伺ったお話はすべて秘密であることをきちんと説明し、相談することそれ自体の不安も解消するよう努力しました。

さらに、相談者・依頼者が、事務所の弁護士の顔と人となりを知ってもらえるよう、ホームページを開設し、自分の顔写真等を掲載し、相談前に弁護士の顔を知ってもらえるよう工夫しました。

こうした一つ一つの努力がどれくらい功を奏したかは分かりませんが、在任中、常に新規相談の予約が絶えることはなく、後任の西原宗佑弁護士(71期)に引き継いでからも、相談の電話が止むことはありませんでした。

壱岐に常駐型法律事務所が必要な理由

2年間の感想ですが、やはり、壱岐には常駐型の法律事務所が必要だと実感しました。

人が社会で生きていくなかで、法律に関する争いごと、お悩みごと、トラブルは避けては通れません。そうしたなか、法律的なトラブルを解決するため、いつでも、だれでも弁護士に相談できる環境が必要です。

現在、壱岐には26000人弱の人々が暮らしていますが、数万人単位の人間がコミュニティを形成して社会で共同生活をしていれば、確実に法的トラブルは発生します。壱岐島内での法的トラブルを適切に解決するには、弁護士の力が必要です。

また、壱岐は、福岡との交流も盛んであり、島外に住む方とのトラブルも少なからず発生します。そうしたなか、島外在住の人が、近隣都市部の弁護士に依頼して内容証明郵便を送付してきたり、訴訟提起をしてきたとき、壱岐在住の方が武器対等で事件に対応するとすれば、気軽に弁護士に相談できる環境がなければなりません。

もし、壱岐島内に事務所がなければ、福岡・佐賀・長崎の弁護士に相談せざるをえないことになりますが、島民にとって継続的に島外に足を運ぶのは、経済的負担が大きく、また、移動にかかる時間的コストもあるため、弁護士へアクセスできる方々は非常に限定されることになります。そうなると、的確な法的アドバイスを受ける機会を得ることができないまま、何も知らないが故になすがままにされるという不正義が発生することになりかねません。

こうした状況を踏まえると、「壱岐ひまわり基金法律事務所」は、まさしく「市民の駆け込み寺」であり、壱岐にとって必要不可欠な公共インフラとしての側面を有しているといえるのではないでしょうか。

西原弁護士・安河内弁護士をよろしくお願いします

私の後任の西原弁護士は、私と同じくあさかぜ事務所出身の弁護士です。

西原弁護士は、私が壱岐に赴任する直前に、私とほぼ入れ違いであさかぜ事務所に入所したので、私の記憶のなかでは、新人弁護士という印象でした。しかし、この2年間、あさかぜ事務所でいろんなことを経験してきたのでしょう、西原弁護士は、弁護士として技術・力量を培うだけでなく、心構えもできあがっているようで、安心して事務所を引き継ぐことができました。西原弁護士は、きっと、自身の持ち味を生かし、壱岐の皆様に対してよりよいリーガル・サービスを提供してくれることだろうと期待しています。

また、私が福岡県弁護士会に登録替えするのと入れ替わりに、あさかぜ事務所の安河内涼介弁護士(72期)が、対馬ひまわり基金法律事務所に赴任していきました。安河内弁護士もまた、若林毅弁護士(68期)より、同地での業務と所長弁護士の志を引き継ぎ、対馬の人々に対し、素晴らしいリーガル・サービスを提供してくれることだろうと期待しています。

ただ、西原弁護士、安河内弁護士がこれから負うべき責務は非常に重く、いろいろな苦労があるかと思います。福岡県弁護士会の弁護士の皆様には、引き続き、両名に対するご支援等をよろしくお願い申し上げます。

あさかぜ事務所の弁護士をよろしくお願いします

あさかぜ事務所には、田中秀憲弁護士、佐古井啓太弁護士、石井智裕弁護士、宇佐美竜介弁護士の4名が所属し、それぞれ、これから弁護士過疎偏在地域へ赴任をすべく、日々、研鑽を積んでいます。どの弁護士も、その志は高く、非常に熱意をもっていますが、彼らの熱意や努力は、弁護士過疎偏在問題、全国津々浦々にあまねく法の支配を貫徹し、広くリーガル・サービスを提供する上で、必要不可欠なものといえます。

皆様には、引き続き、あさかぜ所員弁護士に対し、たゆまぬご支援をお願いしたいと思います。

また、所員弁護士には、その情熱を絶やすことなく、日々、研鑽を積んでいただきたいと思います。私ができることには限りがありますが、皆様の熱意を後押しすべく、できる限りのお手伝いをしたいと思います。

重ねてお礼を申し上げます

最後に、あさかぜ事務所での養成期間において、厳しくも熱心にご指導・ご鞭撻いただきまして、誠にありがとうございます。また、壱岐での2年間も、大変ご支援をいただきまして、まことにありがとうございます。

この壱岐での2年間で得られた様々な経験は、私の「原点」だと思います。壱岐での経験を、いつまでも、大切にしていきたいと思います。

引き続き、ご指導・ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

あさかぜ基金だより

「ジュニアロースクール2021春in福岡」開催!

