「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2020年8月12日

ネットで中傷されたら

▼Q インターネット上で、私を誹謗(ひぼう)中傷する書き込みを見つけました。対処法はありますか。

▼A ネット上の中傷やプライバシー侵害への対処は、(1)サイト運営者に書き込みの削除を求める(2)「プロバイダー責任制限法」に基づき、書き込んだ人(発信者)を特定してやめさせる―の二つがあります。

(1)はメールや専用フォームでサイト運営者に削除を依頼します。サイト運営者が応じないときは、仮処分を申し立てたり、訴訟を起こしたりして削除請求できます。

(2)は「発信者情報開示」という制度を活用します。まずサイト運営者に対して、発信者のIPアドレス(ネット上の住所)の開示を求めます。IPアドレスからプロバイダー(ネット接続事業者)を特定し、発信者の名前や住所などの開示を請求します。サイト運営者やプロバイダーが応じなければ、これも仮処分を申し立てるなどの方法があります。

発信者が判明したら、削除や書き込み禁止を求めます。内容が悪質で名誉毀損(きそん)や業務妨害の疑いが強いときは、警察に刑事告訴したり、発信者を相手取り損害賠償請求訴訟を起こしたりもできます。

ただ、いずれの方法も手続きに時間がかかります。いったんネット上に流れた情報は時間とともに拡散され、取り返しの付かない被害を生む恐れもあります。IPアドレスの一般的な保存期間は3カ月程度で、対応が遅れると発信者の特定ができなくなる事態も考えられます。できるだけ早く、各地の弁護士会にご相談ください。

西日本新聞 8月12日分掲載(森山遼太郎)

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