弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2003年9月 1日

ゴー・フォー・ブローク

著者:渡辺正清・出版社:光人社
 Go For Broke! 撃ちてし止まん。これが日系2世部隊「第442連隊」のモットーだった。第2次世界大戦中、アメリカ本土の日系人は敵国人として強制収容所に入れられ苦難の日々を過ごした。そのなかからアメリカ軍へ志願した若い2世が1200人ほどいた。ハワイでは1万人の2世が志願し、2700人が入隊を許可された。
 彼らはどこで戦ったか?イタリアとフランスの冬山のなかで切りこみ隊のようにつかわれ、実に大きな犠牲を払って、ドイツ軍を撃破していった。戦後まで生き残った日系2世兵士が、かつての激戦地であるイタリアとフランスの都市を訪問し歓迎されている状況も描いている。わたしは日本国籍だが、あなたはアメリカ市民です。日本人として恥ずかしくないように、あなたの国アメリカのために戦いなさい。これは、母親が息子の日系兵士におくった言葉である。

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ワシタカ類・飛翔ハンドブック

著者:山形則男、出版社:文一総合出版
 大空を悠然と飛ぶトビやワシ・タカ類を見事にとった写真集。ノスリ、サシバ、ハヤブサ、チョウゲンボウ、ツミ、チュウヒなど、知らない鳥もたくさんいる。
 空高くトンビの飛ぶのを見たことはあるが、あまりワシタカ類を見たことはない。一度、大空でお目にかかってみたいもの。『WATARIDORI』は渡り鳥を主人公としたフランスの映画。その映像のすばらしさに感嘆したが、小型飛行機で撮影されたことを知って、2度びっくりした。

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人間の盾

著者:木村公一、出版社:新教出版社
 著者は団塊の世代で、バプテスト教会の牧師。今年3月、アメリカ軍のイラク攻撃のとき、バグダッド市内に「人間の盾」として変電所に住みついた状況をレポートした本です。同世代の人ですが、すごい勇気があると敬服してしまいました。私にはとてもそんな勇気はありません。
 アメリカ軍によるイラク攻撃が間違っていたことは、今ではアメリカ国内でも理解されつつあるようです。しかし、日本人の私たちは、それを今さら遅いと笑うことは許されません。日本の自衛隊が、これからアメリカの指示(いえ、命令と言うべきでしょう)によってイラクへ出かけ、アメリカ軍の盾(下働き)をさせられようとしているからです。
 フランスやドイツのイラク戦争への対応を見るにつけ(イギリスは別です)、日本は本当に独立国家なのか本当に疑ってしまいます。

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デブの帝国

著者:グレッグ・クライツアー、出版社:バジリコ
 先日、高校生の娘に年末までに5キロ減量するという誓約書を書かされてしまいましたので、目下、必死に努力を続けています。週1回の水泳のほか、休日には往復3時間かけた山登りも始めました。
 アメリカ人の61%がやや肥満、20%が肥満です。つまり500万人以上が病的肥満なのです。19歳未満のアメリカ人の肥満が多い原因に治安の悪化があることを初めて知りました。アメリカ人の成人の46%が自宅周辺の治安が悪いと感じています。そこで、子どもが自宅でテレビを見ているあいだは、銃で撃たれたり、性的暴行を受けたり、誘拐されたり、非行に走ったりする心配はないと親は考えています。ところが、テレビを見る時間が長くなると、子どもは太っていきます。運動する時間が減り、ソフトドリンクとファーストフードを食べる機会が増えるのです。学校の昼食もソフトドリンク契約がハバをきかせているというのですから、お寒い限りです。
 ファーストフードを好み、それに頼る食習慣が思春期に身についてしまうと、青年期になるにつれ、さらに多くの脂肪とエネルギーを摂取する危険をもたらします。青年期に活発な行動がなくなり、体重が増加していきます。肥満の子どもが肥満の大人
になると、癌にかかる危険性も強まります。
 アメリカには何度も行きましたが、超特大のおデブさんを至るところで見かけました。また、ジャンボサイズの食品(決して美味しくはない)に何回も遭遇しました。アメリカではスリムな身体を維持するのにも相当のお金がかかります。だから、スリムな身体はエリートの証明でもあります。私も、その意味でのエリートを今めざしています。ちなみに私は、マックもケンタもホカ弁も回転寿司もまったく無縁です。コンビニも利用しないことにしています。

