「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2017年3月1日

大規模火災、公的支援は受けられる?

▼Q 大規模な火災で、強風にあおられて火が燃え広がり、自宅が被害に遭いました。保険だけでは損害をカバーできそうにありません。何か公的な支援は受けられないのでしょうか。

▼A 火災の被害は、通常各人が契約した火災保険でカバーするのが一般的です。日本は古くから木造建築の建物が多く、火が燃え広がって被害が甚大になりやすいので、失火の場合、軽い過失では出火元は火災の責任を負いません(失火責任法)。また火災は人為的な要因で発生するため、通常「自然災害」とは認められません。

もっとも、大規模な火災で、しかも強風で被害が拡大した場合は「自然災害」と認定される場合があります。昨年12月に新潟県の糸魚川市で発生した大火は強風により被害が拡大し、140棟以上の住家が焼けたため、災害救助法の適用が決まりました。そして、強風という自然現象が被害拡大を招いたとされ、火災としては初めて「自然災害」と認定されました。

「自然災害」と認定されると、被災者の生活再建にとって有益な制度が使えるようになります。住居全壊の場合は支援金が支給され、個人の借入金の返済が困難になった場合、一定の要件の下、破産などの法的手続きによらず、金融機関と債務の減免などの合意をすることができるといった制度があります。

災害時は弁護士会の無料法律相談などが行われます。自治体独自の支援もあるので、まずは専門家に相談してみてください。

西日本新聞 3月1日分掲載(若林毅)

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