法教育委員会 委員 稲吉 佑紀(73期)

1 はじめに

去る令和3年3月30日、「ジュニアロースクール2021春in福岡」が開催されました。今年はコロナ禍ということもあり、私にとって初のJLSは、福岡部会初のオンライン開催となりました。

以下、当日までの準備や当日の様子についてご報告させていただきます。

2 当日までの準備

(1) 福岡県弁護士会では、平成20年以降ほぼ毎年JLSを開催しており、例年好評をいただいて参りました。そのため、当然2020年も開催しようと計画を進めていたのですが、開催予定日である3月27日が近づくにつれ新型コロナウイルスも猛威を振るい始めていたため、泣く泣く開催を断念いたしました。

そこで、今年こそはなんとか開催しようということでオンラインでの開催を決定し、また昨年準備してきたことをできるだけ活用しようということで、議論のテーマや教材等はそのまま引き継ぐことことなりました。

(2) 今年1月に執行部で企画が承認されてから開催までの3か月足らずの間に、打合せやリハーサルを計7回行い、川上キャップを筆頭に周到な準備が進められました。

対外広報としては、当会ホームページやTwitterでのお知らせ、各学校宛てにチラシを郵送、福岡市教育委員会の学校連絡箱への配布など、積極的に行い、その結果、40名余りの参加希望が寄せられました。

3 当日の様子

(1) 当日は急遽不参加となってしまった生徒さんもおり、結局39名の生徒さんが参加してくださいました。テーマは「自転車保険の強制加入の是非」という少し難しいものでしたが、保険の説明から丁寧に行い、立法の考え方を多角的に学ぶことを狙いとしました。

(2) 大まかな流れとしては、

第1部

  1. 自転車保険の強制加入について、予め撮影しておいた寸劇のビデオ視聴で説明(演技とは思えない酔客を演じられた甲木先生、クセ強めのおばあさんを演じられた八木先生、年齢不詳で少し怖い児童を演じられた横山先生やその児童に話しかける本江委員長をはじめ、各委員の先生方の熱演は心に迫るものがありました。)。
  2. 自転車保険の強制加入の是非について、グループに分かれて議論する。
  3. 各グループで出た意見を生徒さんに発表してもらい、全体で共有する。

第2部

  1. 第1部の議論を踏まえ、具体的にどのような条例を作ることが望ましいかを、再びグループに分かれて議論する。
  2. 各グループで出た意見を生徒さんに発表してもらい、全体で共有する。
  3. 逆の立場や異なる内容の条例案を示した他のグループに対し、適宜反論、再反論してもらう。
  4. 議論を踏まえ、自分たちの条例案で変更すべき点や維持すべき点について、グループに分かれて議論する。
  5. 自分たちの条例案について、変更した点を理由とともに発表してもらう。

というものでした。

開会前、最後の打合せをしている様子

開会前、最後の打合せをしている様子。

特に川上キャップ、司会の請川先生、Zoom担当田上先生など運営に携わる先生方は、直前まで緊張感あふれる入念な打合せをされていました(私はその後ろでサンドイッチを食べていました。)。

弁護士会館2階大ホールにて、ソーシャルディスタンスを確保しつつ中高生と議論する様子

弁護士会館2階大ホールにて、ソーシャルディスタンスを確保しつつ中高生と議論する様子。

机の向きを変えるなどして、ハウリングや音声の重複にも配慮していました。

各委員に役割が振られ、皆さん真剣に取り組んでいらっしゃいます。

全体会議の様子

全体会議の様子。

多種多様な意見が出て、隣に座っていた日浅先生が時折唸っていました。

私は一時的に音声が聞こえなくなりましたが、皆さんの表情や日浅先生の唸り声に合わせて相槌を打っておりました。

4 おわりに

振り返ると、総じて大成功だったのではないかと思います。

初のオンライン開催ということで、予期しないトラブルが発生しないか不安はありましたが、本江委員長や川上キャップをはじめとするリーダーの先生方が何度も打合せを行い、入念な準備をしてくださり、また、請川先生の機転を利かせた司会や田上先生の滑らかなZoom操作のおかげで、滞りなく予定どおりに進行することができました(特に活躍できずすみません。)。

中には、Zoomの操作に慣れておらず、なかなかZoomに入れない生徒さんもいました(実は私の従弟です、ご迷惑をおかけしました。)が、全体として特に問題なく、実施後にいただいたアンケートでも大変好評をいただき、オンラインで逆に良かった、また参加したい、という意見も多く寄せられました。

また、中高生の意見の中には私が予想していなかった角度からの鋭い意見も見られ、勉強しているのがどちらなのかよくわからなくなりました。

私はまだ登録後3か月余りの新人中の新人ですが、紛争に溢れた日々の業務の中で、中高生のキラキラと輝く瞳に時折目がくらみつつも、とても癒されました。
今回、JLSのオンライン開催は十分実現可能であることが示されましたが、やはり対面の良さもあるかと思いますので、早く対面でも実施できる日が来ることをお祈りいたします。

憲法市民講座「ベーシックインカムについて考える」

北九州部会憲法委員会 委員 梁 智元(73期)

去る3月11日、同志社大学経済学部教授である山森亮先生を講師としてお招きし、「ベーシックインカムについて考える」という題目で、北九州部会憲法委員会主催、憲法市民講座が行われました。

今講座は、新型コロナウイルス感染症が流行する今般の情勢にかんがみて、会場とZOOMの併用で行われ、山森先生もZOOMで登壇されました。

1 ベーシックインカムとは

近年報道等で話題となっているベーシックインカムですが、正確な語法とは異なった語法で使われていることが多いそうです。

山森先生によれば、ベーシックインカムとは、すべての個人が、権利として、無条件で、普遍的に、一定の額のお金を定期的に受け取ることができるという理念・制度と定義されます。

昨年、給付された特別定額給付金は、ベーシックインカムに近い理念・制度ではありましたが、世帯主に給付されるという点及び定期的ではなく1回限りという点において、ベーシックインカムとは異なるものです。

また、いずれも最低限度の所得水準を保障するものとして、最低所得保障と同列に論じられることも多いベーシックインカムですが、最低所得保障が各個人の所得水準に応じて給付を行う制度であるのに対し、ベーシックインカムは所得水準に関係なく、すべての人に一律に給付を行う制度であるという点で異なります。

2 ベーシックインカムの在り方

世間では、ベーシックインカムが、国民皆保険制度の解体や最低賃金制度の後退など、他の社会保障制度を後退させるものとして働くのではないかが懸念されているところです。

この点について、山森先生は、ベーシックインカムについては、それ単体で論じられるべきものでなく、社会保障制度の全体的な制度設計のなかで論じられるべきことについて言及されました。こと日本においては、既存の社会保障制度をベーシックインカムの理念に近づけ、個人の負担を軽減すること、低額の給付から段階的にベーシックインカムを導入することなどによって、徐々にベーシックインカムの理念と制度を導入する必要があると指摘されました。

