弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2019年3月16日

骨まで愛して

(霧山昴)
著者 小泉 武夫 、 出版  新潮社

思わずヨダレがわき出てくる美味しい料理のオンパレードです。
築地(つきじ)がなくなったのは残念ですが、この本はまだ築地が健在なころに、日本初の粗(あら)料理専門店を開店して繁盛していく様子を活写しています。
これまで見捨てられていた魚の粗が、あれよあれよと魅惑の一皿に大変身していきます。
皮からジュルジュル、コラーゲン。
骨酒グビグビ、コピリンコ。
目玉の周りは、トロットロ。
読めば涎(よだれ)がピュルピュル出てくる絶品人情小説。
この本は、魚好きな人なら誰だって、読まないと損をしてしまいますよ。
新鮮なイカから腸(わた)、あるいはコロと呼ばれる肝臓を、袋をつぶさないように取り出し、身は頭の先から脚の先までぶつ切りにしておく。鍋にバターの塊を入れて溶かし、ニンニク数片を粗つぶしにして加え、そこにイカの身を入れて、その上から腸(わた)を袋からしぼり出し、炒めながら全体にからめて、塩と胡麻で味をととのえる。一度食べたら忘れられなくなるほどの魔性を秘めた味で、イカの上品なうま味と優雅な甘み、肝臓からの濃厚なうま味、バターのコクなどがからみあって絶妙だ。
カツオの腹皮料理の二種。腹皮とは、カツオの砂ずりの部分を皮ことに切り取ったもので、脂肪やゼラチンがたっぷり乗って、まことに美味だが、一般的な料理では、ほとんど使われない。
腹皮料理の一つは、「腹皮の生姜焼き」で、腹皮を、おろした生姜の搾り汁に漬け込んでから、塩を振って焼いたもの。腹皮の身の大半は、脂肪とゼラチンなので、口の中でコリコリとしながらトロトロと溶けていく感覚は絶妙である。もう一つの腹皮料理は、衣をつけて油で揚げた腹皮の天プラで、辛口の日本酒や焼酎にピタリとあう。
いやあ、すごいすごい。魚料理をこんなにも美味しそうに文章表現できるとは、さすがです。ぜひ、味わってみたいです、粗料理のホンモノを・・・。
(2018年12月刊。1300円+税)

2016年9月 5日

江戸前魚食大全

(霧山昴)
著者  冨岡 一成 、 出版  草思社

 魚って、「ぎょ」であり、「うお」ですよね。でも、もちろん「さかな」とも読みます。ところが「さかな」と読むようになったのは新しく、あるときから「さかな」と読ませたのだそうです。
 1973年(昭和48年)まで、当用漢字音訓表に「さかな」という読み方はなかった。「さかな」とは、酒の肴(さかな)を意味する言葉で、酒魚(さかな)とか酒菜(さかな)という字が当てられた。ともかく、本来の読み方ではなかったので、戦後の国語教育では、あえて魚はウオ、ギョと教え、サカナとは読まなかった。いやはや、知らないことって本当に多いですね・・・。
 世界中で日本人ほど魚を食べる国民はいない。あらゆる水産物を多様に食べてきたところに、魚食民族としての特色がある。何といっても、日本では食べる魚の種類が多い。これは世界に類をみない。
海藻類も、魚貝類も大好物。毒魚のフグすら高級食材として珍重する。グロテスクなアンコウは、肝、ひら、えら、卵巣、胃袋、頬、皮と、丸ごと食べつくしてしまう。そして、食べ方も、煮る、焼く、干す、蒸す、燻(いぶ)す、発酵させる。鮮度が良ければ生で食べる。
生食は簡単なようで、実はもっとも手のかかる食べ方。漁業者、生鮮市場、消費者が「こいつを生で食うぞ」と心を一つにしなければ実現しない料理だ。
ところで、昔の日本人は、魚を思うように食べることは出来なかった。魚の保存や輸送が難しかったことが最大の理由だ。氷も冷蔵庫もない時代には、魚はみるみるうちに傷んでしまい、思うようには食べられなかった。
 私の身近な魚では筑後川の汽水域でとれるエツです。さらに、東北・北海道でとれるサンマですね。さんまの刺身なんて最高ですよ・・・。
 江戸時代、マグロは下魚あつかいされた。それは遠くから運ばれてきて鮮度が落ちて、黒ずんでしまうからだった。
かつて魚を生で食べられるというのは、すごいことだった。
初ガツオ。カツオは何しろ足が早い。時間がたつと、値はぐんと下がってしまう。だから、カツオ売りはとにかく早く売ろうと必死だった。安いカツオを食べて腹痛を起こす人は少なくなかった。
私が東京から福岡に戻ってきたとき、先輩が石鯛をごちそうしてくれました。そのときの美味さは筆舌に尽くしがたいものがありました。東京では食べたこともありませんでしたが、福岡では秋から冬の味覚として普通に食べているというのです。コリコリした舌ざわりを堪能しながら、郷里の福岡へUターンして良かったと実感したことでした。
 魚好きの人にとっておきの薀蓄話が満載の本です。
(2016年5月刊。1800円+税)

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