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自衛隊はどのようにして生まれたか

著者:永野節雄、出版社:学研
 9.11以降、世の中が一変してしまった気がしてならない。三矢作戦なんて、タブー中のタブーが暴かれて世の中が大騒動になったのがウソのように、有事立法がスンナリ国会で可決されてしまった。ついに日本の自衛隊がイラクへの「侵略」アメリカ軍を支えるために遠征しようとしている。えっ、「自衛」のための「軍隊」だったんじゃないの。そう叫んでも遅い事態となっている。
 この本は日本の自衛隊がアメリカ占領軍の「許可」という名目の命令によって創設されたこと、そして、その後の経緯をインサイド・レポートとして役に立つ。自衛隊の今後を考えるうえで、発足当時の状況を知るのもムダではないと思って読んだ。

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黙ってオレについてこい

著者:マイカ・イアン・ライト、出版社:バジリコ
 変わった本です。世界大戦中の戦意高揚ポスターの絵をそのままつかって、文句を変えて反戦ポスターにしてしまっています。なるほど、戦意高揚ポスターというのはこういうものなんだ。そして、その実体は改竄された文句のとおりだということがよく実感させられます。発想の転換を迫られた本でした。

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イルカ・ウォッチング・ガイドブック

著者:水口博也、出版社:阪急コミュニケーションズ
 なぜかイルカは人間を魅きつけます。愛敬のある丸い顔とつぶらな瞳を見ていると、つい触ってしまいたくなります。残念ながら、私はまだ触ったことはありませんが、イルカ・ウォッチングのなかにはイルカを遠くから眺めるだけでなく、一緒に泳いだり、エサをやったり、果てはイルカの身体を触ったりすることもあるようです。それが人間の心をいやす作業療法にもなっています。
 イルカはクジラと同じで、一度は陸上にあがって活動しましたが、なぜか再び海中で生活するようになった哺乳類です。だから私たち人間と親近感があるのかもしれません。
 この本は、世界中のイルカ・ウォッチングの場所を紹介しています。私は残念なことにまだ行ったことがありませんが、日本にも天草など、いくつかあります。たくさんのイルカの写真があり、見ているだけで心が安らぐガイドブックです。

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仕組まれた9.11

出版社:PHP研究所
 アメリカの連邦議会で民主党の議員が、ブッシュ大統領は、9.11の前にテロ予告を受けていたのではないかと追求しています。ブッシュ大統領も全否定はしていません。
 この本は、ハイジャック通報を受けてからのアメリカ空軍の動きが遅すぎる(緊急発進するのに34分もかかっている)という疑問から、ブッシュ大統領はテロがおきることを事前に知っていた疑いがあるとしています。
 アフガニスタンの石油・ガス利権をアメリカは確保したいので、戦争をしかける口実が欲しかったというのです。パール・ハーバーと同じです。本当かどうか分かりませんが、アフガニスタンの石油・ガス利権が狙われているのは事実です。

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子別れレッスン

著者:斎藤学・久田恵、出版社:学陽書房
 子宮という家から出る(第一誕生)。母の膝から降りる(第二誕生)。親の家から離れる(第三誕生)。この第三誕生が今すごく長引いている。自立しない子どもがふえている。
 たっぷりの愛を注がれた人は早々と親離れして、親のことなどあまり考えなくなる。無視されたり、いじめられたりした子は、いいにつけ悪いにつけ親にこだわって、親のように生きてしまう。今の若い男たちの中には、性に対する恐怖感があって、性交不能のものが多い。
 母と娘、父と息子。お互いに自立するのがこんなに難しいものだったのか、体験してみるとよく分かる。いろいろ深く考えさせられ、反省するところも多々あった。

