弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物・人間

2021年1月12日

生き物が大人になるまで


(霧山昴)
著者 稲垣 栄洋 、 出版 大和書房

子どもと大人の違いをいろんな角度から考えた本です。なるほど、そういうことだったのかと、思わずうなずかせてくれるところが満載でした。
キングペンギンは、成長した子どものほうが、大人より体は大きい。うひゃあ、そんなこともあるのですね...。
アベコベガエルは、オタマジャクシのときは25センチの大きさがあるのに、大人のカエルは6センチほど。大人になると子どものときの4分の1になってしまう。
このように、子どもが大人になるというのは、単に体が大きくなるということではない。そして、オタマジャクシの尻尾のように、大人になることで失うものもある。
カブトムシの体の大小は、幼虫のときに食べたエサの量で決まる。
イノコヅチは、葉の中にもイモムシの成長を早める成分をふくんでいるので、このイノコヅチの葉を食べたイモムシは、十分な葉を食べることなく大人のチョウになってしまう。すると、小さな成虫にしかなれず、卵を産む力はない。つまり、イノコヅチは、こうやってイモムシを退治している。
人間の赤ちゃんが可愛いのは、おでこ(額)の広さにある。「子どもが可愛い」のは、哺乳動物の大きな特徴。それは哺乳動物の赤ちゃんは「大人に守られるべき存在」だから。
そして、おでこが広いと可愛いと思うのは、そのように感じるように大人の脳にプログラムされているからでしかない。うむむ、なるほど、なるほど...。
毒針をもつ恐ろしいサソリは、子育てをする虫、じつは子煩悩な虫だ。
ハサミムシの母親は、子どもたちを産み終えると、自らの体を子どもたちの最初のエサとして投げ出す。同じようにカバキコマチグモの母親は、赤ちゃんグモを産むと、赤ちゃんグモに自らの体を支え、体液を吸わせる。これが子育て。
哺乳動物にとって、「遊ぶこと」は、重要な生きる手段になっている。遊びながら子どもたちは生きるための知恵を身につけていく。
人間の経験は、AIの情報量を上回る。
哺乳動物の親の役割は、安全な環境で子どもに経験を積ませることにある。
哺乳類は、生きるために必要な最低限の技術さえも、親から教わらなければならない。それが知能。水中をうまく泳いでいるカワウソも生まれつき泳げるのではなく、母親に泳ぎ方を教えてもらわないと、満足に泳ぐことはできない。
そして哺乳動物は、親もまた、親となるための練習が必要となる。本能だけでは環境の変化に対応できないので、教え方は変化するという戦略を選んだ。
ゴリラは、子どもが小さいうちは母親がずっと抱っこして育てる。ゴリラが離乳することになると、母親はオスのゴリラのところへ子どもを置きにくる。オスのゴリラのまわりは子どものゴリラでにぎやかになる。まるで幼稚園のよう。オスのゴリラは子どもたちの面倒をみるというより見守っているだけ。しかし、子どもたちがケンカを始めると仲裁に入る。その仲裁は平等。ゴリラ同士のルールや社会性を、そこで教えている。やがて子どもたちは、父親のベッドで寝るようになったあと、父親のベッドの近くに自分のベッドをつくって寝るようになる。これが自立の証し。
ごっこ遊びは模擬練習。大人のマネをして、子どもを育てるという大切な技術も遊びを通して学ぶ。
この本は最後に、大人だって成長したいし、成長できることを強調しています。体が大きくなるばかりが成長ではないのです。
心の底から楽しいと思える好奇心や心の底からやってみたいと思える挑戦心や向上心があったら、それこそ今の成長ステージで発揮される成長する力なのでは...。
子どもは育てるものではなく、子どもは育つもの。大人にできるのは、子どもが育つ環境をつくってあげること。すっかり納得できる話でした。
(2020年8月刊。1400円+税)

2020年7月27日

科学の最前線を切りひらく!


(霧山昴)
著者 川端 裕人 、 出版 ちくまプリマ―新書

ビルマで琥珀(こはく)なかに恐竜のしっぽが発見されたというのは知りませんでした。
琥珀の中に、羽毛に覆われた恐竜の尾があったのです。恐竜はコエルロサウルス類という小型恐竜。軟部組織や羽毛まで残っていました。写真もあって、その見事さには驚かされます。
恐竜少年・宮下哲人さんは、高校生のとき、恐竜を研究するため単身カナダに渡り、カナダの大学に入って、ずっと恐竜を研究しています。いやあ、たいしたものですね...。それは8歳のとき、映画『ジュラシックパーク』をみたのがきっかけのようです。
雲の研究者として荒木健太郎博士が登場します。FBで、美しい雲の写真を紹介しているとのこと。一度みてみましょう。
夏の入道雲は、雄大積雲のことで、積乱雲の弟分の雲。
サメは、子宮のなかでミルクやスープを提供したり、胎仔(たいし)どうしが共喰いする。成長段階の違う子が胎内に同時にいる。
サメの親は、子宮の中にいる子どもに対して、保育している。
シュモクザメは、20匹くらいが同時に胎内にいて、胎盤で母体とつながっている。
マンタは、胎内で子どもに子宮ミルクを飲ませている。
ホホジロザメは、胎内の仔10匹に卵を食べさせ、ミルクを与える。生まれてくるときには、130センチくらいになっている。
人間は、空間的な情報は視覚に重みづけがあり、時間的な情報は聴覚のほうを信じる傾向がある。
時間の知恵は、脳をあげて行うもので、「時間帯」によって処理する部位が違いつつ、それらが時々、バッティングしつつも、結局はシームレスにつながって、「時間」として感じられる。
現在の知見では、少なくとも、形態上、男女の脳に違いはない。
東京湾でとれたカタクチイワシの8割の消化管の中から、さまざまなプラスチック片が出てきた。東京湾では、泥10グラムにつき40個ほどのプラスチック片が入っている。
70年代初頭に使用禁止となったPCBが40年たっても放出されたものが微量ながら残っていて、マイクロプラスチックが吸着する。
世の中には、知らないことがいかに多いか、知るべきことが多いことを知らされる新書でした。
(2020年3月刊。940円+税)

 4連休のうちに、博多駅の映画館でフランス映画をみてきました。
 アメリカの渡り鳥を追いかけた映画『ギース』のフランス版です。
それにしてもよく撮れています。ノルウェーからフランスまでをガンたちとともに飛行するという話なのですが、こんなチャチな飛行機で本当にガンたちと一緒に空を飛べるの...と、心配になります。
ところが、ガソリン欠乏の心配があるだけで、小さな人力飛行機みたいなものが最後まで故障することもなく飛び続けるのです。しかも、映画の話は、14歳の少年がGPSだよりで飛び続けるというのです。どうやら、カメラは、その「人力飛行機」のすぐ横を飛んでいた飛行機にとりつけてあったようなのですが、CGではなくて実写フィルムだというのですから驚きます。
 それにしてもガンを一緒に飛ばすのには苦労したことでしょうね。ちょっぴりフランス語の勉強にもなりました。

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