福岡県弁護士会コラム(弁護士会Blog)

2004年6月号 月報

「こどもの日記念無料相談」開催される

月報記事

池田 耕一郎

平成16年5月8日(土)午前10時から午後3時半にかけて、電話による「こどもの日記念無料相談」が開催されました。当日は、福岡県弁護士会館二階会議室に受付電話回線を設置し、子どもの権利委員会の委員が午前と午後に分かれて張り付き待機しました。

この無料電話相談は、日弁連主催で、毎年5月のこどもの日前後に全国の各単位会で一斉に行われる恒例行事ですが、当会は、地元新聞、テレビ等の報道関係各位のご理解とご協力のもと、例年、全国の単位会の中でも上位の相談件数があり、本年度も昨年度の件数には及ばなかったものの、一二件の相談がありました。

今年の相談内容は、例年になくバラエティに富んでいたように感じます。

具体的には、近所の中学生男子から幼児(女子)への性的ないたずら行為に関する幼児の母親からの相談、息子と同じクラスに暴力的な同級生がおり危険であるから何らかの対策を講じたいという母親からの相談などがありました。他にも、保護者からの相談としては、中学生女子の不登校問題、担任教師からのいじめ問題、少年事件(傷害)の被害者となった中学生男子の示談交渉の相談などがありました。特筆すべき相談として、高校生本人から、学校の部活動の顧問教諭が部員間で差別的対応をするので、教育委員会に直訴したいというものがあり、子どもの権利委員会委員一同、思わず考え込まされました。

以上の相談どれをとっても、保護者あるいは子ども自身が、どこに相談してよいのかとまどう内容ばかりであり、本企画の存在意義をあらためて強く感じた次第です。

この「こどもの日記念無料相談」は、本年度で一四回目を迎え、市民の間に少しずつ定着してきた感がありますが、今後とも、当会会員、報道関係各位のご理解とご協力を得て、市民のみなさんがより一層利用しやすい企画にしていく所存です。

なお、当会では、今回の「こどもの日記念無料相談」とは別に、毎週土曜日午後0時半〜3時半の時間帯で、「子どもの人権110番」として、子どもの権利委員会の委員を中心とした担当弁護士が当番制で電話相談を受け付けています(電話番号092-752-1331)。これについても、積極的に市民への周知を図っていきたいと考えています。

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第五回刑弁研究会報告 〜刑事事件におけるマスコミヘの対応〜

月報記事

曽場尾 雅宏

 1 昨年十月、私が弁護士登録してはじめて経験した刑事事件は、新聞等で大きく報道された事件だった。この事件を通じて、私は、被疑者を誤った報道から守ることも、重要な弁護活動の一つではないかという問題意識を持った。そこで、このテーマを取り上げた。

今回は、佐賀新聞社の森本貴彦記者、大鋸宏信記者を講師としてお招きして、お話をうかがうとともに、活発な質問にもお答えいただいた。また、今回の研究会では、多くの大先輩の先生方にご参加いただき、研究会の議論がより深いものになった。  遠路おいでいただいた佐賀新聞社のお二人と、ご多忙の中ご参加いただいた先輩の先生方には、深く感謝したい。

2 前述の、私が経験した事件の概要は次のとおりである。  被疑者の逮捕後、余罪に関するスクープ記事が、一紙のみに大きく掲載された。被疑者は、真実を報道されるなら仕方ないが、報道されたスクープの内容はほとんどが間違いであるとし、強い不満をもっていた。新聞に大きく報道されたことで、家族は深く傷つき、住居も転居せざるをえなくなった。

私は、報道した新聞社に対し、被疑者の言い分も聞いて欲しい旨を連絡した。すぐに記者の方が事務所に来られ、話を聞いてくれた。記者も、相手方の言い分はじっくり聞こうという姿勢を持っているものだと感じた。同時に、もっと早い時期に記者と接触できていれば、誤った報道を防ぐことはできたのではないかと感じた。

