福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2004年6月号 月報

「消費者契約法」研修会報告

月報記事

平岩 みゆき

1 平成16年4月16日吉岡隆典会員による「消費者契約法」研修会が行われました。

当職は吉岡会員と同じ事務所に所属しているため、同会員に対しては、困ったことがあれば何でも簡単に相談することができますし、相当嫌な顔をされることさえ覚悟すれば、確実に知恵を拝借することができるので、研修会費を取り立てられてまで同会員による研修を受けることには強い疑問を感じましたが、その価値については間違いないという確信がありましたので、出席することにしました。

2 講演は、事例をもとに、どのように消費者契約法を利用するか、その際どのような点に注意すべきかについて、説明がなされました。

事例は大雑把に言うと、次のようなものです。

(事例一)

Xは、日当たりの良いマンションを購入しようと考え、「陽差したっぷり」を謳い文句にするマンションを、その旨の記載があるパンフレットをもとに分譲担当者から説明を受け、購入したが、夏至においてはベランダの物干し部分に日光が全く当たらず、冬至においても室内にわずかに日光が届く程度というかなり日当たりの悪いマンションであった。

(事例二)

Xは、Y社が日当たりと眺望の良好をアピールするマンションを購入する際、Y社担当者に「近隣にマンションが建つことはないか」と聞いたところ、Y社担当者は「私共が知る限りそのような情報はありません」と言ったため、購入した。ところが、その一か月後、Y社は南側約五〇メートル離れた土地を購入し、高層マンションを建てる計画を発表した。

3 こんな相談がきたとき、みなさんはどうしますか。

当職の場合は簡単です。吉岡会員に共同受任してもらえばいいのです。そんな失礼な冗談はさておき、事例では消費者契約法四条の取消権が問題になります。

事例一では、契約締結勧誘における重要事項に関する不実告知(法四条一項一号)の適用、「勧誘」「重要事項」の意義が問題になり、事例二では、利益事実の告知かつ不利益事実の不告知(法四条二項)の適用、事業者の「故意」の意義が問題になります。

また、両事例に共通する問題として、六か月という時効期間の定めがあります。

馴染みのない法律であるが故に、文言の解釈が問題になった場合、一冊の文献を調べて、この文言はこう解釈するのかと単純に納得してしまいそうですが、それではまだまだ甘いようです。

特に、当職は、監修、編者として「最高裁判所事務総局民事局」や「経済企画庁国民生活局消費者行政第一課」などという言葉が出てくると非常に弱いのですが、「日本弁護士連合会消費者問題対策委員会」も忘れてはなりません。

講演では、異なった立場から三冊の参考文献が紹介されましたが、その違いを理解し、事案に応じてより説得的な論理展開ができるようになると、敵はあっと驚くでしょう。

4 講演は、消費者契約法にとどまらず、詐欺、錯誤、減額・相殺の主張についても及び、事件の経緯に沿って、詳細な説明がありました。

当日は、多数の会員の出席があり、非常に熱心に講演を聴かれていました。

当職は、会場後方にて講演を拝聴しましたが、当初、研修会費の支払に強い不満を抱いていたことを深く恥じ入った次第です。

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