「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
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2022年1月12日

マンションを建て替えるには

▼Q 築40年の分譲マンションに住んでいます。耐震性が心配で私は建て替えたいですが、このままでよいという住人もいます。どうしたらいいでしょうか。

▼A マンションは一戸建てと異なり区分所有者全員のものです。マンションに変更を加える場合、本来は全員一致で決めるべきですが、区分所有法により重要度に応じて多数決で決めることになっています。

建て替えの場合、区分所有者に金銭的負担が生じたり、建て替え後に住む部屋の環境が変わったりするかもしれません。影響が大きいことから、区分所有者が持つ議決権のうち「5分の4以上」という大多数の賛成が必要です。この決議ができない場合、相談者は我慢して住むか、手放すしかありません。

建て替えを決議し手続きを進めると、建て替え参加者や建て替え組合などが、反対者の持ち分を強制的に時価で買い取る「売渡請求」ができます。買い取り代金の負担は生じますが、反対者側の持ち分が手に入り、建て替え参加者側の所有面積が広くなったり、組合が持ち分を売却して、利益を建て替え費用に回すことができたりします。

また、今より大きなマンションに建て替えることができれば、増加部分の売却利益を建て替え費用に充てて負担を抑えられます。

マンションには多数の区分所有者がおり、それぞれの事情に応じていろんな解決方法が考えられます。マンション管理に詳しいコンサルタントなどに相談するのが一般的ですが、基本知識を備えておくことをお勧めします。

西日本新聞 1月12日分掲載(家永由佳里)

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