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女帝誕生

著者:笠原英彦、出版社:新潮社
 日本には8人、10代の女帝が存在した。中国には唐時代の則天武后がただ1人いるのみ。ところが、現在の皇室典範は女性天皇を認めない。なぜか?
 この本によると、明治時代に成立した皇室典範ができるとき、明治天皇の側室となった柳原愛子(なるこ)が後の大正天皇を生んだことを前提として、兄の柳原前光(さきみつ)が嫡系を優先して女帝を認めると、庶子は不利となるので、女帝を認めないようにしたという。つまり、個人の利益が女帝否認をもたらしたのだ。
 さらに、この本は、日本に8人、10代の女帝がいたとしても、それは単なる「中継ぎ」天皇でしかなかったという俗説を完膚なきまでに叩きのめしている。8人の女帝は立派な執政能力を有していたのであり、お飾り的な「中継ぎ」ではなかった。
 「男系の男子」のみに皇位継承を認める制度は、天皇が側室をもつことを前提としていると解されている。なるほど、と思う。そして、いったん女性天皇を認めると、女系天皇も認めなければならなくなる。しかも、現在は皇族の身分が得られる民間人は女性に限られ、民間人の男性は絶対に皇族とはなりえない。男女間に明白な差別が存在する。
 日本の天皇が「万世一系」でないことは、継体天皇をどうみるかにかかっているが、歴史的には明白な事実である。天皇制度が存続する今日的意義は何なのか、よく分からない。「なぜ愛子様が天皇になってはいけないのか?」というこの本の帯の疑問は解消されそうもない。

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太ったんでないのッ!?

著者:壇ふみ・阿川佐和子、出版社:世界文化社
 『ああ言えばこう食う』(集英社)、『ああ言えばこう嫁×行く』など、この2人のかけあい漫才はともかく面白い。なんとバカなことを言っているのだ、と腹がたつほど面白くて、次はどういう展開になるのか、頁をめくるのももどかしいほど。
 こんなに相手を「けなし」あって、本当にこの2人の関係は大丈夫なのか。他人事(ひとごと)ながら心配させられるが、本人たちはスッカリ割り切っている気配だ。
 太ったんでないの?と言われると、実は私も辛い。中年太りがますます進行し、ついに娘から誓約書を書かされてしまった。年内に5キロやせなくてはいけない。トホホ・・・。
 ところで、淫靡(隠微)なトリュフの料理からフグの白子のリゾットまで、日本とフランスの美味・珍味が惜し気もなく出てきて、美女二人が堪能している状況が描かれている。これで太らない方がどうかしている・・・!なんて怒っても何の意味もない。私も、こんな軽妙な文章を書いてみたい。そして「取材」と称して高級料理店でオーナー・シェフのとっておきフレンチを味わってみたいものだよーん。

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黒い悪魔

著者:佐藤賢一、出版社:文芸春秋
 デビューして10年になる著者の長編小説10作目の本です。10作全部を読んではいませんが、直木賞をとった『王妃の離婚』など、情景描写のうまさと巧みなストーリー展開にいつも感心させられます。西洋史学を専攻していたというだけあって、中世のフランスの社会状況もよく描かれています。
 この本と同時に発売された『オクシタニア』(集英社)も読みました。キリスト教の異端カタリ派を扱っていますが、登場人物が関西弁で話したりするのに違和感がありました。
 この本は、『三銃士』(福音館書店)の作者である文豪デュマ・ペール(大デュマ)の父親の一生を描いています。カリブ海の島で黒人奴隷の母親との間に生まれ、パリに出て将軍へ出世していき、フランス革命に直面してナポレオンとはりあうようになる激動の人生が、手に汗にぎるように活写されています。
 いま、私はマイカーの運転中に子ども向けのフランス語『三銃士』を聞いています。まだまだ全部は理解できませんが、それでも長年続けてきたおかげで、かなり聞きとることができます。耳からずっと聞いているので、日本語の『三銃士』も読んでいるのですが、さすが文豪と言われるだけあって面白いですね。語学をやっていると本当に世界が広がります。

