弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

生物(クモ)

2022年7月31日

クモの世界


(霧山昴)
著者 浅間 茂 、 出版 中公新書

わが家には、本当にたくさんのクモがすみついています。たまに手のひらほどの大型のクモが室内を徘徊することがあり、そのときは室内ホーキで外に追い出します。芥川龍之介の「クモの糸」を読んでから、クモを殺すことは絶対にしません。
クモって、どんな生きものなのか、よくよく分かる新書です。
日本には1700種のクモがいて、半分は網を張り、残り半分は徘徊性。我が家のクモも、半々です。クモは世界中に5万種いて、南極大陸以外のすべての大陸に分布している。
クモは8本の脚をもつ。昆虫は6本脚。そして、クモは頭と胸が一つになっている。
クモの多くは、人間にとって毒液の毒性はほとんどない。
クモは糸を出すのが特徴。一生涯を通じて糸を出す。歩き回っているときも必ず糸を引いている。
クモは、地中性のクモから造網性のクモ、そして徘徊性のクモへ進化した。
地中性のクモは一般に長生きで、成体になるのに3年以上かかり、飼育下では9年以上という記録もある。
ジョロウグモは、オスは7回、メスは8回脱皮して、成体になる。オスが早く成体になって、脱皮中のメスと交尾する。
日本のカバキコマチグモは母グモが子グモに自分の体を与える。
うひゃあ、自分の体を子グモに食べさせる母グモがいるんですね...。
クモは、一般的に、メスよりオスが小さい。「ノミの夫婦」という言葉があるが、それよりはるかにオスは小さい。
徘徊性のクモは、視力がそれなりに優れている。造網性のクモの視力は、あまり良くない。
オオジョロウグモのメスは5センチほどもあり、網にかかった鳥やコウモリを捕食する。
クモは紫外線を利用する。クモは擬態する。刺激を与えると、一瞬で体色を変えるクモがいる。クモは変温動物。
クモが壁にへばりつけるのは、原子・分子間で生じる引力、ファンデルワース力による。
クモの糸には、粘着性のある糸とない糸がある。クモの糸の先に粘球がついている。
口から粘球を吐きかけて獲物を捕らえるクモがいる。
クモは、獲物にかみつき、牙の孔から毒液を出して注入し、麻痺させて動けなくする。そのあと消化液を注入して溶かし、半ば消化されたものを吸う。
一般にクモは肉食性で、何でも食べる。クモを専門に食べるクモもいる。
クモだけを専門に狙う狩りバチがいる。
このように、クモは生態系の中で、中間捕食者として、捕食者であり被食者でもあるという役割を果たしている。
コサラグモのオスは、魅惑的な分泌液をメスにプレゼントして、その間に交尾する。
アシナガグモのオスは、食べられないようにしてからメスと交尾する。
クモの糸は軽く、同じ太さでは鋼鉄以上の強さをもち、かつ、しなやか。今のところ、まだ、自然界のクモ糸を越えた人工クモ糸は合成されていない。前に、このコーナーで、クモの糸をより集めて、強い糸をつくったという実験結果を報告したことがあります。
クモの不思議な生態がぎっしり詰まった、カラー写真いっぱいの楽しい新書です。
(2022年4月刊。税込1100円)

2020年1月 5日

クモのイト


(霧山昴)
著者 中田 兼介 、 出版  ミシマ社

わが家のなかには、大小いろいろのクモが出没します。芥川龍之介の「くもの糸」を読んで以来、自分だけは助かりたいという思いから私は決してクモを殺すことはしません。あまりに大きなクモはホウキで外へ掃き出してしまいます。でも、その姿は少し気味悪いですよね。
セアカゴケグモはともかくとして、クモの毒は人間には効かないことを本書で知って安心しました。
クモは、成功した生物の一つ。陸上のあらゆるところに住んでいる。
クモは空を飛び、水中にすむクモだっている。
「朝のクモは殺すな」と昔から言われてきたように、昔の日本人はクモをありがたがっていた。
クモのオスは、大人になると網を張らなくなり、エサも食べずにメスを探して子づくりに全精力を注ぐ。クモは他の動物をエサにする肉食動物だが、異性に対しても猛烈な肉食性。
メスは交接相手のオスを食べてしまうことがある。うひゃあ、カマキリと同じですね・・・。
クモの魅力は、その賢さと複雑さにある。
クモの糸は直径数マイクロメートル(1ミリメートルの数百万の1)しかないにもかかわらず、自然界で最強。
クモのほとんどは孤独に生き、好き嫌いのあまりない肉食動物。
クモの糸で服をつくった。4年以上の月日と30万ポンド(4000万円強)のお金、6000人時の労力、のべ100万匹をこえるジョロウグモが使われた。
これまで16個体のクモが宇宙旅行した。日本人で宇宙を飛んだのは12人のみ。
クモの祖先が出現したのは3億8000万年前。クモの化石は3億年前のものが最古。
網を張ってエサをとるクモの種類は半分ほど。
クモの糸はタンパク質でできている。
母グモは子グモにエサを与えていて、自分が弱ると、自分の身を子グモに食べさせる。
クモが空を飛べるのは、地球の表面がマイナス電気を帯びていて、クモの糸もマイナス電気なので、お互いに反発しあって、空中に浮かぶことになる。
長生きするクモの寿命は40年というのもいる。ジョロウグモやコガネグモは1年。
クモは、からだを分解する酵素をたっぷり含んだ消化液を口から出して、哀れなエサの中に注ぎ込む。しばらく待つと、溶けてどろどろになるので、それをクモは飲む。
からだの外で消化が起こるおかげで、クモは自分よりずっと大きな動物でもエサにできる。
クモは毎日、網を張り直す。古い網は食べる。これはリサイクル。
クモは地球上に12万種いると見込まれている。150種近くが絶滅危惧になっている。
クモは、ほとんど昆虫を食べている。
世界中で4億トンから8億トンのエサを食べている。
身近なクモについての面白い話が満載の本です。
(2019年11月刊。1800円+税)

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