弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

ヨーロッパ・フィンランド

2019年9月 9日

フィンランドの教育はなぜ世界一なのか


(霧山昴)
著者 岩竹 美加子 、 出版  新潮新書

大学で法学部の人気が落ちて、経済学部の人気が上昇しているそうです。その有力な原因の一つが、学生の金もうけ志向にあるとのこと。
国(年金)が頼りにならず、なんでも自己責任の風潮が広まるなかで、多くの学生が金もうけに走っていると聞くと悲しいばかりです。
お金はそこそこあればいい。それよりも世のため、人のため。他人(ひと)に喜ばれる仕事をしたい。そんな学生が増えてくれることを願う毎日です。
著者は、フィンランドで実際に子育てした日本人女性(ヘルシンキ大学非常勤教授)。
フィンランド教育の良さは、何よりもそのシンプルさにある。入学式や始業式、終業式、運動会などの学校行事がない。授業時間は少なく、学力テストも受験も塾も偏差値もない。統一テストは、高校を卒業するときだけ。学校には、服装や髪形に関する規則もなければ、制服もない。部活も教員の長時間労働もない。
フィンランドには教育に関して地域という考えはなく、連絡協議会や青少年育成委員会など、学校をとりまく煩雑な組織はない。
フィンランドでは教育の無償化は徹底している。小学校から大学に至るまで教育費は無償。小中学校では、教科書やノート、教材等も無償で支給される。学級費その他の費用負担もない。給食は、保育園から高校まで無料。
教科書や鋼材は学校に置いていくので、重たいカバンをもって通学する子どもはいない。
学校からの連絡はメールなので、プリントや手紙もない。
17歳以上には、給付型奨学金、学習ローン、家賃補助など学習支援をする。学習ローンの保証人は国であって、親や親族ではない。
フィンランドには受験はなく、受験のための勉強もない。中学を卒業したら、高校と職業学校に進路が分かれ、普通、18歳で卒業する。大学には応用科学大学というものもある。
高校卒業の日には、親が親戚などを招いて大きなパーティーを開く。
一斉卒業、一斉就職という社会の仕組みはない。
フィンランドの小学校のクラスは20人から25人ほど。授業時間は、日本の半分ほど。
フィンランドでは性教育が重視されている。ところが、日本の義務教育では、性交を教えない。東京でフツーの性教育を実践した学校に対して自民党の都議が不適切だと攻撃した「事件」がたびたび起きています。教育現場を委縮させる政治の不当な教育介入です。
フィンランドには戸籍はなく、入籍という考え方もない。
フィンランドの教育は、何より子どもたちに考える力が身につくことを重視している。
これこそが今の日本の子どもたちに欠けていることではないでしょうか・・・。
アメリカから必要もない兵器を爆買いさせられて軍事予算だけは青天井で増加しつつあるのと反対に、大学の授業料は上昇する一方で、学生の奨学金も少ないうえに、有利子。日本の教育システムは、とんでもなく間違っています。司法修習生の給料を廃止したのも、その延長線上にありました。日本もフィンランドに学んで、教育費一切の無料化に踏み切るべきです。
大量人殺しのための戦闘機より子どもの笑顔あふれる教室を増やしてほしいものです。うらやましいタメ息とともに、チョッピリ勇気がもらえる新書でした。
(2019年7月刊。780円+税)

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