3 所感

ベーシックインカムについては他の社会保障制度との関係で論じられる必要があるところ、日本における社会保障制度全体の在り方の根本を問うものとして、今後の議論状況を注視すべきであると思います。

「生き心地のよさ」のために私にできることは

自死問題対策委員会 委員 三好 有理(67期)

第1 はじめに

子どもたちが生きていく社会はこういう生き心地のよい社会であってほしい。また、そのために私にもできることがあるかもしれない、そういう希望をもったシンポジウムでした。

去る3月13日、福岡県弁護士会館2階大ホールとオンライン(ZOOM)を併用して開かれた自殺予防シンポジウム「未来を生き抜く力、見つけたい」を紹介します。

第2 シンポジウムの紹介

福岡県弁護士会が主催する自殺予防シンポジウムは毎年行っていますが、今年は、10年にわたり減り続けていた自殺が昨年増加に転じ、コロナ禍の影響が指摘されている中での開催でした。

今回のコロナ禍にとどまらず、過去、不況などの社会的な危機が生じる度に、自殺が増加する傾向があります。社会的危機が生じても自殺が増えない社会づくりをするにはどうしたらよいか、今回のシンポジウムではそのような視点からお話しがされました。

基調講演には、自殺希少地域を調査分析して自殺の危険を軽減する要素を抽出された研究者・教育者の岡檀(おか まゆみ)さんに、その研究で分かったことのお話をしていただきました。

基調講演後は、福岡で自殺予防に携わっておられる、福岡市精神保健福祉センター所長であり精神科医でもある本田洋子(ほんだ ようこ)さんと福岡いのちの電話事務局長の河邊正一(かわべ しょういち)さんをお招きして、自死問題対策委員会委員長の松井仁弁護士がコーディネーターを務めるパネルディスカッションをしました。

それぞれ内容をご紹介します。

1 基調講演

岡さんは、日本で最も自殺率が低い町として徳島県海部町(かいふちょう)(合併により現在は海陽町。以下では「海部町」という。)を調査しました。海部町は、県南端の太平洋に面する、人口約3000人面積26.36㎢の小さな町です。

海部町は隣接した2町と比較しても自殺率が突出して低い町です。

海部町では、以下に紹介するように、自殺が多い地域と比較すると際立っている要素があるのですが、岡さんは、これらの要素は、海部町が木材の集積場として非常に栄えた昔、裸一貫で他地域から集まってきた人たちが町を運営していくために身に着けた知恵ではないかと分析されています。

(1) 自殺の危険を軽減する要素

岡さんが海部町を調査分析して抽出した、海部町に際立っている要素、すなわち自殺の危険を軽減する要素は、以下の5つです。

  1. 多様性の重視
  2. つながっているが、縛られない
  3. 自己肯定感を育む
  4. 人の評価は多角的に、長い目で
  5. 助けを求める、弱音を吐ける

以下では、岡さんが海部町であつめた海部町民語録とともに各要素を紹介します。

  • 多様性の重視―「いろんな人が、いたほうがいい」
    海部町では、赤い羽根募金が集まりにくいそうです。募金をするかどうかを決める際、他の人が募金をしたか、いくら募金をしたのかが重要なのではなく、自分が赤い羽根募金に納得できるかどうか、それが重要な判断要素だというのです。これは同調圧力が働きにくいことを示すエピソードです。周囲の人たちの行動にそろえなくても責められないという環境があれば人は安心して自分の考えに基づいて行動ができます。
    このように海部町では「いろんな人が、いたほうがいい」と多様性が重視されています。
    多様性が重視されていることを示す事例の一つとして、海部町の「朋輩組(ほうばいぐみ)」も紹介されました。「朋輩組」とは江戸時代から続く相互扶助組織ですが、他地域の同様の組織とは異なるユニークな特性があります。例えば、入会退会は当人の自由で、入会しなくてもコミュニティで不利益を被りません。また、旧家も新しく町に来た人も等しく受け入れます。先輩からのいじめやしごきとも無縁です。
  • つながっているが、縛られない
    小さな田舎町では人間関係が緊密だと思われるかもしれませんが、アンケート調査の結果、海部町では、隣接する町と比較して「日常的に生活面で協力」する割合は低く、「立ち話程度」や「あいさつ程度」のほどよい距離感が多かったです。
    「絆」が大事であることはよく言われますが、その内容・質がどのようなものかを考える必要があることを岡さんは指摘します。徳島に加えて青森、京都、奈良の4県で調査した結果、緊密なつながりのコミュニティである方が悩みをさらけ出すことに抵抗があることが分かったそうです。
  • 自己肯定感を育む―「おまいにも、出来ることがある」
    海部町では隣接する町と比較して自己信頼感、自己効力感(周囲の事柄に対し、何らかの対処ができると思える感覚)を持つ人が多いという特徴もあります。
    それを示す事例の一部として、議会では古参も新人も同等で、新人が遠慮して発言しないことのないように大御所が発言を促すというエピソードが紹介されました。他地域で、この事例は話すと驚かれるようで、むしろ議会で新人は大御所に遠慮して発言をしないことが通常という地域もあるようです。
  • 人の評価は多角的に、長い目で―「一度目はこらえたれ」
    海部町では、人の評価が多角的、長期的、総合的です。
    人を学歴や職業で判断するのではなく、その人物の人柄や魅力や問題解決能力などをみて評価するそうです。
    隣接する町では一度の不祥事が「孫子の代まで」という考えがあるようですが、海部町では「一度目はこらえたれ(見逃してやれ)」と挽回のチャンスが与えられます。
  • 助けを求める、弱音を吐ける―「病は市に出せ」
    海部町の民語録に「病(やまい)は市(いち)に出せ」というものがあります。
    これは、病気のみならず、生活をする上での困りごとなどの悩みを抱え込まず、早めに助けを求めることを促す海部町のことわざです。 海部町は隣接する町の中で最もうつ受診率が高く、しかも軽症の段階で治療を開始する傾向にあります。町民のうつに対するタブーがあまりないということもプラスに働いています。