3 私の経験の発表の後、お招きした記者の方々の講演が行われた。ここでは我々にとって大いに有益な、刑事事件の取材や紙面構\成等の実務の話をしていただいた。

また、記者から弁護人に対して求めたい情報としては、第一に、被疑者の認否と、否認ならば詳しい供述内容とのことだった。

記者の方々が強調していたのは、記者と弁護士との間により強い信頼関係を構築する必要があるということだった。

4 講演後の討論の際の発言の一部を、以下にランダムに並べる。

  • 認否といっても、逮捕の段階では、否認に近い自白もあれば、その逆もある。また、公判で不利にならないようにするため、逮捕時には認否を明らかにできないこともある。
  • 一時期、被疑者の言い分も記事にするという流れができつつあったが、今はそれが停滞している感がある。
  • 弁護士会で広報担当者を定めて一元的に情報提供する方法は、メリットとデメリットがある。広報が形だけの情報提供をすると、無意味になる。
  • 少年犯罪について、実名で報道する会社もあるが、実名報道は弊害が大きい。
  • マスコミも弁護士も、もっと双方がお互いを利用しあってもよいのではないか。
  • 否認事件の場合は、見出しに否認している旨を書いて欲しい。。

5 記者の方々や先輩の先生方からは、他にも多くの有益なお話をお聞きできた。

結論としては、月並みではあるが、弁護人がマスコミに対しどのような情報提供をすべきかは、非常に難しい問題であるということになろう。

以下は、私個人の私見である。

被疑者・被告人のために、その言い分を積極的にマスコミに伝える必要性のあるケースもある。また、国民の司法参加が進められている今日、刑事事件に関する情報は広く国民に伝える必要がある。その意味で、弁護人は、個々のケースの特殊性に配慮しながら、提供すべき情報は積極的にマスコミに提供する必要があると考える。そして、適時の有効な情報提供のためには、普段から記者と弁護士との間の信頼関係を構築しておく必要があると考える。

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「消費者契約法」研修会報告

月報記事

平岩 みゆき

1 平成16年4月16日吉岡隆典会員による「消費者契約法」研修会が行われました。

当職は吉岡会員と同じ事務所に所属しているため、同会員に対しては、困ったことがあれば何でも簡単に相談することができますし、相当嫌な顔をされることさえ覚悟すれば、確実に知恵を拝借することができるので、研修会費を取り立てられてまで同会員による研修を受けることには強い疑問を感じましたが、その価値については間違いないという確信がありましたので、出席することにしました。

2 講演は、事例をもとに、どのように消費者契約法を利用するか、その際どのような点に注意すべきかについて、説明がなされました。

事例は大雑把に言うと、次のようなものです。

(事例一)

Xは、日当たりの良いマンションを購入しようと考え、「陽差したっぷり」を謳い文句にするマンションを、その旨の記載があるパンフレットをもとに分譲担当者から説明を受け、購入したが、夏至においてはベランダの物干し部分に日光が全く当たらず、冬至においても室内にわずかに日光が届く程度というかなり日当たりの悪いマンションであった。

(事例二)

Xは、Y社が日当たりと眺望の良好をアピールするマンションを購入する際、Y社担当者に「近隣にマンションが建つことはないか」と聞いたところ、Y社担当者は「私共が知る限りそのような情報はありません」と言ったため、購入した。ところが、その一か月後、Y社は南側約五〇メートル離れた土地を購入し、高層マンションを建てる計画を発表した。

3 こんな相談がきたとき、みなさんはどうしますか。

当職の場合は簡単です。吉岡会員に共同受任してもらえばいいのです。そんな失礼な冗談はさておき、事例では消費者契約法四条の取消権が問題になります。

事例一では、契約締結勧誘における重要事項に関する不実告知(法四条一項一号)の適用、「勧誘」「重要事項」の意義が問題になり、事例二では、利益事実の告知かつ不利益事実の不告知(法四条二項)の適用、事業者の「故意」の意義が問題になります。

また、両事例に共通する問題として、六か月という時効期間の定めがあります。

馴染みのない法律であるが故に、文言の解釈が問題になった場合、一冊の文献を調べて、この文言はこう解釈するのかと単純に納得してしまいそうですが、それではまだまだ甘いようです。

特に、当職は、監修、編者として「最高裁判所事務総局民事局」や「経済企画庁国民生活局消費者行政第一課」などという言葉が出てくると非常に弱いのですが、「日本弁護士連合会消費者問題対策委員会」も忘れてはなりません。

講演では、異なった立場から三冊の参考文献が紹介されましたが、その違いを理解し、事案に応じてより説得的な論理展開ができるようになると、敵はあっと驚くでしょう。

4 講演は、消費者契約法にとどまらず、詐欺、錯誤、減額・相殺の主張についても及び、事件の経緯に沿って、詳細な説明がありました。

当日は、多数の会員の出席があり、非常に熱心に講演を聴かれていました。

当職は、会場後方にて講演を拝聴しましたが、当初、研修会費の支払に強い不満を抱いていたことを深く恥じ入った次第です。

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