福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)

2022年5月号 月報

「ジュニアロースクール2022春in福岡」開催!

月報記事

法教育委員会 委員 吉住 守雅(73期)

1 はじめに

令和4年3月30日(水)、「ジュニアロースクール2022春in福岡」が開催されました。昨年に引き続き、今年のJLSもオンラインでの開催となり、弁護士は会館からZoomで参加し、生徒の皆さんにはご自宅などからZoomでご参加いただきました。

2 今回のテーマ
  1. 2022年4月から、新高等学校学習指導要領等が実施され、高校での新たな必履修科目として「公共」の授業が始まります。そこでは、資料から情報を正確に読み取って現代の課題を捉え考察し、課題解決に向けた自分の考えを整理して議論する力を身に付けること等が目標とされています。
    そこで、今回のJLSでは、新学期開始より一足先にこれらの力を磨くべく、「労働問題(正規雇用・非正規雇用)を考える」をテーマに、問題解決に向けた議論とその思考を体験してもらうこととしました。
  2. 具体的な内容としては、正規雇用・非正規雇用に関する統計データやそれを基にしたグラフの資料を生徒さんに配布した上で、その資料からどのような問題を読み取れるか、また、その原因や解決策は何が考えられるかを議論してもらうといったものになります。
3 当日の様子
福岡県弁護士会 「ジュニアロースクール2022春in福岡」開催!

伊藤会長による開会の御挨拶

  1. 当日は、急遽不参加となってしまった生徒さんもいましたが、総勢16名の生徒さんにご参加いただきました。また、教員の方1名にも見学という形でご参加いただきました。
  2. 今回のJLSは全体として大きく2つの部に別れており、それぞれの部の冒頭で、弁護士による寸劇が行われました。
    寸劇は、八木先生が弁護士役、見越先生と稲吉先生が高校生役となって、生徒さんと同じ資料を読みながら議論するという設定で行われました。生徒さんにどのように議論するかのイメージを掴んでもらうことを目的としています。
  3. 第1部は、
    1. 配布された資料を各自で読み込んで、正規雇用・非正規雇用に関する問題点を見つける。
    2. 4名ずつのグループに分かれて、資料から読み取った問題点をそれぞれ発表する。
    3. 全体会議で、各グループの意見を発表する。
      という流れで進行しました。
  4. 第2部は、
    1. 再びグループに分かれて、第1部で議論した問題点のうち1つに絞り、その原因と解決策を議論する。
    2. 全体会議で、各グループでの議論の結果を発表する。
    3. 全体会議で、各グループが発表した解決策に対して、その解決策を講じることによって生じうる更なる問題点の指摘とその対策を議論する。
      という流れで進行しました。
  5. グループワークでは、1グループにつき3名ほどの弁護士が担当となり、議論の進行や記録を行いました。
    私が担当したグループでは、進行担当の横山先生や八木先生が話を振ると、どの生徒さんも自分の考えを的確に説明してくれました。労働問題は生徒さんにとってイメージしづらいかと思いましたが、資料を基にして様々な角度からの意見が挙がり、充実した議論になりました。
    時には、生徒さんがグラフの出典である統計データ(URLを資料に記載)にまで遡って検討した意見に、我々が追いつけなくなる場面もあり、その熱意に驚かされるとともに次回以降への反省ともなりました。
    弁護士は、会館2階の大ホールのほか、複数の会議室に分かれてグループワークに参加していたため、他のグループの議論の様子は分かりませんでしたが、全体会議での発表内容からして、どのグループも充実した議論になっていたことが想像できました。
  6. 閉会後には、改めて各グループに分かれ、生徒さんに感想を聞いてみたり、逆に生徒さんから弁護士に対して質問したりするフリートークの時間が設けられました。弁護士になったきっかけや司法試験の話など、様々な質問が飛び交い、グループワークでの議論と同じかそれ以上の盛り上がりを見せていたように思います。
福岡県弁護士会 「ジュニアロースクール2022春in福岡」開催!

壇上で寸劇をする先生方

4 終わりに
  1. 2回目のオンライン開催となった今年も、坂本キャップをはじめとして司会の佐渡先生やZoom担当の田上先生など、運営の先生方による入念な準備・円滑な進行のおかげで、大成功に終わることができたと実感しています。
    生徒さんへのアンケートでも、とても面白かったとの意見を多数頂くことができ、微力ながらお手伝いさせていただいた身として非常に嬉しく思います。
  2. 今後の開催については、リモートだと発言しづらかったり、声が聞き取りづらかったりするとの意見もあり、対面での開催を希望する意見が多く寄せられました。また、PCやネット回線等の問題からか、途中で回線が途切れてしまったり、画面の向きが安定しなかったりした生徒さんもいました。
    その一方で、オンラインの方が話しやすいという意見もあり、オンラインだからこそ参加できるという遠方の生徒さんもいらっしゃいました。
    今後は、対面とZoom併用でのハイブリッド方式なども検討されるかと思いますが、いずれにせよ、対面での参加も可能なJLSが開催できるように、1日でも早くコロナが収束する日が来ることを願ってやみません。
  3. 最後になりますが、当日は読売新聞の記者の方が取材に来ており、弁護士や生徒さんへ取材されていました。具体的な掲載日は未定とのことですが、掲載された際は、ぜひご一読ください。
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あさかぜ基金だより

