弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2022年9月11日

「大地の子」(上)

中国


(霧山昴)
著者 山崎 豊子 、 出版 文芸春秋

 いま、戦前、応召して中国東北部(満洲)で工兵として働いていた叔父(父の弟)が、戦後、八路軍(パーロ。中国共産党の軍隊)の要請に応じて技術員として紡績工場に働くようになり、結局、1953年5月に日本に帰国するまで、9年ほど中国にいたときのことを調べています。
 この本の主人公・陸一心は、日本が満州に送り込んだ開拓団の孤児として、大変な苦労をします。満州開拓団はまさに侵略者の一員でしたが、その生活は惨(みじ)めなものでした。終戦直前に「根こそぎ動員」によって働ける男たちは兵隊にとられ、開拓団に残ったのは老人と女性と子どもばかり。そこへソ連軍が突如として襲いかかってきて、また、恨みを買っていた現地の人々からも襲われました。
 7歳だった主人公は両親と死別し、妹ともはぐれて中国人にさらわれ、こき使われ、さらには売りに出されました。そのとき、ひょんなことから中国人の良心的な小学校教師に救われ、そこで養われます。地域でも学校でも「日本鬼子」としていじめられますが、心やさしい中国人少年もいて助けられます。
 養親の期待にこたえて必死に勉強して工業大学に入り、鉄工所に就職。
 ところが、文化大革命の嵐のなかで「反革命分子」として吊るしあげられ、冤罪でモンゴルの労働改造所に送られてしまうのでした。ここでの生活もひどいものですが、心優しき看護婦と出会い、また、幼なじみが主人公を労働改造所から助け出そうと努力します。
 いえ、なにより養父のがんばりがすごいのです。教師の職をなげうってまで、主人公を救出しようと北京にのぼって陳情活動を続けるのでした。
 30年ぶりに読みましたが、迫害のひどさに胸を痛め、また、心優しき人々が主人公の救出に執念を燃やす姿に接し、目頭が熱くなりました。著者の筆力に、今さらながら感服します。私もぜひこんな小説を書いてみたいと思いました。
(1992年1月刊。税込1400円)

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