(2) オランダスキポール国際空港の奇跡

突然ですが、オランダのアムステルダム・スキポール空港の男子トイレでは年間7億円かかっていた清掃費を2割削減することに成功しました。小便器の内側にたった一匹のハエの絵を描くことによってです。「トイレを汚さないようご協力ください」と張り紙をするのではなく、「人は的があると、そこに狙いを定める」という心理を応用して汚れを防いだのです。

また、南アフリカのある貧民街では衛生環境が悪く、特に子どもの死亡率が高いのですが、子どもの命を奪う感染症の多くは、頻繁に手を洗うことによりかなりの割合で防げるそうです。そこで、WHOでは、特別な石鹸を配りました。この石鹸の中にはミニカーなどのおもちゃが埋め込まれています。子どもたちはそのおもちゃを手に入れるため一生懸命に石鹸で手を洗います。この取り組みによって現に感染症が減少したそうです。

このように、単に標語を唱えたり、強制したりするのではなく、人間の心理や行動パターンを分析して、行動を促す工夫をすることが各分野で注目されています。

岡さんは、自殺予防対策においても、人間行動科学を取り入れて策を講じることを提唱されました。

つまり、「悩みがあったら相談してください」と呼びかけるだけでは不十分で(悩みが深刻であるほど相談に向かう気力も低下していることが多い)、助けを求めやすい環境を整えることこそが重要です。

ここで紹介されたのが海部町の例です。海部町では、江戸時代発祥の「みせ造り」という建築様式がとられており、家の玄関先に4,5人が横並びに座ることができるようなベンチがあります。ここで、海部町の人達は集って話をします。困りごとが小出しにできる環境が作られているのです。

(3) 子どもの追跡調査から分かったこと

多様性を重視する価値観や自己効力感を高めることなどは大人になってから身に着けることは容易ではありません。子どもが成長過程で自殺予防因子を身に着けていくプロセスを理解する必要があるという考えから、岡さんは、小学5年生から成人するまでの8年間の追跡調査する「子どもコホートスタディ 未来を生き抜く力、見つけたい」を2017年から始めました。

これまでの分析結果のひとつが紹介されました。それは子どもの思考パターンや心の健康に周囲の大人の男女役割間が影響しているというものです。「女のくせに」とか「男なんだから」といった固定的な男女役割間をもつ大人が周囲に多いと、子どもに様々な影響が生じているとのことです。柔軟な思考が損なわれやすい、心の健康バランスを崩しやすいなどの影響が生じるようです。

ジェンダーについて学ぶシンポではなく、生き心地のよいまちづくりを考えるシンポでこのような指摘がなされたのが示唆的でした。

子どもたちが生き生きと未来を生き抜く力を身に着けるためには、私たち周囲にいる大人が自分の中にあるかもしれない「こうあるべき」という固定的な考え方を見直す必要があるのだと思いました。

(4) 「生き心地の良さ」の追求

最後に、いったん自殺問題から離れてみることが提案されました。海部町の自殺率の低さは、いわゆる「自殺予防対策」として対策を講じた結果ではありませんでした。

「生き心地の良さ」を追求すれば自殺予防はおのずとついてくるのではないかと締めくくられました。

2 パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、福岡市精神保健福祉センター所長の本田さんと福岡いのちの電話事務局長の河邊さんも加わり、基調講演で示された自殺の危険を軽減する要素についてそれぞれの立場からお話がありました。

一部割愛していくつかご紹介します。

(1) 多様性の重視のためにできること、行っていること

  • 子どもたちが小さいときから、意識的に少数の人の意見も伝える(岡さん)
  • 児童や若年層への教育で、いろんな人がいてよいということを伝える(本田さん)
  • 自死遺族の集まりで、互いに価値観を強要しないという約束事のもとで人の話を聞くこと(本田さん)
  • いのちの電話では、電話をかけてきた人の思想・信条を一旦全部受容する。他者理解の前にまず自己理解。(河邊さん)

(2) つながっているが、縛られないという距離感をもった援助のために

  • 助けを求めやすい環境を作るために、何かのついで(例、買い物のついで、登下校のついで)に立ち寄って話をすることができる場所を設けたまちづくりをする(岡さん)
  • 価値観をおしつけない(岡さん)
  • 福岡市ではゲートキーパー(命の門番)の養成と支援を行っている。例えば、理美容業を対象にゲートキーパーの養成を行っており、カットに来た客が悩みをぼやいたときには、専門家や相談機関を紹介してもらう。(本田さん)
  • 電話相談を受ける際、依存や過度な期待を生じさせないために適当な距離をもつことを意識(河邊さん)

(3) 自己効力感を高めるためには

  • 自己効力感を失うに至った経験を話してもらってそれを受容する(河邊さん)
  • 自己効力感の低さは依存にもつながる。依存症のグループワークで「ほめ言葉のシャワー」や「承認のシャワー」で良いところを指摘し合う場を設けている。(本田さん)

(4) 「病は市に出せ」を実践するには

  • 解決策を提示するよりは、相談者自身の心のエネルギーを回復してもらう。そのためには、まず話を聴く。その上で、観点を変えてもらう。(河邊さん)
  • 精神科には行きたくないと躊躇する相談者に対して
    →医師との相性もある。本人の希望に沿うような(自宅に近い場所がよいなど)クリニックをいくつか提示する。
    →不眠は誰にとってもつらいもの。眠れないということに焦点を絞り、「ドラッグストアで買うより、あなたにあった睡眠剤を処方してもらった方が効くし、費用もかからない。」と伝える(本田さん)
第3 おわりに

ジェンダーの問題でも違いを認め合う文化が必要といわれています。「いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい」という多様性を重視する考えは、ジェンダーの問題でも理不尽な校則の問題など様々な問題を解決していく際の重要な鍵だと思います。