月報記事

あさかぜ基金法律事務所 所員 佐古井 啓太(72期)

こんにちは

あさかぜ基金法律事務所の佐古井です。あさかぜに入所して、はや2年が過ぎました。入所当時はこんなに長く福岡にいないと思っていたのですが、あっという間に過ぎる時間にびっくりしています。私の入所当時は6人いた弁護士も、うち4人は既に司法過疎地へと旅立ちました。あさかぜの養成期間は、上限が3年と決まっていますので、私もいよいよ赴任先を真剣に検討しないといけない頃合いです。

あさかぜでは、年に数回、赴任先となる事務所を研修として訪問していますが、今回は、あさかぜから旅立った1人である西原宗佑弁護士が所長をつとめる壱岐ひまわり基金法律事務所を訪問しましたので、その時のことを報告したいと思います。

壱岐ひまわり基金法律事務所

壱岐ひまわり基金法律事務所は長崎県壱岐市にある公設事務所です。壱岐市は人口2万5000人の市で、壱岐島全体で一市を構成しています。壱岐市一市を管轄する長崎地家裁壱岐支部が置かれており、裁判所や市役所のある郷ノ浦は、壱岐島の南西に位置する港町です。郷ノ浦が壱岐の中心部となっていて、壱岐ひまわり基金法律事務所もここにあります。

壱岐島は玄界灘に浮かぶ島であり、福岡市の北西70キロメートルに位置しています。福岡市の博多ふ頭から高速船ジェットフォイルで1時間程度で結ばれていて、長崎県ではありますが、福岡県とも結びつきの深い島です。隣の対馬とは「壱岐・対馬」とセットにされることが多いのですが、壱岐は円形の平らな島で、車で2時間もあれば一周できる比較的小さな島です。対馬は細長く地形も山がちで、端から端まで車で2時間以上かかる大きな島ですから、なんとも対照的です。

離婚事件の多い島

壱岐には、博多ふ頭からジェットフォイルに乗って行きました。船というと遅くて時間のかかるイメージでしたが、ジェットフォイルは、「海を飛ぶ」と形容されるとおりとても速く、時速80キロメートル近くも出るそうです。外海を通るので、時期によっては揺れがすさまじく、船酔いが大変だと聞いていましたから、非常に心配していましたが、この日は海も穏やかで、眠っている間にいつの間にか郷ノ浦港に着いていました。

郷ノ浦港に着いてから、西原弁護士に島を一周案内してもらいました。まずは猿岩。海に突き出た岩が、猿の顔に見えるから猿岩とのことです。海風が吹き付けて少し寒かったのですが、時間が朝であり、晴れていたのでなんともいい気持ちでした。そのあと月讀神社に行ったら、なんとここは神道発祥の地とのことで、こんなところで発祥したのかと驚きました。神社自体は、森の中の傾斜のきつい石段を上った先に小さな社がある、なんの変哲もない神社でしたが、なんとなく厳かな雰囲気のある空間でした。その後も何か所か観光地を周って、最後に原の辻遺跡に行きました。復元された高床式倉庫が建っていたので弥生時代の遺跡なのでしょうが、あたり一面が広大な平野になっていて、いかにも稲作に適した土地だろうなと思いました。聞くと、この辺りは長崎県下第2位の平野だそうで、まさか離島にそんな広い平野があると知ってびっくりしました。遺跡から見える山の上には、博物館があり、ここも大変面白いところだそうですが、この日は時間がなく次回までお預けとなりました。

壱岐をぐるりと周ったあとは、事務所を訪問し、西原弁護士から壱岐での弁護士活動について話を聞きました。壱岐は、福岡市に近いことの影響からか、とにかく離婚事件が多いとのことで、常時何件もかかえているそうです。島には2つしか事務所がないので、いろいろな種類の事件が来るようでしたが、裁判官が月に2回しか壱岐支部に来ないので、期日が集中して入ることになり、準備書面の作成が大変だとの話も出ました。なにより、小さな島なので、「利益相反」が頻繁に生じるということでした。島を移動すると、そこら中に関係者がいるので、心が休まらないという話も聞かされました。なるほど島ならではの問題だなと実感しました。

壱岐は、法テラスの法律事務所が先にできたこともあり、法律事務所といえば法テラスという土地だそうです。そんな中、ひまわりの先代所長弁護士が苦労して築き上げた信用を引き継いでやっていくのは、責任のともなう仕事でもあると思いました。

福岡県弁護士会 あさかぜ基金だより
いよいよ司法過疎地へ!

あさかぜで2年間弁護士をやってきましたが、1人で司法過疎地へ赴任するとなるとまだまだ不安です。それでも、今回、壱岐を訪問して、数多くの事件を抱えながらも、順調に事件を解決している先輩弁護士の頼もしい姿を見て、勇気づけられもしました。私も、いよいよ間近に迫った赴任に向けて、より一層研鑽に励んでいきますので、これまでにも増してのご指導ご援助をお願いします。

また、最後に宣伝ですが、現在、YouTubeの日弁連公式チャンネルにおいて、日弁連ひまわり基金20周年動画として「ここに弁護士がいてよかった(離島・長崎壱岐編)」(https://www.youtube.com/watch?v=C34O71Tvj04)が公開されています。あさかぜから壱岐に赴任した古賀祥多弁護士と西原宗佑弁護士の2人がひまわり基金法律事務所の意義について語っているのでぜひご覧ください。

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