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松本成一写真集

 松本成一弁護士による自費出版の写真集。
 松本弁護士は1933年生まれなので、ちょうど70歳。弁護士生活45年の大ベテラン。飛行機の免許ももっておられるので、素晴らしい航空写真もある。
 1957年の唐津の紙芝居の写真を見ると、本当になつかしい。1975年に廃止された福岡の市内電車も走っている。写真は雄弁だ。みるみるうちにタイムスリップさせてくれる。子どものころに返って、おカネのことも、異性のことも、何にも苦労なく遊んでいることに戻りたい・・・。そんな忘れかけていた情景を思い出させるなつかしさあふれる写真集。(

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能力構築競争

著者:藤本隆宏、出版社:中公新書
 ニッサンはルノーの支配下に入って、フランス人のカルロス・ゴーンが社長となり、マツダもフォードに支配されてアメリカ人の社長になっている。もう、日本の自動車産業も斜陽化している・・・。そう思っていた矢先に読んだ本。いやいや、日本の自動車産業は世界のシェア30%を維持しているし、強いんだ。なぜ、こんなに強いのか、それを探ろう。この本はそう主張する。アメリカで日本車が強いのは、中古車価格が新車の半値もするからだ。なるほど、そうだったのか・・・。日本人は品質にうるさいだけでなく、デザインも型もきわめて細かい。その注文に応じながらコストダウンしていく。そのフレキシビリティーが日本の自動車産業にはあった。うんうん、そうだそうだ。よく分かる・・・。この本は、東大教授が難しい言葉で日本の自動車産業もまだまだ捨てたもんじゃないことを解説してくれている。

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カストロ─銅像なき権力者

著者:戸井十月、出版社:新潮社
 1959年1月、フィデル・カストロ32歳のときキューバ革命が始まった。以来、40年以上も権力者として君臨し、アメリカから何度も暗殺されかかっても、倒れなかった。そして頼みのソ連が崩壊したあと、キューバは経済危機に直面する。それでも陽気にキューバ人は生きているし、カストロも生きのびている。いったい、それはなぜなのか?
 この本は、私と同世代の著者がカストロへの突撃取材に成功するまでを語りながら、キューバの実情を率直に紹介している。一言でいうと、キューバは国としては苦労しているけれど、人々は楽天的に生きているし、カストロは権力腐敗から無縁だということ。本当だろうか・・・。あとは、この目で確かめるしかない。

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合戦の日本地図

著者:武光誠、出版社:文春新書
 長篠の戦いは、通説によると織田・徳川の連合軍が鉄砲隊を駆使し、3段撃ちで武田の騎馬軍団を壊滅させたことになっています。しかし、この本でも、それは疑問だらけだとされています。『徹底検証── 長篠・設楽原の戦い』(吉川弘文館)によっても、とても3千挺の鉄砲はなかっただろうし、3段構えは実証されていません。
 もうひとつ。桶狭間の戦いについて、窪地で休んでいた今川義元軍を背後から信長が奇襲したと思いこんでいました。しかし、この本によると、義元軍は小高い丘陵で休息をしていたのであって、信長軍は正面しかも下の方から襲いかかって義元の首をとったというのが真相だというのです。知りませんでした・・・。日本史上有名な20の合戦が、図解つきで紹介されています。

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グレートジャーニー・原住民の知恵

著者:関野吉晴、出版社:知恵の森文庫
 著者は法学部を出て、医者になった人です。大学時代にアマゾン川流域を下ったなんてすごい。私の1歳下ですが、とても真似できません。世界中をわたり歩いて、自分の眼で「原住民」の心豊かな生活を私たち「文明人」に伝えようとしています。
 金もうけしたら何をしたいか?その答えは、ゆっくりのんびり家族と語らいながら過ごしたい。それなら、もう自分たちは実現している。そう「原住民」が問いかけます。いや違う。それじゃない。そのように私たち「文明人」は言えるのでしょうか?
 人生と自然と深く考えさせられるギッシリ重たい文庫本です。

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面目ないが

著者:寒川猫持、出版社:新潮文庫
 せつなくて、おかしい、うた(短歌)入り随想集。眼科医で、妻に去られたバツイチの身を、飼い猫と過ごす日々がサラサラと流れるように描かれています。
 著者も私と同様、手書き派です。パソコンなど使いません。世に物書きと呼ばれる人種はみんな神経症であると思い下さってまず間違いはない。こう書かれていますが、もちろん私にも心あたりがあります。 大人になるということは嫌なものである。人々は忘れてはならないものがある。それは少年の心である。私より5歳年下の著者ですが、いいことを言ってくれます。