なによりも、「人は人、自分は自分」と多様性が重視され、周囲の人たちの行動に合わせなくても非難されない関係性は、呼吸がしやすいと感じます。

シンポジウムに参加して、多様性の重視をはじめ岡さんが指摘した要素を備えた生き心地のよい社会を作っていくために、自分にできることもあると感じました。

シンポジウムの終わりに岡田武志副会長がまずは身近なところから、例えば弁護士会の中で、今回得られた視点を生かしていきたいとお話しされました。
私も、事務所の中で、家族に対して、仕事で出会う方々に対して、委員会の中で、弁護士会の中で。人の価値観を否定せず受け入れること、人を一度の出来事で評価することなく多角的に長期的にみること、私が関わることができる子どもにも多角的な視点を示すよう心掛けることなど、今できることは微々たることかもしれませんが、生き心地の良い社会のためにできることをしていきたいと考えました。

2021年3月 1日

あさかぜ基金だより

会員 宇佐美 竜介(73期)

ごあいさつ

このたび、あさかぜ基金法律事務所に入所しました、所員弁護士の宇佐美竜介と申します。

私は東京出身ですが、大学卒業後に裁判所に採用され、30年以上九州の裁判所において裁判所書記官として勤務しました。司法修習は、裁判所時代の初任地である佐賀県で行い、弁護士として、福岡県に戻ってまいりました。

私の趣味

ランチの食べ歩きで、退職直前の六本松で112軒、退職から修習開始まで総合図書館通いをしていた西新で115軒、実務修習地の佐賀で57軒(コロナの影響で予定の半分以下ですが・・・)ほど巡りました。2月15日現在で天神34軒(ラーメン屋のみ)足らずですが、記録をしっかり伸ばしたいと思います。

あさかぜ基金法律事務所に入所した理由

裁判所時代に、某支部において、地元の人の司法アクセスが良くない、事件屋が暗躍している等の話を聞き、使命感に駆られる思いをしたのがきっかけです。また、公務員という立場は中立公平という制約があり、本当に気の毒な人に手を差し伸べられないことに忸怩たる思いを抱いていたこともあり、自分の人生は安泰のままで終わっていいのだろうか、還暦間際ですが、人生最大の冒険を敢行するならば、司法アクセスが悪くて本当に困っている人の中に入っていこうと考えたからです。

あさかぜ基金法律事務所の紹介について

あさかぜ基金法律事務所は、司法過疎地域に赴任する弁護士を養成するため、弁護士会が支えている都市型公設事務所です。所員弁護士は、1年半から2年程度の養成期間を経て、九州の司法過疎地域に赴任することになります。

抱負

私は、令和2年12月17日(昨年の福岡弁護士会の一斉登録日)から、あさかぜ基金法律事務所での仕事を開始しました。裁判所の実務経験が多いからと思われるかも知れませんが、今まで生きてきたのとは全く別の世界であって、自分は何と世間を知らないのだろうということを痛感させられております。

これからは、先輩弁護士から多くのことを学び、生涯勉強という言葉を大切に、精進していきたいと考えています。残りの人生、一期一会(食べ歩きもその一環)を大事にしたいと思います。

2021年2月 1日

ジュニア・ロースクール2020in筑後

法教育委員会 委員 渡部 裕太郎(71期)

1 はじめに

令和2年11月29日、福岡県弁護士会筑後部会会館において、「ジュニア・ロースクール2020in筑後」がZoom開催され、筑後地域の中高生13名にご参加いただきました。筑後部会法教育委員会では、例年、筑後地域の中高生を対象としてジュニアロースクールを開催しておりますが、コロナ感染対策のため、今回は初のZoom開催となりました。

そこで、本稿では、当日の様子等を、Zoom特有の技術的な観点を交えながらご報告させていただきます。

2 会場選択

会場選択について、当初は、臨場感を持たせるため、久留米大学の模擬法廷において弁護士が模擬裁判を実演し、その様子をZoomで中継することを検討していました。しかし、久留米大学では、Wi-Fiが使用できなかったため、Wi-Fiが使用できる弁護士会館が選択されました。

3 当日の流れ
(1) 題材

今回は、殺意の有無が争点となる刑事事件が題材であり、事案は、被告人が、自分の交際相手を略奪した被害者の腹部を果物ナイフで刺してしまったという殺人未遂事件でした。なお、登場人物は、某国民的漫画がモチーフとなっています。

被告人の言い分は、話し合いをするために交際相手の自宅を訪問したところ、被害者が出てきた。被害者は、「お前のものは俺のもの」「お前のくせに生意気だ」等と威圧をしてきた。そこで、被害者を怖がらせるため、台所に置いてあった果物ナイフを手に振り下ろしたところ、被害者の右腕を傷付けてしまった。それに怒った被害者が憤慨して近付いてきたため、被害者を遠ざける目的でナイフを前に差し出したところ、腹部にナイフが刺さってしまった。ナイフの近くには万能包丁も置いてあったが、包丁はさすがに危ないと思ったのでナイフを選んだ等というものでした。

(2) 模擬裁判

弁護人、被告人、検察官、被害者、目撃者、裁判官の役に扮した弁護士が、人定質問から被告人質問までの流れを実演しました。また、技術的な面では以下のような工夫を行いました。

① 「法廷の様子カメラ」の活用
実演にあたっては、弁護人席、検察官席、裁判官席及び証言台の上にZoomにログインしたパソコンをそれぞれ設置し、各担当者がカメラの前でセリフを話しました。また、証言台パソコンの前では、犯行状況の再現等も行いました。
もっとも、それだけでは、基本的に各弁護士の顔しか見えず、臨場感に欠けるため、Zoomにログインしたスマートフォンを「法廷の様子カメラ」として使用し、生徒が全体の様子も見ることができるような工夫しました。
また、集音の方法ですが、各パソコンのマイクをオンにしてしまうとハウリングが生じるため、「法廷の様子カメラ」用のスマートフォンでの集音に一元化しました。

模擬裁判の様子"

模擬裁判の様子

Zoomの画面(証人尋問の様子)

Zoomの画面(証人尋問の様子)

