「ほう!」な話『「ほう!」な話』は福岡県弁護士会の弁護士が西日本新聞紙上で執筆している法律コラムです。
最新のコラムは隔週木曜に掲載されます。

2025年12月18日

犯罪被害給付金制度

▼Q 妻が通り魔に襲われ亡くなりました。妻には借金があったので相続は放棄しました。それでも犯罪被害給付金制度は利用できますか?加害者は「死なせる気はなかった」と裁判で主張しています。

▼A 犯罪被害給付金制度は、連帯共助の精神に基づき、故意の犯罪行為で亡くなった方のご遺族を経済的に支援する制度です。給付金は、亡くなられた方の相続財産ではなく、ご遺族の財産とみなされます。相続放棄をしていても受給できます。

手続きでは都道府県の公安委員会に支給裁定を申請します。申請期限があるので注意してください。

まず、被害者が亡くなって7年が過ぎると申請できません。また「加害者の故意の犯罪行為によって死亡したこと」を知ってから2年を経過した場合も申請は不可能となります。

つまり、犯罪行為が原因と知らなくても、死亡から7年たつと申請できません。また、犯罪行為が原因と知ってしまうと、そこから2年たてば、死亡から7年となる前でも申請できなくなるのです。

「死なせる気はなかった(故意ではない)」というのは、あくまでも加害者の弁解です。裁判でそのまま認められるわけではありません。犯罪が故意によるものかどうかは、支給裁定をする公安委員会が、刑事裁判とは別に調査して判断します。公判で犯人が「故意はない」と弁解していても、支給裁定を申請してください。

犯罪被害者を支援する制度は他にもあります。期限や要件はさまざまです。警察署や弁護士会にご相談ください。

西日本新聞 12月18日分掲載(李博盛)

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