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アイルランド建国の英雄たち

著者:鈴木良平、出版社:彩流社
 「マイケル・コリンズ」という映画を見たことがあります。娘がパンフレットを必死になって捜し出してくれましたが、それによると、1997年3月の発行となっていますから6年前の映画です。「シンドラーのリスト」でシンドラー役を演じたリーアム・ニーソンがマイケル・コリンズを演じています。アイルランドの対英独立ゲリラ戦争が舞台です。マイケル・コリンズは1922年に暗殺されるのですが、その真相は今も不明です。
 この本を読むと、アイルランドがイギリスから独立するまでの苦闘の歴史がよく分かります。と同時に、悲しい内紛が頻発し、裏切りとスパイが横行していたこと、生き残って大統領となったデ・ヴァレラが「権力者は腐敗する」を地でいったことも描かれ、暗澹たる気分にもさせられてしまいます。

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色を奏でる

著者:志村ふくみ、出版社:ちくま文庫
 チャン・イーモウ監督の中国映画「英雄」を見ました。ストーリーもさることながら、色彩感覚の見事さに感嘆させられました。画面に眼が吸いつけられ、いっときも目が話せません。映画が終わってタイトル・クレジットを見ているとワダエミと日本人の名前が出てきて、あれっ、と思いました。パンフレットを買って読むと、たしかに日本人なのです。黒澤明監督の「乱」でアカデミー賞優秀衣装デザイン賞を受賞した衣装デザイナーだそうです。赤い色の服を54もの彩度に分けて染色工場でつくり出していくなど、信じられない話が書かれています。
 この本は、映画とは全然関係ありません。植物染料による染色が紹介されています。どんな色が出るか、それは草木まかせ。化学染料は脱色できるが、植物染料は脱色できない。キラキラ生き生きと眩しいばかりに輝く染めた糸の写真を見ると、布もいいなあ、さわってみたいものだなあと思います。

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新・日本永大蔵

著者:船橋晴雄、出版社:日経BP社
 創業以来、1400年以上という古い会社(金剛組)が大阪にあります。信じられない古さです。キッコーマン醤油は340年前。江戸時代から生き残っている会社がいくつもあるというのも驚きです。あの虎屋は戦国時代創業のようです。1本4800円の大棹羊羹はずしりとした重さで、さすがに一味二味ちがいます。そんな由緒ある企業の生き残り秘策が紹介されています。
 『会社の寿命』(日経新聞社)という本を読んで、会社にも寿命があることを知って驚いたことを思い出しました。

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ケルトの木の知恵

著者:ジューン・ギフォード、出版社:東京書籍
 サンザシは、エロチックな香りを放つそうです。女性の性的な分泌液の匂いを思い起こさせるとのこと。性欲を目覚めさせ、生殖能力を高めるといいます。えっ、サンザシってどこにあるんだろう。中年を自覚する私は周囲を見まわしてしまいました。
 シラカバは短命で80年、オークの寿命は1000年。しかし、イチイはなんと9000年。ホントかな・・・。ヤナギは、ときには理性も分別もかなぐり捨てて、心ゆくまで涙に暮れることも必要だと教えている。
 イギリスの先住民ケルト人の文化を、そこに生え育つ木々を見事な写真で紹介しながら説明した本です。頁をめぐりながら心やすまるひとときでした。

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何をやっても癒されない

著者:春日武彦、出版社:角川書店
 著者は産婦人科医として大学病院に6年間つとめたあと、精神科医になりました。なぜか?
 わたしをうんざりさせたのは、世の中にはいかに身勝手な人たちや「いい加減」で卑しい人たちが多いかという事実であった。子どもを道具か、せいぜいバービー人形程度としか捉えていない親の多さに呆れてしまった。こんな親たちの安易な発想や無分別な衝動に加担することに、わたしはつくづく嫌になった。分娩に立ち会った医師として「おめでとうございます」と言わねばならない。自己欺瞞も限界に達した。
 なるほど、なるほど・・・。納得した。
 それぞれの医者には、それぞれ特有のトーンをもった患者さんが集まるという経験的事実がある。これは、そっくりそのまま医者を弁護士におきかえてもあてはまります。心という不思議を考えさせてくれる精神科医によるエッセーです。