② 「チャット機能」の活用
模擬裁判を見ながら生徒が疑問に感じたことをその都度質問できるよう、チャット担当の弁護士を配置しました。また、参加生徒には、資料を事前に送付していましたが、紛失や不足の可能性もあるため、チャット上に資料のデータをアップするようにもしました。

(3) グループディスカッション

模擬裁判を見た後、生徒は4つの班に分かれ、裁判官の立場で殺意の有無と量刑を検討するための議論を行いました。

議論にあたっては、Zoomの「ブレイクアウトルーム」機能を活用し、班のメンバーだけで議論ができるようにしました。そして、各班には、担当弁護士が1名参加し、議論の進行を行いました。

議論の様子についてですが、どの班でも活発な議論が行われました。当初、対面でなければ発言に消極的になるのではないかとの懸念がありましたが、それば杞憂でした。

私が担当した班の生徒達は、「ナイフを使ったからといって安易に殺意を肯定してよいのか」という疑問から出発し、攻撃の回数、被害者の行動、被疑者と被害者の関係性、凶器の選択等の観点から事案を深く分析することができていました。その結果、被害者の行動が原因で偶発的にナイフが刺さった可能性がある。被告人は昔から被害者にいじめられていて、強く反抗できない立場にあり、殺意までは抱かないのでないか。殺意があれば、ナイフでなく包丁を選択するのではないか、何度も攻撃を加えるのではないか等の理由で「殺意なし」と判断し、傷害罪で懲役2年という結論になりました。

また、議論は、予定されていた45分をほとんど全て使い切りました。

<6>(4) 各グループの「判決」の発表

4班あったうち、殺意ありが2班、殺意なし2班で結論が2分されました。
また、班によっては、執行猶予を付けるか否かについても深く議論したところもありました。

4 さいごに

Zoom開催は初の試みでしたが、特段のトラブルなく、無事に成功で収めることができました。参加生徒達からのアンケートも好評で、特に、被害者役の先生の演技力は大好評でした(松﨑先生、本当にありがとうございました)。

また、ジュニアロースクールに限らず、今後、Zoomは他の弁護士会の活動にも活用できるのではないかと感じました。
最後に、Zoom開催にあたって、ご尽力していただいた先生の皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。

紛争解決センターだより 新型コロナ・事業者賃貸借ADRのご案内

紛争解決センター運営委員会 委員 松村 達紀(65期)

1 コロナ対応(災害)ADRを立ち上げております

残念ながら昨年の年末より新型コロナウイルス感染者の増加に歯止めがかからず、令和3年1月8日より、東京・埼玉・千葉・神奈川(本原稿執筆時点)を対象として緊急事態宣言が出されております。福岡への影響がどのようなものとなるのか分からないところがありますが、飲食・観光事業者を中心に、甚大な影響が生じることは否定できません。

当センターは、令和2年6月8日、新型コロナウイルス感染拡大に関連する法的紛争解決のために「コロナ対応(災害)ADR」を立ち上げておりますが、今一度、皆さまに積極的な利用をお願いしたく、月報にてアナウンスをさせていただきます。

2 事業者の賃貸借問題に積極的に取り組みます

コロナ対応(災害)ADRは、新型コロナウイルス感染拡大に関連する民事紛争であれば、何でも申し立ていただいて構いません。

そのような中で、日弁連としては、特に、中小企業・小規模事業者において、「賃貸借契約」に関する法的問題が深刻化していることを踏まえ、実態・統計的な傾向の把握のために、令和2年12月1日より、「賃貸借問題相談キャンペーン」1を実施しております。

具体的には、事業者に対してこれらの問題の相談窓口として、「ひまわりほっとダイヤル」を周知・案内するとともに、コロナ対応(災害)ADRの積極的な活用を図るという内容になっております。

今回の緊急事態宣言では、特に飲食店に時短営業等を求める内容が中心となっており、賃貸借問題が深刻化することは避けられません。一般の事業者の方が、直接(弁護士のサポートなしに)、コロナ対応(災害)ADRに申立てを行うことには相当程度のハードルがあると思われますので、ひまわりほっとダイヤルの相談担当の先生を含め、当会会員の先生方におかれましては、コロナ対応(災害)ADRの積極的な案内・活用をお願いいたします。

3 コロナ対応(災害)ADRの内容

最後に、コロナ対応(災害)ADRの内容を再度、ご説明させていただきます。

(1) 対象事件

上記のとおり、新型コロナウイルス感染拡大に関連する民事紛争であれば、何でも申し立ていただいて構いません。特に、休業期間中の賃料の取扱いや賃料減額交渉等を含めた賃貸借問題に関しては、積極的な活用をご検討いただければと思います。

(2) 申立て方法

一般のADRでは、法律相談を受けた民事事件について、申立書や証拠の書類等を添えて申立てをしてもらっていますが、コロナ対応(災害)ADRでは、法律相談を受けていない事件も受け付けます。

また、申立てが簡単にできるよう、広報チラシの裏面にある申込書に必要事項を記入していただいて、天神弁護士センターに郵送又はファックスしていただくか、申込書の郵送やファックスができない方は、電話やメールによって申込みをしていただければ、後日担当弁護士が申立てをサポートするという制度もあります。

(3) 費用

申立て費用は、無料です。 紛争が解決した場合には、原則として、チラシ記載の基準に従い、成立手数料を当事者で折半にて負担いただきますが、事案によっては、成立手数料を減免することもあります。

1 日弁連のキャンペーンは、令和3年2月末までの予定。当会のコロナ対応(災害)ADRは、その後も継続予定。

紛争解決センターだより 新型コロナ・事業者賃貸借ADRのご案内

2021年1月 1日

あさかぜ基金だより

あさかぜ基金法律事務所 石井 智裕(72期)

福岡に来て1年たちました

あけましておめでとうございます。

私が福岡に転居し、あさかぜ基金法律事務所に入所してから1年がたちました。

新型コロナウイルスの影響で研修が行われる時期や方法が変わり、破産手続の進行が遅かったり、依頼者との打合せも電話やメールで行ったりと大変な1年でした。すでに修習や就職活動が終わっていてよかったと思っています(いま修習中の人、就活中の人ごめんなさい)。

