福岡県弁護士会コラム(会内広報誌「月報」より)

2020年2月号 月報

第2回求人広告トラブル110番 ~いつの間にか有料に~

月報記事

中小企業法律支援センター 副委員長 碇 啓太(62期)

1 実施概要

令和元年12月10日(火)13:00~17:00に、「求人広告トラブル110番」として、中小企業法律支援センターの有志が相談担当をして、電話相談会を実施しました。2018年末ころから相談が急増していますが、現状でも未だトラブルが発生している状況です。そのため、第2回目の相談会を実施いたしました。

2 求人広告トラブル事案

事業者(主として中小零細企業)が無料だと考えて求人広告の掲載をしたところ、有料期間に入ったとして数十万円の請求を受けるというものです。

多くの事案では、主に3週間無料で求人広告をWEBに掲載しませんかとの営業の電話があり、その営業を受けた事業者が無料ならと考えて申し込んだところ、いつの間にか有料になっていて数十万円の請求が来て困ってしまうというものでした。

3 実施結果

電話相談の結果としては、9件の相談があり、相談者の所在は、福岡県内が2件、県外が7件で、栃木県、群馬県、千葉県、神奈川県、山口県からの相談がありました。すべての事案で、ハローワークに求人広告を掲載しており、広告事業者はハローワークの求人広告を架電の契機としているものと思われます。

4 法的問題点や対応方針

私たちは、事案の違いがあることを前提に、基本的に以下のような対応をする方針で、相談対応をしました。

(1) 相談時

相談を受けた際には、リスクを説明した上で、安易に支払いを促すようなアドバイスをせずに、支払をしない方向で検討をするなど慎重な対応をすべきだと考えています。

(2) 交渉段階

まずは、内容証明などで、(1)支払をしない旨の意思表示と(2)掲載されている広告の削除の要求をすべきです。訴訟提起まで至る事業者は限られていること等もあり、支払をする前提での和解をすることには慎重であるべきだと思います。

(3) 訴訟対応

広告事業者によっては弁護士が代理人となって訴訟提起してくることもあります。

基本的には、相手方は証拠書類が形式的には揃っている事案が多いものの、しっかりと事情を聴きとれば、契約の不成立、詐欺、錯誤、公序良俗違反による無効などの主張をすべき事案が多いと思います。

なお、公序良俗違反の主張については、厚生労働省のWEB上の「民間企業が行うインターネットによる求人情報・求職者情報提供と職業紹介との区分に関する基準について」という記事と、東京地裁平成28年3月28日判決が参考になります。

(4) 最終的な解決

現時点では、本記事で想定している求人広告トラブル事案で判決まで至っている事案はないようです。その理由は、多くの事案で、和解しているほか、広告事業者が請求の放棄、訴えの取下げをしているからだと思われます。私自身が裁判対応した事案でも、判決になる前に相手が請求の放棄をしてきました。

5 最後に

弁護士として悩ましいのは、依頼者の経済的利益のとの兼ね合いで、依頼を受けるときの弁護士費用です。ただ、被害者である中小企業救済・社会貢献という観点から、弁護士全体として、依頼しやすい金額で提案をして、積極的に助言・対応をしていければ望ましいと思っています。中小企業法律支援センターとしては、今後も中小企業の法的支援のために有益な情報提供に努めて参ります。

第2回求人広告トラブル110番 ~いつの間にか有料に~
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