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日本に治安は再生できるか

著者:前田雅英、出版社:ちくま新書
 著者は団塊の世代の刑法学者。「大人は犯罪をあまり犯さない国、日本」がついに崩壊しはじめたという警告の書。これまで、日本は治安の良さを誇ってきた。浴衣姿の若い娘が1人で夜道を銭湯に通っているのを見て外国人が驚く。今や、そんな光景が神話となりつつある。刑務所などの行刑施設に、定員6万5千人を上まわり、6万8千人が収容されている。女性も増え、3千人をこしている。覚せい剤事犯の2割は女性だが、実は10代では男女半々になっている。刑務官は1万5千人で、10年前に1人あたり3人だったのが、今では5人を受けもっている。それもあって、所内の暴行・傷害は5年間で3700件から6400件に増え、懲罰件数も2万6千件から3万7千件へと増えた。日本でも外国並みに刑務所での囚人暴動がいつ起きても不思議ではない状況になっている。
 ともかく犯罪が増えている。とくに外国人と女性が増えた。1年間に検挙される32万5千人のうち20万2千人が送検され、12万人あまりが警察で放免される。被告人は5万人にみたないが、判決は重罰化の傾向にある。
 犯罪の検挙率は急激に低下し、2割を切った。とくに強盗罪では5割を切ってしまった。
 凶悪犯罪の増加が目立つ。強盗は10年間で3倍になった。強制わいせつもそれに近く、166%贈。絶対数の多い窃盗も1.5倍になった。来日外国人の犯罪が増えている。強盗の5割以上が中国人で、4分の1がブラジル人。そして強盗の4割は少年。いろいろ考えさせられる衝撃的な問題提起の本だと受けとめた。

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モノカキ日弁連副会長の日刊メルマガ

著者:永尾廣久、出版社:花伝社
 2002年度日弁連副会長を務めた筆者が、激動する司法の中で日弁連はどのような活動をしているかを九州の会員にメールでレポートしたもの。モノカキとは、筆者のあだ名である。
 内容は、司法改革の各論点について、日弁連の意見や司法改革推進本部の議論の様子が中心であるが、日本の司法状況全般について、数字をあげ、諸外国と比較しながらわかりやすく説明されていて、「日本の司法豆知識」集にもなっている。
 また、豊富な読書に裏付けられた書籍の紹介は読書の意欲をわきたたせるし、自宅の庭と日比谷公園の四季折々の花々の様子は、ビルの中でパソコンに向かう私達の目を、窓の外に向けさせてくれる。
 筆者が本当の「モノカキ」になってしまうと弁護士会は大打撃なので、売れないままでどんどん書いて戴きたいというのが、勝手な読後感である。

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モスクワ地下鉄の空気

著者:鈴木常浩、出版社:現代書館
 1975年生まれの日本人青年が昨年まで5年ほどモスクワで建築学を学びました。モスクワの地下鉄とその駅を紹介しながら、現代ロシアのかかえているさまざまな問題点を生々しくレポートしている本です。正直いってこの本を読んで私はロシアに行く意欲をますます喪ってしまいました。地下鉄の駅のプラットホームに発見した爆弾を入れるための鉄製の箱があるなんて、とても信じられません。
 ロシア人の平均寿命は男性が59歳で、女性は72歳。ロシア人のおばあちゃんは、いかにもどっしり落ち着いて生活しているといいます。男はストレスのあまりウォッカに走り、長生きできないのです。