福岡に来てよかったと思ったことは、大きい書店・図書館が近くにあることです。私の出身地では書店に行くには隣町まで行く必要があり、その本屋も小さく法律書は取り寄せなければなりませんでした。福岡に来て、歩いていける距離に大型書店があることに幸せを感じております。また、大きな図書館も近くにあり、個人で購入することが難しい全集なども読むことができ、頻繁に通っています。

福岡に転居して苦労したことは、言葉が違うことです。日本語では文末がとても大切なのに、福岡の言葉は語尾が地元である千葉の言葉と異なっていて、依頼者や共同受任の先輩弁護士の言葉がよくわからなかったことです。また、同じ言葉でも意味合いが少し違うと感じることがありました。

所員の入れ替わり

私があさかぜ基金法律事務所に入所したときは弁護士は6名いました。けれども、今は4名となりました。

昨年6月には小林弁護士が飛鸞ひまわり基金法律事務所(平戸)に赴任しました。小林弁護士は依頼者への対応が丁寧で、たくさんの依頼者から信頼を集めていました。私も早くそうなれるように心がけています。

昨年12月には西原弁護士が壱岐ひまわり基金法律事務所に赴任しました。私は入所して以来、西原先生の隣の席に座って執務をしていましたので、疑問点があると西原弁護士とよく相談して事件を進めていました。この原稿を書いているときは、まだ西原弁護士が退所してから間がないので、なかなか西原弁護士がいないという実感がわいてきません。

そのうえ、あさかぜ基金法律事務所に長く勤めていた事務員さんが辞め、事務員さんが入れ替わりました。事務所の機材が不調になっても、どこに問い合わせてよいのかわからなくなったりと、事務員さんの存在の重要性をあらためて感じました。

今月からは新しい弁護士があさかぜ基金法律事務所に加わる予定で、いま原稿を書いているときは、新しく入ってくる所員が使うロッカーを空けるため、過去の弁護士の事件記録をロッカーから出し、別の場所に移動させたり、法人登記の仕方の説明書をつくったりしています。次回のあさかぜ基金だよりは新しく加入する弁護士の自己紹介の予定となっています。ご期待ください。

今年の抱負

気がつくとすでにあさかぜ基金法律事務所で養成を受けられる期間が半分も過ぎてしまっています。

いまだに事件の処理に悩み、先輩に相談しつつ事件を進めているので、あと1年たったとき、本当に弁護士過疎地にて一人で事務所の運営ができるか不安ではあります。

けれども、日々の積み重ねでしか成長はできないのですから、日々の業務から少しでも多く学べるよう努めていくつもりです。

本年も引き続きのご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告

法律相談センター運営委員会 委員長 池田 耕一郎(50期)
北九州部会法律相談センター運営委員会 委員長 田篭 亮博(60期)
筑後部会法律相談センター運営委員会 委員 田中 文(65期)

第1 はじめに

令和2年11月に、福岡、北九州、筑後の3会場で福岡県法律相談合同研修会が開催されました。同研修会は、自治体等の相談窓口担当者の法律知識や相談の技術・知識の習得を目指しています。

研修会を主催する「福岡県法律相談連絡協議会」は、1997年(平成9年)、福岡県弁護士会、福岡県、福岡市、各自治体、社会福祉協議会が呼びかけ人となり、設立されました。設立趣旨には、「各相談機関が連携を取りながら、より早く、より適切に助言し、問題の解決まで住民を導くことができるトータルなシステムづくりを行い、相談機関同志の相互協力によって一層充実した相談サービスを提供すること」とあります。その目的を達成するための重要な活動として、毎年、県内4地区において、研修会を開催しているものです。

以下、福岡、北九州、筑後の各研修会について報告します(筑豊地区については地元自治体の意見もふまえ本年度は開催を見送りました。)。

第2 福岡会場(池田)
1 概要

11月19日に福岡県弁護士会館(2階大ホール)にて福岡県法律相談合同研修会(福岡地区)が開催されました(司会進行:弓幸子業務事務局長)。

福岡地区では、日常の弁護士業務でDV被害相談に精通しておられる石本恵会員(福岡部会)に「DV被害者の法律相談を受ける際の工夫・留意点」と題して講演をお願いしました。当日は、DV被害の相談を受けることの多い相談窓口の担当職員をはじめ約40名にご出席いただきました。

2 講演の内容

講演の内容は、基本的な概念の整理から始まり、相談を受ける際の留意点、手続に関する説明に及ぶ実践的なものでした。石本会員の人柄を表すようなわかりやすく語りかけるようなお話ぶりに、参加された皆さんも、1時間半の講演の最後まで集中して聴講されていました。

まず、DVの代表的な類型(身体的暴力、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力、社会的暴力)と内容(具体例)の説明があり、その後、実際に相談を受ける際の留意点の教示がなされました。DV相談の場合、事案によって緊急性が異なり、緊急性の度合いによって対応が異なることを理解してもらいたいとの指摘がありました(緊急性が高い事案の場合は安全の確保が優先、緊急性が中程度の事案の場合は安全性の確保とともに今後の生活再建の準備、緊急性が低い事案の場合は今後の生活再建準備を中心に助言する。)。

ヒアリングすべき事項としては、(1)暴力の類型と内容、時期、頻度、原因、(2)家族構成、婚姻生活のライフイベント、(3)職歴、収入、生活費の支払状況、(4)財産、(5)相談者の意思(別居するか否か、離婚するか否か、その時期等)があげられました。留意点として、DV被害者は、被害を受けていることを第三者に申告しない(隠す)ことや、そもそも被害を受けているという自覚を持っていないことがあるので、事実と異なる説明がなされないよう配慮したり、暴力の類型と例を示して確認したりすることが有益であるとの指摘がありました。ある事実が発生した時期が思い出せない場合には婚姻生活のライフイベントと関連づけて質問することも有益であるとのお話があり、この点は通常の離婚事件の場合にも参考になる点でした。

