弁護士会の読書
※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。
アメリカ・ロシア
2019年5月29日
ハンターキラー(上・下)
(霧山昴)
著者 ジョージ・ウォーレス、ドン・キース 、 出版 ハヤカワ文庫
原子力潜水艦同士の息づまる戦いが詳細に描写されていて、頁をめくるのももどかしいほどです。上下2冊の文庫本です。それぞれ400頁をこす部厚さですが、車中で3日かけて読み通しました。こんな速さで読めたのも、ゴールデンウィークの途中にこの本を原作とする映画をみたからでもあります。潜水艦の構造などは、やはり映画をみないと視覚的イメージがつかめないのですが、話のディテール(詳細)は文庫本のほうがはるかに勝っています。
文庫本のほうは、株式取引という金もうけの話と連動した陰謀、そしてクーデターが進行していきますが、映画のほうは経済的な側面は全面カットされ、ひたすら原潜同士そして駆逐艦との戦いに焦点があてられています。
それにしても、ロシアで軍部がクーデターを起こし、アメリカとの全面戦争をのぞむという筋書きで話は進行していきますが、同じことはアメリカでだって、そして、わが日本でだって起こりうるのではないかと、私はひそかに恐れました。
そして、アメリカの原潜には女性兵士が乗り込んでいるのにも驚きました。いくら男女同権といっても、女性兵士は考えものです。しかも、潜水艦という狭い密室のなかに、大勢の若い男の兵士のなかに女性兵士が何人かいるって、あまりにも危険ではないのか・・・と、ついつい「余計な」心配をしてしまいました。
訳者あとがきは大変参考になりましたので、少し紹介します。
第二次世界大戦のころは、潜水艦は、「海にも潜れる水上艦」だった。エンジンや技術の制約上、潜航できる時間が短かったので、ここぞというとき以外は、水上を航行していた。それが、原子が潜水艦の登場によって状況は一変した。ほぼ無限の重力と電源、そして空気を得られたことで、乗組員の体力と食糧が尽きないかぎり、半永久的に潜航できるようになった。
探知されることなく、速力よりむしろ静かに潜航すること、つまり静粛性が緊要だ。このため、世界の海軍をもつ国は、潜水艦を重視し、静粛性を高めることと、敵の潜水艦を探知する技術を磨くことにしのぎを削っている。潜水艦には窓がなく、周囲の音だけを頼りに漆黒の暗闇を航行する。光の届かない、鋼鉄に囲われた狭い密閉空間で長時間生活することから、乗組員のストレスは大変なものがあるだろう。このため、潜水艦の乗組員には、高い能力もさることながら、高い協調性が求められる。誰でもなれるというものではない。
いやあ、閉所恐怖症の私なんかとても、いえ絶対に潜水艦で何ヶ月も生活するなんて、ご免蒙るしかありません。超近代的なはずの原子力潜水艦は、実は超古典的なしろものなのです。海中での潜水艦の働きもよく分かる本でした。
ロシアもアメリカも、そして日本だって軍部独走にならないよう、しっかりと国民が声を上げる必要があると実感させられました。
(2019年3月刊。900円+税)
2019年4月10日
「共謀」
(霧山昴)
著者 ルーク・ハーディング 、 出版 集英社
トランプとプーチンの古くからのつながりに迫った本です。
トランプ大統領のロシア疑惑とは何なのか、この本を読んで、ようやく少し理解できました。
トランプ大統領のロシア疑惑とは、二つ。一つは選挙妨害の可能性。2016年のアメリカ大統領選挙戦で、ロシアが介入した民主党全国本部などへのサイバー攻撃について、どれだけトランプ陣営が組織的に関わっていたか・・・。二つ目は、トランプが大統領になってから、ロシアの選挙介入疑惑に対する一連の捜査を妨害しようとしたのではないかという司法妨害である。
一連の捜査をしていたFBIのコミー長官に対して、トランプ大統領は、当時、大統領補佐官だったフリンに対する捜査を中止するよう要請したが、コミー長官は拒否して、その後も捜査を続けた。そこで、コミー長官はトランプ大統領から更迭された。このようなトランプ大統領の行動は司法妨害ではないのかというもの。
トランプはモスクワにもトランプタワーを建てようとした。この夢は結局のところ実現しませんでしたが、夢を具体化できるほどの基礎はあったのです。それは、ロシアがトランプを招待し、優遇したことから生まれた夢でした。
プーチンとトランプの関係は、まさしく強者と弱者の関係。どちらが強者か、それはプーチンであってトランプではない。トランプは強者のプーチンに対して弱者としての存在でしかない。
トランプ大統領が、前にフロリダ州にもっていた家をロシアのオリガルフ(大富豪・政商)が購入した。この売買によって、トランプは5000万ドルもの利益を得た。
ニューヨークのトランプ・タワーは、今や重大犯罪の巣窟になっている。トランプ・タワーは、ロシアン・マフィアの避難所にもなっている。
過去40年間にわたってトランプが築いた不動産の王国は、モスクワからのブラックマネーの洗濯場としての役割を果たしてきた。旧ソ連の資金が分譲マンションや邸宅に流れ込んでいただけでなく、トランプがアイオワやニューハンプシャーで選挙活動していたときですら、トランプの側近たちは念願のモスクワでのタワー建設に向けて、認可と資金援助を得るためにロシア政府と交渉していた。
トランプ大統領の支持率は、アメリカ全体でみたら40%でしかなく、政権発足時の45%から5%も下がった。これは歴代大統領として最低レベルだ。ところが、共和党支持者に限ってはトランプ大統領の支持率は何と86%。就任時の89%から3%しか低下しておらず、まさに鉄板。これに対して民主党支持率はわずか7%。この両者の差は、実に79ポイントもある。
そもそも、トランプ大統領そのものが分極化の象徴的存在なのだ。
この本によると、トランプはロシアに弱みを握られてでもいるかのようにプーチン大統領にひたすら恭順の意を示しているとのことです。であるなら、ロシア疑惑も十分にありうるわけですよね・・・。
(2018年3月刊。2300円+税)