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ゴースト・ソルジャーズ

著者:ハンプトン・サイズ、出版社:光文社
 第2次世界大戦中のフィリピンのルソン島で日本軍の捕虜となったアメリカ兵513人をアメリカ軍のレンジャー部隊が現地のゲリラ部隊とともに救出に向かい成功する作戦を紹介した本です。近くスピルバーグとトム・クルーズで映画化されるそうです。
 私もフィリピンのレイテ島に公害視察に出かけたことがあります。大岡昇平の『レイテ戦記』に出てくる鬱蒼とした密林(ジャングル)は今や影も形もありません。戦争と木材輸出による環境破壊のすさまじさを実感させられました。
 フィリピンの日本軍といえば、あのバターン死の行進がすぐ思い出されます。救出されたアメリカ兵(実はイギリス兵などもいました)は、その生き残りでもあります。
 日本軍による無謀なバンザイ突撃の場面などは、同じ日本人として無惨な死に胸が痛みます。少し前にアメリカ人による『硫黄島戦記』も読みましたが、アメリカでは第2次対戦の戦記物がブームになっているのでしょうか・・・。
 内藤功弁護士(元日本共産党参議院議員)によると、日本の自衛隊は日本軍人の戦記物を最近になって再評価しているということです。戦争の実相を後世に伝えること自体は必要なことだと私も思いますが、それが戦意高揚の目的であれば賛成しかねます。

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内部告発の時代

出版社:花伝社
 内部告発をする人を「ホイッスルブロウワー」(笛を吹く人=警告する人)と呼ぶ。いまでは社会のために積極的に行動する人と受けとめられるようになった。やはり、雪印乳業事件の影響は絶大なものがある。
 この本によると、アメリカにはケイ・タム訴訟(不正請求禁止法)というのがある。企業が政府に意図的に虚偽の請求をしていたとき、政府が蒙った損失の3倍を懲罰賠償として企業に課すことができる。告発者は、政府が回収した金額の15〜30%の報奨金を受け取るというもの。
 また、1989年の連邦内部告発者保護法によって、告発者は51%の証明ができたらよい(緩やかな証明で足りる)ということになっている。これによって、内部告発が増えた。日本でも内部告発をすすめる立法化をめざして、本格的な議論がすすんでいる。

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最強の交渉術

著者:橋下徹、出版社:日本文芸社
 実は、わが家にはテレビがありませんので、一度も見たことはないのですが、『行列のできる法律相談所』が大変な人気を集めているようです。そこでも活躍している橋下弁護士による「最後に必ずYESと言わせる」交渉術の本です。
 まとまらない交渉もあるという認識をもつべきだというコメントには私も同感です。交渉では明らかに後攻が有利だ、借りではなく貸しをつくれ、とか、いろいろ交渉をすすめるうえで役に立つ実践テクニックが紹介されています。

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坊がつる山小屋日記

著者:川上信也、出版社:海鳥社
 長者原くじゅう登山口から峠を越えて歩くこと2時間。坊がつる湿原を一望する高台に法華院温泉山荘がある。この山荘で働きながらホームページを通じて公開していた著者の日記を本にまとめたもの。30歳になったばかりの著者のすがすがしい感性と写真で、くじゅうの山と動植物たちの四季折々を堪能することができる。
 福岡県弁護士会にも山好きな会員は多いが、私の知る限りくじゅうによく登っているのはK、Iの両弁護士。福岡を早朝出て長者原や牧ノ戸峠から上りはじめるという。山好きの中高年族におすすめの一冊。
 ところで、皆さんの夏休みはいかがでしたか・・・。私は、久しぶりの真夏日に近くの小山(標高388メートル)に登りました。子どもたちが小さいころには、よく近所の子も引き連れて群をなしてワイワイにぎやかに登ったものですが、今では単独行です。4月に登ったときには山菜とりの人も見かけましたが、さすがに真夏の昼なので誰もいませんでした。広々として見晴らしのいい尾根で、ひとり下界を見おろしながら缶ビールを飲み、たっぷり梅干しのはいったオニギリをぱくつきました。日差しは強いものの吹きわたる風が爽かで、頂上をクロアゲハやオニヤンマが悠然と飛んで山ごえしていく姿にも見とれました。至福のひとときを、しっかり堪能して下界に降りてきました。
 ところが、往復3時間を歩いた翌日、足首に凝りを感じました。初めてのことです。これも年齢(とし)をとったということでしょうか・・・。

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