その他、DV被害者のための法制度の概要(一時保護、警察との連携、保護命令申立て)、離婚に関する流れ(離婚協議、調停、訴訟)の説明とポイントが示されました。

会場からは、証拠の収集にあたって考慮すべき点について質問がなされ、石本会員からは、ご自身の経験に即した実効的な証拠収集方法について回答がなされました(たとえば、SNS関連の証拠については、相談を受ける側がデータとして受信して証拠化するのではなく、スマートフォンの画面を撮影して証拠化することが、より正確な記録となり得るなど)。

法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告 法律相談センターだより 福岡県法律相談合同研修会報告
3 法律相談事業の現状に関する報告

石本会員の講演の後、法律相談センター運営委員会副委員長(福岡部会小委員会委員長)の井手上治隆会員より、主として福岡地区における法律相談事業の現状(特に新型コロナウイルス感染症拡大に対する緊急事態宣言発出以降の対応、豪雨災害への対応等)について報告があり、派遣相談先を中心とした行政機関等と弁護士会との連携の必要性について共通認識の重要性をあらためて申し上げました。

第3 北九州会場(田篭)
1 はじめに

11月12日、北九州のウェル戸畑にて法律相談合同研修会が開催され、平尾真吾会員(北九州部会)に「身寄りのない高齢者に対する支援」をテーマに、柴田裕之会員(北九州部会)に「福岡における触法対応の始まりとその後の運用について」をテーマに講演をして頂きました。今年は各役所から23名の方に参加いただきました。

2 「身寄りのない高齢者に対する支援」

平尾会員は成年後見について部会きってのエキスパートになりますが、手持ち成年後見事件が40件を超えていると聞き驚きました。平尾会員からは身寄りのない高齢者の問題として、(1)緊急連絡先の確保、(2)入院費・施設利用料の支払い(特に保証人の問題)、(3)医療同意の問題(特に意識不明の医療的な同意)、(4)死亡時の遺品引き取りや葬儀の問題について話をしていただきました。私は知りませんでしたが、この分野については「身寄りのない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」山梨大学・山縣教授の研究が参考になると紹介をされました。身寄りのない高齢者の場合、どうしたらよいか実務上困るケースが多いと思います。困った場合はまず、この山縣研究を見てみるとヒントがあるかもしれません。もっとも、まだ答えが定まっていない分野でもあるので平尾会員も手探りで対応しないといけないケースもあるということでした。また、平尾会員が経験された具体的な事例に基づいたケース紹介もされましたが、大変勉強になりました。

3 「福岡における触法対応の始まりとその後の運用について」

柴田会員は北九州部会の高齢者・障がい者の分野で中心的な役割を担ってくれています。柴田会員からは、刑事事件において知的障害がある方の累犯率・再犯率は高い、これまでの弁護活動では弁護士も知的障害があることに気づかずに福祉的支援につなげることができていないケースが多いとの話がありました。知的障がいがある方は、捜査官の言うことに迎合してしまったり、自分の言いたいことがうまく伝えられない、刑務所でも罪を償っているという認識がないなどの特性があるとのことでした。知的障がいがある方が再犯を繰り返さないよう私たち弁護人が気づくこと、そして、福祉職と協力して環境を整えることが大切だと学びました。また、実際のケースをもとに事例紹介もあり、研修を受けている方も興味をもって聞いていました。

4 アンケート結果も好評で有意義な研修になったのではないかと思っています。来年も新たなテーマで開催したいと思います。

第4 筑後会場(田中)

11月27日、筑後部会で開催しました法律相談合同研修会についてご報告します。コロナ対策のため、久留米シティプラザ大会議室という従来よりも広い会場を確保の上、受付で手指消毒・体温測定を行い、会議室の扉や窓は開放したままでの実施となりました。

第1部は白水由布子会員(筑後部会)に「DVにまつわる法的問題」というテーマでご講演いただき、第2部として参加者の方々と弁護士の意見交換の場を設けました。

まず第1部ですが、DVの定義にはじまり、DVの構造、つまり、力で相手の嫌がることをして相手がこれを避けるだろうことを見越して加害者にとって都合の良いことをさせるコントロールであることを押さえた上で、相談を受ける際の心構えについて説明がされました。DV事件は被害者の安全第一であることや、住所の秘匿に留意すること、被害者にとって相談しやすい雰囲気を作ること等に加え、「助けてあげるという気持ちにならない(助けてあげているというのは上下関係であって、対等な関係ではない)」「解決は本人の意思で(当事者ではないのだから代わって決めてあげることはできない)」という点には、参加者の多くがうなずいておられました。また、被害者の行動のタイミングを制限せず、なにごとも自分で決めていいんですよ、という場面を繰り返すことが重要である、という点については、被害者を再びエンパワーメントしていくことへつながると感じました。

続いて第2部の意見交換会ですが、最初こそ参加者の方々は遠慮されている様子でしたが、徐々に場が温まり、「(1)客観的にはDVを受けていると思われるが、相談する気のない人に対し何ができるか」「(2)成人男性がその父親から暴力を受けている場合どうしたらよいか」といった質問が次々と飛び出しました。まず(1)については、その気になったときに相談できる制度等についての情報はきちんと示し、機が熟すのを待つしかないのではないか、といった回答のほか、無理やり引き離した場合には元に戻ってしまうこともある、といった経験談も聞かれました。(2)については悩ましい質問でしたが、被害者が何を望んでいるのか、家を出られないのであればその理由はどこにあるのかを探りつつ必要な支援を具体化していくのが良いのではないか、という回答がされました。

そのほかにも多数の質問が出され(紙面の都合上、ほんの一部しかお伝え出来ないのが残念です)、盛況のうちに終了となりました。

第5 最後に

弁護士会にとって、各地域の自治体等の皆様と交流することは、市民への法的サービスの拡充に必須の協同作業と考えます。今後も、ニーズに応える充実した研修会を企画・実行するとともに、日常的な情報交換についても意識的に取り組んでいきたいと思います。

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