「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは水曜日朝刊に掲載されます。

2015年4月29日

通信の秘密より救済優先も

▼Q インターネットの掲示板に、私が経営する飲食店への根拠のない悪口が書かれていました。損害賠償請求をしたいのですが可能でしょうか。

▼A 前提としてネット上に書き込みをした人物を特定する必要があります。そのためには携帯電話やパソコンからの書き込みがどこから行われたのか、IPアドレス(ネット上の住所)を特定しなければなりません。

IPアドレスを知るためにはネット上に掲示板を設置しているプロバイダーに開示を求めることになりますが、プロバイダーは書き込みをした人物の「通信の秘密」(憲法21条2項後段)を理由に回答を拒否することがあります。「通信の秘密」とは、手紙や電話、電信などの内容だけでなく、発信者と受信者の氏名や住所、通信日時や回数などについて公権力がこれを把握することや第三者に漏らすことを禁止する規定です。そして公権力と市民との間だけではなく、市民と市民との間にも適用され ると考えられています。

ただ、ネット上の有害な情報で不利益を被った人の救済も必要です。プロバイダ責任制限法は情報開示を求める人の権利侵害があったことが明らかで、発信者情報の開示を受ける正当な理由があるなど、一定の条件でIPアドレスの開示請求ができるとされています。条件を満たすかどうかは弁護士へご相談ください。

◆福岡県弁護士会の相談窓口案内=(0570)783552(なやみここに)。

西日本新聞 4月29日分掲載(天久 泰)

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